米小売り大手の決算、消費者の裁量的支出の減少、高額商品の買い控えが浮き彫りに

(米国)

ニューヨーク発

2024年02月27日

米国小売り大手ウォルマートは2月20日、2023年第4四半期(2023年11月~2024年1月期)決算を発表し、米国の既存店売上高(燃料を除く)は前年同期比4.0%増、2024年通期(2023年2月~2024年1月)では前年比5.6%増となった。また、2025年通期の売上高見通しは2024年比3.0~4.0%増になると見込む。インフレにより裁量的支出が減速する中で、ターゲットなどの競合他社よりも、食料品などの必需品に重点を置く販売戦略と低価格戦略がウォルマートにとっての防波堤となっている。同社の最高財務責任者(CFO)を務めるジョン・レイニー氏によると、テレビやパソコンのような数百ドル単位の高額な商品は依然として売れ行きが厳しく、消費者による買い控えがみられているという(AP通信2月20日)。

ウォルマートは、成長を加速させるべく、今回の決算に併せて、スマートテレビメーカーのビジオ・ホールディングを23億ドルで買収することも発表した。この買収を通じて、テレビの制御システム(OS)を利用することで広告を表示するだけでなく、顧客がその広告にどのように関与して購買につながったかを追跡し、より良い顧客データを取得することができるという。このほか、自社が運営する電子商取引(EC)事業「ウォルマート・マーケットプレイス」の拡大や、同社のサブスクリプションプログラム「ウォルマート+(プラス)」の提供、広告事業など、新たな収益源も開拓している(CNBC2月20日)。

また、米国ホームセンターチェーン大手のホーム・デポが2月20日に発表した第4四半期(2023年11月~2024年1月期)の米国の既存店売上高は前年同期比4.0%減と、5四半期連続の減少になり、2024年通期(2023年2月~2024年1月)では前年比3.2%減となった。住宅ローン金利の高騰と住宅建設の減速に伴う住宅設備需要の落ち込みの影響が浮き彫りになった。また、2025年通期の既存店売上高の見通しは、2024年から減少幅が縮小するものの、なおマイナスの1.0%減になると見込む。同社のマーチャンダイジング担当エグゼクティブバイスプレジデントのビリー・バステック氏は、消費者は依然として小規模な住宅プロジェクトには支出しているが、高額商品の購入は先送りしていると述べている(ブルームバーグ2月20日)。

このように、両社とも消費者が高額な商品への支出を控えていると指摘しているほか、先行きについても慎重な見方を示しており、裁量的支出の動向には不透明感が漂う。2024年1月の米国の小売売上高も前月比0.8%減と、10カ月ぶりの大幅な減少幅となり(2024年2月16日記事参照)、クレジットカードローンの延滞(2024年2月7日記事参照)などから、消費者が引き締めに転じている傾向がみられている。

(樫葉さくら)

(米国)

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