ドイツ企業、新型コロナ禍後もサプライチェーンのリスク対応継続

(ドイツ)

ベルリン発

2024年03月01日

ドイツのifo経済研究所と経済研究者のネットワーク機関イーコンポル・ヨーロッパ(EconPol Europe)は2月12日、「サプライチェーンの再編:ドイツ企業が設定する優先事項は?PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。同調査はドイツ企業4,000社以上(業種は製造業、卸売業、小売業)を対象に、調達戦略で過去12カ月間に実施した措置に関する優先順位や、将来的なサプライチェーン再構築に向けて設定した優先順位について質問したもの。実施時期は2023年11月。

ifoのこれまでの調査によると、新型コロナウイルス禍に伴うサプライチェーンの混乱により、部材・原材料の調達で不足や課題を抱える企業は2021年11月に74%に達した(2021年12月21日記事参照)が、2023年10月には18%まで減少している。しかし、今回の調査では、ドイツ企業が新型コロナ禍以降もリスクに備え、サプライチェーン強靭(きょうじん)化の取り組みを継続している実態が明らかになった。

製造業で「過去12カ月間にサプライチェーンの障害リスクを軽減するための措置を講じた」と回答した企業は75%で、2022年7月調査の87%からやや低下した。

製造業で企業が講じた対策(複数回答可)は、「調達先の多様化」が58%(2022年7月調査より7ポイント減)、「在庫の積み増し」が45%(23ポイント減)、「サプライチェーンの監視強化」は44%(10ポイント減)、「既存サプライチェーンの再編」が34%(4ポイント減)で、いずれも前回調査より低下した。一方で「垂直統合の強化(内製化)」の17%(4ポイント増)は短期的に達成できる方法ではないものの、唯一、前回調査より増加している対策だった。

製造業の取り組み状況を業種別にみると(添付資料表参照)、「自動車、トレーラー、セミトレーラー」部門では、「サプライチェーンの監視強化」と「調達先の多様化」がともに62.3%だったほか、「垂直統合の強化(内製化)」(33.1%)は製造業の中でも最も高い数値となった。

企業規模別では、大企業は「調達先の多様化」(64%)や、「サプライチェーンの監視強化」(51%)が多かった。これに対し、中小企業(従業員250人未満)では「調達先の多様化」(51%)に次いで、「在庫の積み増し」(49%)だった。調達先の多様化やサプライチェーンの監視強化には、高額の固定費や初期投資が必要となるため、中小企業には実施が容易でないとする見方を示した。

ifo経済研究所のクレメンス・フュスト所長は2月16日に、ミュンヘン安全保障会議で「EUは国際貿易の利益を犠牲にすることなく、地政学的リスクに備えるべき」として、原材料とエネルギーの調達先の多様化、重要な物理的インフラとデジタルインフラの安全確保、特定の医療製品など重要な商品の備蓄や域内生産力の維持が必要との考えを示した。

(中村容子)

(ドイツ)

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