ミレイ新政権の大型投資奨励制度、輸出案件に各種税制優遇、外貨規制免除

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2024年03月25日

アルゼンチンのハビエル・ミレイ政権は3月、州知事などの賛意を得るべく、269条、177ページまで絞り込んだ新たな「アルゼンチン人の自由のための基盤と出発点に関する法律」(通称、オムニバス法)の素案を策定したと報じられている(「インフォバエ」電子版3月21日)。ミレイ政権は2023年12月27日、664条、183ページからなる同法案を国会に提出したが、2月の下院審議で賛同を得ることができず、新たな法案を策定した。

中でも、新旧オムニバス法案の双方に含まれている大型投資奨励制度(RIGI)が投資家の注目を集めている。RIGIは、アルゼンチンへの投資を難しくしている不確実性を排除するとともに、為替取引をはじめ、さまざまな優遇措置を設けることで、大型投資を呼び込もうという制度だ。旧オムニバス法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)からRIGIの内容を概観する。

対象は全ての産業で、RIGIの適用を受けるための申請期限は、原則として法律発効から2年間。最低投資額は2億ドルだが、政府は、産業分野によって最低投資額を設定することができ、金額は5,000万ドルから9億ドルの範囲とされている。

長期的な輸出が見込まれ、かつ最終的な投資額が10億ドルを超える見込みのプロジェクトは、長期戦略輸出案件として認定される。認定されると、より優遇されたインセンティブの適用を受けることができる。

RIGIで適用される所得税率は25%。利益送金へは所得税7%が課税される。ただし、利益が生じた会計年度終了後、3年を経過した後に利益を送金する場合の税率は0%となる。長期戦略輸出案件として認定された場合は、外国に支払うロイヤルティーや融資に対する利息への課税が免除される。

資本財、部品、部分品などの投入財を輸入する場合、関税、統計税などの輸入税が免除されるほか、輸出する場合は、RIGI の認定を受けてから3 年が経過した後に輸出税が免除される。長期戦略輸出案件は、RIGIの認定を受けてからの2年間、輸出関税が免除される。

輸出代金の国内還流義務も免除される。認定から1年経過後は輸出代金の20%、2年経過後は40%、3年経過後は100%が免除され、輸出で得た外貨を自由に使うことが認められる。長期戦略輸出案件の場合は、RIGI認定直後から20%、1年経過後は40%、2年経過後は100%が免除される。国内外から調達した外貨の使途にも制限を設けない。また、国外に保有する流動資産の額にも規制を設けない。一連のインセンティブは、仮にRIGIが廃止されたとしても、廃止から30年間はインセンティブを政府が保証する。

鉱山など大きな投資を行う事業者からは、RIGIを歓迎する声が聞かれる。ワインの産地で知られる西部メンドサ州は、豊富な銅の埋蔵量を有することでも知られるが、2月29日に同州で開催された第5回投資フォーラムで、銅開発への関心が官民双方から寄せられていた。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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