2023年の対内直接投資、前年比8割減も、撤退検討の企業は限定的

(中国)

北京発

2024年02月21日

中国の国家外貨管理局は2月18日、2023年の国際収支統計(速報値)を発表した。同年の中国の対内直接投資額(注1)は前年比81.7%減の330億ドルと大幅に減少した。2021年に過去最高の3,441億ドルを記録したものの、2022年から2年連続で大幅に減少し、1993年(275億ドル)以来の水準に落ち込んだ(添付資料図参照)。

なお、商務部の発表による外資利用額(実行ベース、注2)も、8.0%減の1兆1,339億1,000万元(約23兆8,121億円、1元=約21円)と減少している(2024年1月25日記事参照)。中国政府は8月に「外商投資環境のさらなる最適化と外商投資誘致の強化に関する意見」(国発〔2023〕11号)を発表するなど、外資系企業の投資誘致を強化している(2023年8月15日記事参照)。

一方で、在中国の各国企業に対するアンケートからは、大規模な移転・撤退などの動きは見られない。ジェトロの「海外進出日系企業実態調査」の2023年度版(注3)では、中国での今後の事業展開について、「縮小」は9.3%、「第三国(地域)へ移転・撤退」は0.7%にとどまっている。中国日本商会の「会員企業景気・事業環境認識アンケート結果」の第2回(注4)では、2022年比での2023年の投資額について、「大幅に増加させる」「増加させる」「同額」が合わせて53%となっている。

中国ドイツ商会による「ビジネス・コンフィデンス・サーベイ(Business Confidence Survey)」の2023/2024年版(注5)では、今後2年以内のスパンで「中国から撤退する計画はない」が91%だった。同時に、今後1~2年の中国への投資見通しについて、「拡大」するとした企業は54%と、前年から3ポイント増加した。

中国米国商会の「チャイナ・ビジネス・クライメート・サーベイ・レポート(China Business Climate Survey Report)」の2024年版(注6)では、生産・調達の中国外への移転について、「検討を開始したが、行動には移していない」が12%、「既に移転を開始した」が11%となったものの、「検討していない」も77%と前年比で3ポイント増加した。また、2024年に中国での投資を拡大すると回答した企業は5割を超え、グローバルな投資計画での中国の重要性について、上位3位以上とした企業も約5割となった。

(注1)直接投資負債額のフロー。

(注2)国家外貨管理局によると、対内直接投資額と外資利用額の主な違いは次のとおりとされる。

  1. 対内直接投資額は資産負債原則、外資利用額は親子関係原則に基づく。
  2. 対内直接投資額はネット金額。
  3. 対内直接投資額は未分配利益、分配利益の未送金分、株主ローンを含む。

(注3)中国は2023年8月21日~9月20日実施、有効回答数715件。

(注4)2023年11月23日~12月13日実施、有効回答数1,731件。

(注5)2023年9月5日~10月6日実施、有効回答数566件。

(注6)2023年10月19日~11月10日実施、有効回答数343件。

(河野円洋)

(中国)

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