首相直轄の税制改革タスクフォースチーム、進出企業の課題解決に成果

(カンボジア)

プノンペン発

2024年04月03日

カンボジアのフン・マネット首相は2月に自らが主導するかたちで「首相直轄の税制改革タスクフォースチーム(TF)」を結成した。3月下旬には、日系企業が関わる案件でも、税制に係る懸念事項が解決する事例が出てきた。フン・マネット新政権は成長戦略の主軸として企業誘致に力を入れており、投資環境整備を進めている。同首相は「自分の家(カンボジア)にお客さま(外国企業)を招き入れるには、家の中の掃除(懸案事項の一掃)をしなければならない」と述べ、特に進出企業から改善要望が多い税制関連の課題解決を急務としている。

直近の事例では、日系企業が租税総局(GDT)の指摘事項に対して複数回、異議申し立てをしても進展が見られなかった案件が、税制改革TFの介入から1週間強で解決した。当該企業は「解決内容は自社が想定する最善のシナリオとなった」と評価し、カンボジア政府の税制改革への本気度が見える事例となった。

税制改革TFは、ソック・サラブット首相補佐特命相をはじめ、民間の企業経営者や会計士などから構成している。企業や業界団体などとGDTの間に生じた認識の違いや意見のずれなどについて、第三者的な立場で企業側よりヒアリングし、独自に分析の上、GDTや関係省庁と調整をする。その過程で認識された制度や運用上の課題は首相に直接報告され、今後の政策や制度づくりに生かされる。

税制改革TFメンバーで企業経営者のソック・ピセット氏は、ジェトロのヒアリングに対して「個別案件の対応の過程でGDT職員による税務調査方法に大きなばらつきがあることが分かってきた。一定の基準を設けるため、税務調査員に順守を求める標準作業手順書(SOP)の作成を進めている。加えて、SOPに沿わない税務調査が行われた場合の相談窓口の設置も検討している」と話す。SOPの作成は最終段階に来ており、実際のGDT職員の事例に当てはめながら、テスト運用と調整が進められている。

ジェトロの「2023年度海外進出日系企業実態調査」によると、カンボジアの投資環境上のリスク上位2項目は「法制度の未整備・不透明な運用」と「税制・税務手続きの煩雑さ」だったが、税制面のリスクがTFの活動によって改善されることが期待される。

(春田麻里沙)

(カンボジア)

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