中銀が1年ぶりに政策金利を変更、0.25ポイントの引き下げ

(メキシコ)

メキシコ発

2024年03月26日

メキシコ中央銀行は3月21日、銀行間翌日物金利の誘導水準(政策金利)を25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ、翌22日から11.0%にすると発表した。中銀は2021年6月~2023年3月末にかけて15回連続で政策金利を引き上げ11.25%とした後、同水準を約1年間維持してきた。今回の決定にあたっては、全国消費者物価指数(INPC)上昇率、コアインフレ率(注)ともに順調に下がっており、今後、政策金利の引き下げを行っても2025年には中央銀行のターゲットである3.0%前後までインフレを収束させることが可能と判断された。ただし、中央銀行は今後も慎重な金融政策を維持することを強調している(中銀プレスリリース3月21日付PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

中銀は、2024年2月18日の前回の金融政策決定会合から、インフレ率の見通しをほとんど変更していない。2024年末時点のINPC上昇率は年率3.6%、2025年第1四半期で3.2%、第2四半期には3.1%に下がるとしている。コアインフレ率も2024年末時点で3.5%、2025年第2四半期には3.1%まで下がると見通している(添付資料表参照)。

為替市場は織り込み済み、ペソ高水準が続く

米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月19~20日、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を現在の5.25~5.50%に据え置いた(2024年3月22日記事参照)。米国政府が政策金利の水準を維持し、メキシコ政府が切り下げに踏み切ったため、両国間の金利差は縮小した。メキシコの通貨ペソは、高い実質金利(政策金利-インフレ率)と米・メキシコ間の実質金利の差に着目した機関投資家のペソ買いにより、1ドル=17ペソを切るペソ高ドル安の水準が続いていたが、今回の政策金利の引き下げを受けても為替市場は小幅な値動きにとどまり、ペソが大きく売られることはなかった。

中銀のデータによると、国内市場のペソの終値は3月20日時点で1ドル=16.6729ペソ、21日時点は16.7373ペソ、22日時点は16.7668ペソとわずかなペソ安傾向がみられるものの、依然として1ドル=16.8ペソを下回り、相対的なペソ高水準が続いている。政策金利に連動して動く短期国債(CETES 28日もの)の利回り(指標金利)、インフレ率、為替レートの推移を見ると(添付資料図参照)、指標金利がインフレ率(消費者物価上昇率)を上回った2022年秋以降、為替相場は高い実質金利に牽引されて急速にペソ高に動いた。今後、実質金利の段階的な縮小に伴い、為替相場はペソ安の方向に向かうとみられるが、当面は緩やかな減価にとどまるとみられている。

(注)天候などによって価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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