リチウム開発が牽引するビジネス機会の現状、サルタ州政府関係者に聞く

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2024年03月22日

ジェトロは2024年3月15日、アルゼンチン北部に位置するサルタ州の州政府関係者に同州におけるビジネス機会について話を聞いた。

アルゼンチン北部に位置するサルタ州は、ボリビア、パラグアイ、チリの3カ国と国境を接するだけでなく、アルゼンチン国内の6つの州とも州境を接している。また、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジル、チリの4カ国を横断して太平洋と大西洋を結ぶ両洋横断回廊が現在建設中だが、アルゼンチン国内はサルタ州と、同州に隣接するフフイ州を通る。

サルタ州の主な生産品目は、豆類、たばこ、レモンなどの農産品、金などの鉱物だ。ここに近い将来、リチウムが加わることになる。資源としては銅、ウラン、石油や天然ガスもある。銅は、ファースト・クォンタム・ミネラルズが開発を行っている。

現在、炭酸リチウムで3カ所、水酸化リチウムで1カ所の計4カ所のリチウムプラントが州内で建設中だ。加えて、28の探鉱プロジェクトがある。州として資源開発における社会的・環境的基準に配慮するため、地域社会と多くの取り組みを行っている。特にリチウムに関しては、フフイ州、カタマルカ州とともにリチウム円卓会議を構成し、3つの州が協力している。具体的には、法律の調和を図る取り組みを進めている。以前は、どの州が鉱業ロイヤリティを得るかで争うこともあったが、現在ではそのようなことはなくなり、3州の関係は良好だ。リチウムに関しては中国企業による投資が多いが、韓国のポスコもプラントを建設しており、2024年5月に生産を開始する見込みだ。

中国企業が州内でリチウム電池を製造するという構想もあったが、実現していない。中国企業が、電動バスをサルタ州の工業団地で製造するという構想もあり、それが具体化していればリチウム電池を製造も実現した可能性はあるが、リチウム以外の部材を輸入しなければならず、コストが合わなかったとみられる。

サルタ州は、アルゼンチンの北部観光の拠点となる都市であり、近隣州と比較して観光インフラが整っている。同州政府関係者は「北部におけるビジネス機会を探求する際の拠点として優れているので、多くの日本企業関係者に訪れてほしい」と述べた。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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