第1四半期の米GDPは前期比年率1.6%増、インフレや輸入増が押し下げ要因に

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月26日

米国商務省が4月25日に発表した2024年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(速報値)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは前期比年率1.6%となり、市場予想(2.5%)を大きく下回った(添付資料表、図参照)。

需要項目別にみると、内需では個人消費支出(PCE)が前期比年率2.5%増、寄与度1.7ポイントと、前期(3.3%増、2.2ポイント)から鈍化した。財消費(0.4%減、マイナス0.1ポイント)がマイナスに転じたのに対して、サービス消費(4.0%増、1.8ポイント)は引き続き堅調だった。内訳では、財では自動車(9.0%減、個人消費内寄与度マイナス0.4ポイント)、レクリエーショングッズ(1.5%減、マイナス0.1ポイント)、ガソリン(10.9%減、マイナス0.2ポイント)などが主な押し下げ要因。サービスでは、フードサービス(2.0%減、マイナス0.1ポイント)以外の項目はすべてプラスとなった。1~2月はインフレが実質可処分所得や財消費などにも影響を及ぼしていたが(2024年4月4日記事参照)、第1四半期の食品・エネルギーを除くPCEデフレーターは前期比年率で3.7%(前期2.0%)と大きく伸びており、期間中を通じインフレが個人消費の押し下げ要因になった可能性がありそうだ。

設備投資は前期比年率2.9%増と前期(3.7%増)からやや低下したものの、比較的堅調だった。構築物は、製造業(14.2%増)とそれ以外で明暗が分かれ、全体では0.1%減だった。機器は、情報関連機器が前期に引き続き高い伸び(12.2%増)を示し、産業用機器(17.8%増)も増加した一方で、輸送機器(25.6%減)が減少した結果、全体では2.1%増となった。知的財産は、ソフトウエア投資が高い伸び(11.3%増)を示した結果、全体では5.4%増となった。設備投資全体では、インフレ削減法(IRA)などバイデン政権の政策効果の恩恵を受けやすい製造業関連の投資の伸びが目立つ結果となっている。

住宅投資は、戸建てを中心に伸びを示し、前期比年率13.9%増と3期連続のプラスになった。住宅ローン金利は利下げ観測期待の後退から再び上昇傾向にあるものの、底堅い住宅需要を背景に住宅着工が進んだかたちだ(2024年4月2日記事参照)。ただし、集合住宅については2期連続でマイナスになるなど一服感がみられる。

外需では、輸出が前期比年率0.9%増、輸入は7.2%増とともにプラスになった。輸入の寄与が輸出の寄与を上回った結果、純輸出の寄与度は0.9ポイントのマイナスとなり、GDPの構成項目の中で最大の押し下げ要因となった。輸入の内訳では、財が6.8%増(輸入内寄与度5.6ポイント)、サービスが9.0%増(1.6ポイント)と財の寄与度が大きく、中でも資本財(3.2ポイント)が輸入の伸びの半分弱を占めている。コンピュータや産業用機器など産業向けの輸入が大きく寄与し、設備投資における機器の伸びと整合的な結果になっている。

成長率は市場予想を下回ったものの、最大の押し下げ要因となっている輸入増は前述のとおり設備投資と関連したものとみられ、GDPは数字ほど減速しているわけではない。ただし、消費は依然として強めの数字ではあるものの、インフレの影響を感じさせる内容で注意を要する。インフレに伴い、裁量的支出の落ち込みやコストを消費者に転嫁できない企業の経営圧迫などが指摘されており(2024年4月19日記事参照)、この傾向が続けば、高金利の継続とも相まって消費や雇用は減速していく可能性が高い。その意味で、物価動向が今後の米国経済を左右するカギになるといえそうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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