OECD、2023年ODA実績を公表、対ウクライナODAがアフリカ全体へのODAを超える

(世界、デンマーク、ドイツ、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデン、米国、日本、英国、フランス、アフリカ)

調査部中東アフリカ課

2024年04月23日

OECDは4月11日、2023年(暦年)のOECD開発援助委員会(DAC、注1)メンバーの政府開発援助(ODA)の実績(暫定値、贈与相当額計上方式、注2)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同レポートは、DACメンバーなどのODA実績を集計し、毎年4月に前年の各国実績(暫定値)を公開しているもの。これに合わせ、同11日、OECD/DACはオンラインでローンチイベント「ODA Figures and Trends in 2023」を開催した。

集計結果の解説によると、2023年のDACメンバーのODA実績は実質ベースで過去最高額の2,237億ドルとなり、2022年(2,110億ドル)から1.8%増加した。DACのODA実績は5年連続で増加している。デンマーク、ドイツ、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデンの5カ国のODAは、国連目標である国民総所得(GNI)比0.7%を上回った。DACメンバー総計ではGNI比は0.37%だった。ODAが最も多かったのは、順に、米国(66億400万ドル)、ドイツ(36億6,800万ドル)、日本(19億6,000万ドル)、英国(19億1,100万ドル)、フランス(15億4,300万ドル)だった。

2023年の主なODAの内訳をみると、対ウクライナは総額405億ドル(DACメンバー国:200億ドル、EU関連機関:205億ドル、うち32億ドルが人道支援)に増加し、単年の一国に対するODAとして過去最大となった。ヨルダン川西岸地区とガザ地区へのODAも増加し、暫定額は2022年比12%増の14億ドル(うち7億5,800万ドルが人道支援)となっている。2023年の人道支援のODA実績は、259億ドル(2022年比4.8%増)だった。

一方、2023年の難民関連ODA実績は、310億ドル(ODA総額の13.8%)となり、2022年比で6.2%減少した。他方、DAC加盟国のうち7カ国において、国内難民受け入れ費がODA拠出額の4分の1以上を占めている。

質疑応答の中で、イベントに参加していたラジオフランスは、2024年4月3日にフランスが約8億ユーロのODA削減を発表した(2024年成長予測下方修正の一環)ことを挙げ、ドイツ、スウェーデン、ノルウェーなどの主要DACドナー国もODA削減の傾向にあると指摘した。これに対し、DACのカーステン・サタ―委員長は「本来、ODAとGNIはディカップリングの関係性を持つ。パンデミック中のデータが示すとおり、世界的な財政危機に際してもODAは減少しなかった。いくつかの国がODAを削減しているのは事実であるが、それらの国を説得しODAを拡大していく必要性を強調する」と述べた。

このほか、イベント参加者からは、サブサハラアフリカへのODA実績は2022年比4.6%増となっているものの、対ウクライナ(405億ドル)が対アフリカ全体(350億ドル)を上回ったことについて指摘が集まった。OECDのマティアス・コーマン事務総長は「成長の鈍化と債務返済コストの上昇により、開発途上国はさらなる財政への圧力と困窮のリスクに直面している。われわれは最も脆弱(ぜいじゃく)な国が経済開発と成長目標を達成できるよう、引き続きODAに尽力していかなければならない」としている。

(注1)DACは、OECD加盟国(38カ国)中の31カ国にEUを加えた32メンバーが加盟。日本もOECD加盟に先立ち1964年に加盟。

(注2)DACでは、2018年実績から、標準のODA計上方式として贈与相当額計上方式(Grant Equivalent System:GE方式)が採用されている。GE方式は、政府貸付などについて、贈与に相当する額をODA実績として計上するもので、贈与相当額は支出額、利率、償還期間などの供与条件を定式に当てはめて算出され、供与条件が緩やかであるほど額が大きくなる。

(吉川菜穂)

(世界、デンマーク、ドイツ、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデン、米国、日本、英国、フランス、アフリカ)

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