外国人の幹部・専門職向け就労査証の発給基準、2025年から引き上げ

(シンガポール)

シンガポール発

2024年03月11日

シンガポールのタン・シーレン人材相は3月4日、2024年度(2024年4月~2024年3月)政府予算の国会審議で、2025年から外国人の幹部・専門職向け就労査証「エンプロイメント・パス(EP)」の発給基準となる最低基本月給の引き上げを発表した。

発表によると、EPの新規申請について、2025年1月1日から同パス発給基準となる最低基本月給を現行の5,000シンガポール・ドル(約55万5,000円、Sドル、1Sドル=約111円)から、5,600Sドルに引き上げる。また、金融サービス分野のEPについては、現行の5,500Sドルから、6,200Sドルに引き上げる。なお、2026年1月1日からは、既存のEPを更新する際にも同最低基本月給を適用する。

政府はEPの最低基本月給を現地の幹部・専門職の上位3分の1、Sパス(中技能向け就労査証)については現地の準幹部・専門職の上位3分の1とそれぞれ同水準になるように設定している(2022年2月25日記事参照)。今回のEPの最低基本月給の引き上げは国民の給与上昇に伴うものだ。人材省の労働統計(1月31日発表)によると、フルタイムで働く国民(永住権者を含む)の2023年6月の総月給は中央値で5,197Sドルと、前年比2.5%上昇した。タン人材相は演説で「一定の給与のベンチマークに基づき、(EPやSパスの)発給基準となる最低基本月給を常に見直すことで、地元労働者にとって公平な雇用機会を担保している」と説明した。

高度人材外国人就労査証の取得者、1年で4,200人

また、同人材相は2023年1月から導入した外国人の高度人材向け就労査証「海外ネットワーク・技能(ONE)パス」を約4,200人(2024年1月1日時点)が取得したことを明らかにした。ONEパスの発給対象は月給3万Sドル以上、または芸術や文化、科学技術、研究、学識界で卓越した成果がある外国人だ。ONEパスは有効期間が5年間で、EP(通常2年間)と比較して有効期間が長いメリットがある(2022年9月2日記事参照)。同人材相はONEパスの取得者の事例として、政府投資会社テマセク・ホールディングスのディープテック分野の投資子会社ゾラ・イノベーション(Xora Innovation)のフィル・イナガキ社長や、シンガポール国立大学(NUS)で量子暗号を研究するマルコ・トマミシェル助教授を挙げた。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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