欧州議会、対象企業大幅減の人権・環境デューディリジェンス法案を採択

(EU)

ブリュッセル発

2024年04月26日

欧州議会は4月24日、企業活動による人権や環境への悪影響を予防・是正する義務を企業に課す企業持続可能性デューディリジェンス指令案を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。採択された指令案は、政治合意案(2023年12月19日記事参照)と比べ、対象企業の基準を大幅に引き上げて義務の対象となる企業数を絞り込むものだ。EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会の交渉において紆余(うよ)曲折を経ながらも、6月の欧州議会選挙に伴う解散前最後の本会議で指令案を採択したことで、EU理事会が採択すれば、施行する見込み。

義務化の対象となるのは、EU域内で設立された企業については、(1)全世界での年間純売上高が4億5,000万ユーロ超、かつ(2)平均従業員数が1,000人超の企業。EU域外で設立された企業については、EU域内での年間純売上高が4億5,000万ユーロ超の企業。

指令は、上記を満たすEU企業と、EU域内で同じ売上高基準を満たす域外企業に対し、大規模企業から段階的に適用開始される。2027年以降は売上高15億ユーロ超かつ従業員5,000人超、2028年以降は9億ユーロ超かつ3,000人超、2029年以降は指令の対象となるすべての企業に適応される。

指令案を巡っては、EU理事会と欧州議会は2023年12月にいったん政治合意したものの、産業界の反発を受け一部の加盟国が採択を前に反対に回ったことから、EU理事会は政治合意を事実上撤回。対象企業の基準を大幅に引き上げる妥協案で合意していた(2024年3月21日記事参照)。これに対し欧州議会は、政治合意後の一方的な修正だとして反発し、一時期は、政治合意後に法案の成立が危ぶまれる異例の事態となっていた。最終的に欧州議会は、まずは最も大規模な企業だけでも始めることが不成立よりは望ましいとして、EU理事会の妥協案を受け入れた格好だ。

(吉沼啓介)

(EU)

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