米上院、マヨルカス国土安全保障長官の弾劾訴追を棄却

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月23日

米国の連邦議会上院は4月17日、国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官に対する弾劾訴追を破棄する案を、賛成51票、反対49票で可決外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。賛成票は、48人の民主党議員に加え、無党派議員ながらも同党と行動を共にするアンガス・キング議員(メーン州)、バーニー・サンダース議員(バーモント州)、キルステン・シネマ議員(アリゾナ州)が投票した。一方、反対票はすべて共和党議員で、党派で割れた(注)。

共和党は、マヨルカス長官が任期中に移民および国境警備に関する法律に繰り返し違反し、その結果、毎年何百人もの外国人が米国に不法入国することとなったなどとして、同長官を弾劾訴追する決議案を2月に提出しており、当該決議は連邦下院で可決されていた(2024年2月16日記事参照)。11月の大統領選挙でも、移民や国境問題は重要な関心事項となっている。

他方、民主党は、下院共和党議員らが政治的な駆け引きをしているなどと批判していた。下院国土安全保障委員会の少数党筆頭理事のベニー・トンプソン議員(民主党、ミシシッピ州)が1月29日に発表したスタッフ・レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、「共和党はマヨルカス長官を弾劾訴追することにより国境警備の努力を妨害している」「共和党はドナルド・トランプ氏を再選させたいがために、国境での難題を長引かせている」などと記し反論していた。

また、移民関税捜査局(ICE)が議会から、2024年の1日平均収容3万4,000人分の予算しか与えられていなかったところ、それを超える3万7,000人の外国人を逮捕・拘留し収容した点を例に、「(マヨルカス長官は)同年度に追加資金を要求したものの、議会は拒否した。追加資金を要求したという点は、マヨルカス長官が(移民課題に関して)制約の中で議会が制定した法律を順守していることを明らかにしている」と反論している。

さらに、コロンビア大学法学教授のデボラ・パールシュタイン氏が「過去5政権で国境を越えるすべての入国者を拘留できた政権はなかった」と述べた点も引用している。レポートによると、委員会での証言で、数十年にわたるキャリアを持つ国境警備隊員は、これまで移民を地域社会に解放してきたことを認め、とりわけ、トランプ政権下ではメキシコとの国境で50万人以上を解放したことを明らかにしたとし、トランプ政権を批判した。

なお、マヨルカス長官は2024年4月16日に、下院国土安全保障委員会で2025年度の予算に関して証言した際、「(米国の)移民制度は根本的に破綻している。これを解決できるのは議会だけだ。議会は1996年以降、28年もの間、移民執行法を更新していない。国境警備隊や移民審査官を増やし、テクノロジーを導入する必要性を実現できるのは議会だけだ」と発言している。同長官はこのような内容を繰り返し発言しており、2023年5月10日にも、「現状は、議会の改革が必要不可欠であると全員が合意したにもかかわらず、議会が破綻した時代遅れな移民システムを20年以上維持してきたことの結果であるということは強調してもしきれない」と述べていた。

(注)2度目の採決。1度目の採決は賛成51票、反対48票、棄権1票となっていた。

(吉田奈津絵)

(米国)

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