米英が中国企業などに金融制裁、サイバー攻撃関与理由に

(米国、英国、中国)

ニューヨーク発

2024年03月27日

米国のバイデン政権は3月25日、米国の重要インフラを標的としたサイバー攻撃に関与したとして、中国の企業1社と個人2人を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の制裁は2015年発表の大統領令(E.O.13694)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づいて発動した。同大統領令は、米国の安全保障に脅威を与える可能性がある、または実質的にその脅威に寄与したサイバー攻撃に関与したと見なされる個人や事業体に制裁を科す権限を財務省に付与している。同省によると、今回SDNに指定されたのは中国の武漢暁睿智科技と同社に所属する中国籍の個人2人で、中国政府の組織的関与の下で米国の重要インフラに係る防衛・情報・エネルギー分野の企業や、政府高官などに対して継続的なサイバー攻撃を行い、米国の安全保障に脅威を与えたとの疑いに基づく。SDNに指定された個人・事業体には、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注2)。

今回の制裁措置は司法省、連邦捜査局(FBI)、国務省、英国の外務・英連邦・開発省(FCDO)との共同で講じられている。司法省は同日、上記個人2人と中国在住の5人を一連のサイバー攻撃に関与した疑いで刑事訴追したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたほか、国務省は同日、これら企業や個人の位置特定などに関する情報提供に対して、最高1,000万ドルの報奨金を提供すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

英国も金融制裁を発表

英国FCDOも同日、英国の選挙管理委員会や国会議員がサイバー攻撃を受けた可能性が高いとして、上記企業1社と個人2人に対して金融制裁を科したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、米国金融制裁と同様に、在英資産の凍結や、英国企業・英国人との資金や経済資源・サービスの取引禁止が科される。英国のデービッド・キャメロン外相は「中国の国家に関連する組織や個人が英国の民主的な制度や政治プロセスを標的にしたことは、全く容認できない」などと述べ、一連のサイバー攻撃に対して強く反発している。

なお、サイバーセキュリティー分野の多国間連携では、3月18~20日に韓国で開催された第3回民主主義のためのサミットでも、商用スパイウエア(注3)の拡散と悪用に対抗する取り組みに関する共同声明への署名国拡大が発表されている(2024年3月22日記事参照)。米国と英国は2023年3月に署名済みで、商用スパイウエアの拡散と悪用は国家安全保障に重大な脅威をもたらすとの共通認識の下、有志国で輸出管理や情報共有を行うなどとしている。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。

(注3)コンピュータに記録されている情報を外部に送信するソフトウエア。合法的な捜査の一環として利用されることもあるが、悪用される懸念もある。

(葛西泰介)

(米国、英国、中国)

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