欧州委の研究機関、CO2輸送インフラ普及に向けた投資要件を分析

(EU)

ブリュッセル発

2024年02月15日

欧州委員会の共同研究センター(JRC)は2月6日、費用最適化モデルを通じ、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)を効果的に行うCO2輸送インフラの2025~2050年に必要となる投資要件を分析した報告書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委は同日、CO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)技術と輸送に関する産業炭素管理戦略を発表(2024年2月14日記事参照)。産業炭素管理技術とその活用に必要な輸送インフラの整備に向けた今後の取り組みを示した。欧州委は、エネルギー集約型産業などCO2排出削減が難しい産業で、同技術がEUの2050年気候中立や2040年中間目標案(2024年2月14日記事参照)の達成に貢献すると期待する。

報告書によると、CO2輸送インフラは、まず地方や地域、国レベルで開発が進み、異なるCO2排出源の輸送ニーズに対応できるよう設計される。その後、CO2排出源と離れた貯留場所をつなぐ汎(はん)欧州ネットワークに拡大する必要がある。しかし、産業用炭素管理技術の初期段階では、パイプライン開発にかかる大規模投資や要する時間を踏まえて、海運を含む他の輸送方法を検討すべきとした。また、商用可能な貯留能力の確立には、適切な場所を特定するための国際協力の必要性や、多くの国を通過する輸送インフラの実現には共通の品質基準と規制が必要となる。先行するCCS開発事業者によって施設の場所や容量、開始時期が特定されることで、CO2輸送インフラが形成され、後続の事業もこれらの輸送インフラを活用することで、費用を最小化することができるとした。

報告書はまた、2050年までに必要となる投資費用の観点から、最適なCO2輸送ネットワークを把握するため、欧州全土で潜在的なCO2排出源と貯留場所をそれぞれ約100カ所特定。推定回収量や貯留場所の利用可能性を考慮し、8つのシナリオを検討した。2030年、2040年、2050年のCO2回収目標に対する最も野心的な貯留場所の1つとして、EUとノルウェー、英国を含む北海地域の重要性を強調した。このほか、2月6日に政治合意したネットゼロ産業法(2024年2月14日記事参照)に盛り込まれた2030年までに年間5,000万トン分のCO2輸送インフラの開発を行った場合、2030年までに貯留されるCO2量は他のシナリオに比べて低いが、2050年までには合計4ギガトン近くまで増加すると見込んだ。

CO2輸送インフラは、2030年までに6,700~7,300キロメートル、2050年までに1万5,000~1万9,000キロメートルまで拡大する可能性があり、導入費用は、2030年までに65億~195億ユーロ、2050年までに93億~231億ユーロに達すると算出した。投資費用を削減するには、南欧や東欧などでも貯留容量を開発し、回収したCO2の長距離輸送を避けることが重要と指摘した。

(大中登紀子)

(EU)

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