米オラクル共同創業者、テネシー州ナッシュビルへの本社移転に言及

(米国)

アトランタ発

2024年04月25日

米国オラクルの共同創業者のラリー・エリソン取締役会会長兼最高技術責任者(CTO)は4月23日、同社がテネシー州ナッシュビルで開催したオラクルヘルスサミット2024で、同社の本社をナッシュビルに移転する予定だと発言した。

同社は1977年にカリフォルニア州で創業し、2020年に本社をテキサス州オースティンへ移転した(2020年12月21日記事参照)。2021年4月には、2031年までに12億ドルを投じてナッシュビルに拠点を開設し、8,500人の雇用を創出すると発表したほか、同年12月には、電子カルテ(EHR)システムなど、病院などで使用する情報システムの大手プロバイダーのサーナーを約283億ドルで買収すると発表した(2022年6月に完了)。4月時点でナッシュビル拠点の建設は進んでいないものの、2023年末時点で同社はナッシュビルで722人の従業員を雇用しているとの報道(「ビジネス・ジャーナル」4月23日)もあり、ナッシュビル地域での事業を拡大しているようだ。

本社移転の発言は、エリソン氏とテネシー州選出の元連邦上院議員のビル・フリスト氏(注1)の対談中に行われた。対談の最後に同社がナッシュビルに拠点を設ける理由を問われ、エリソン氏は「ナッシュビルは既にヘルスケア産業の中心地なので、最終的には世界本社となるこの広大なキャンパスをナッシュビルに移転する」と述べた。発言後、エリソン氏は「言うべきではなかった」と述べたものの、撤回はしなかった。「ビジネス・ジャーナル」によると、同社が本社をナッシュビルに移転すれば、病院経営大手のHCAヘルスケアに次いで、ナッシュビル都市圏に本社を置く2番目に大きな上場企業となる。なお、4月24日時点で同社は本社移転について発表していない。しかし、テネシー州のビル・リー知事(共和党)は24日にX(旧Twitter)で「お帰りなさい、オラクル!信頼された企業がボランティア・ステート(注2)を新たな世界本社に選んだことを誇りに思う。テネシー州全体の雇用創出と経済成長にとって素晴らしいニュースだ」と投稿している。

ナッシュビルはヘルスケア産業の集積地で、病院経営大手のHCAヘルスケアなどが本社を構えており、ナッシュビルヘルスケア協議会によると、500社以上の医療関連企業が進出しているほか、ヘルスケア産業の専門知識を提供するプロフェッショナルサービス企業(会計、建築、財務、法務など)が400社近く立地している。また、エリソン氏は、ナッシュビル地域がヘルスケア産業の集積地である点に加えて、同社従業員調査で働きたい場所、家族と暮らしたい場所の両方で人気が高かったと述べた。

(注1)1994~2006年まで上院議員として、医療関連法案の作成を担当する保健・教育・労働・年金委員会(HELP)と財政委員会の両方に所属した。ナッシュビルに本社を置く病院経営大手のHCAヘルスケア創業者の親族。

(注2)米国各州には公認の愛称があり、テネシー州は「ボランティア・ステート」となっている。

(檀野浩規)

(米国)

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