中国外相、7年ぶりにオーストラリア、ニュージーランド訪問

(オーストラリア、ニュージーランド、中国)

シドニー発

2024年03月29日

オーストラリアのペニー・ウォン外相は3月20日、当地を訪問した中国の王毅・共産党中央政治局委員兼外交部長(外相)と第7回豪中外務・戦略対話を実施、2国間関係や国際情勢について会談を行った。同対話は前年11月の両国首脳会談で再開に合意した枠組み(2023年11月22日記事参照)。中国外相によるオーストラリア訪問は7年ぶりとなった。

ウォン外相は会談後の記者会見で、両国が防衛や貿易など諸問題での対話の継続や、太平洋島しょ国地域情勢、気候変動、エネルギー分野など重要分野の対話拡大に合意したと発表した。貿易について、オーストラリアは、中国による大麦などオーストラリアの主要産品に対する追加関税の撤廃(2023年8月7日記事参照)や、ワインに対する追加関税の撤廃に向けた暫定的な決定(注1)など、段階的な貿易制限解除について歓迎の意を伝えたが、いまだ継続している牛肉やロブスターに対する検疫強化措置などの輸入障壁解除を要請したと説明した。また、ウォン外相は、中国が加入申請している環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)について、オーストラリアは柔軟な立場をとるのかとの記者の質問に対して、「オーストラリア政府のスタンスはこれまでと変わらない」(注2)と回答した。

王外相は同日、中国でビジネスを行う500以上のオーストラリア企業が加盟する豪中ビジネス協議会(ACBC)が主催するラウンドテーブルに出席した。資源大手リオ・ティント、医療機器大手コクレア、名門大学8校が集まる協議会「グループ8」など、オーストラリアの財界人ら10人と、2国間の貿易・投資や、気候変動、教育、デジタル貿易から、米中関係、豪アジア関係など国際情勢まで幅広い分野について意見交換を行った。

NZのピータース外相、王外相と地域・国際情勢について意見交換

王外相は、オーストラリアに先駆けてニュージーランドを訪問、18日にウィンストン・ピータース外相と会談を行い、貿易、ビジネス、人的交流などについて意見交換を行った。中国外相による訪問は7年ぶり。3月19日付の公共放送ラジオニュージーランド(RNZ)は、中国専門家でカンタベリー大学のアンヌ・マリー・ブレイディ政治科学・国際関係部教授のコメントを紹介し、「ニュージーランドは近年、中国の影響力をより意識するようになっている。過度に1つの市場に依存しないよう、政府は経済・貿易政策を調整しているところだ。」と報じた。

(注1)2021年3月28日から中国政府はオーストラリアワインに対して、アンチダンピング関税と補助金相殺関税を徴収していたが(2021年6月22日記事参照)、オーストラリア外務貿易省によると、中国政府が2024年3月12日、オーストラリアワインに対する追加関税の見直し検討に関する調査で、追加関税撤廃に向けた暫定決定を行ったと発表した。

(注2)2023年11月6日の記者会見で、ドン・ファレル貿易・観光相は、中国のCPTPP加入申請について記者から問われ、「CPTPPの加入は、全メンバー11カ国のコンセンサスが必要。加入申請国・地域に対しては適切な方法で対処する」と回答している。

(青島春枝)

(オーストラリア、ニュージーランド、中国)

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