西バルカン諸国の経済、新型コロナ禍からの回復傾向が続く、世界銀行レポート

(西バルカン)

ウィーン発

2024年04月24日

世界銀行は4月11日、西バルカン(注)に関する2024年春季経済レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。

同レポートによると、西バルカン諸国の2023年の実質GDP成長率は前年より0.8ポイント減の2.6%となった。最大の貿易相手国であるEU諸国の経済減速が主な要因。ロシアのウクライナ侵攻や高インフレにより、EUの2023年のGDP成長率は前年比3.0ポイント減の0.6%となり、西バルカンの貿易、外国直接投資、景況感に悪影響を及ぼした。しかし、2023年の西バルカンの実質GDP成長率は、引き続き新型コロナ禍前の水準を上回り、特にセルビアが2.5%、モンテネグロが6.0%と、2023年秋季レポートの予測を上回った(添付資料表参照)。

労働市場は2023年も引き続き好調で、西バルカンの15歳以上の平均就労率は過去最高の48.1%となり、失業率は10.9%だった。若年層の失業率は25.5%に下がったが、依然としてEU平均の13.8%を大幅に上回っている。

実質賃金は2023年に8.4%上昇した。主な要因は、最低賃金の自動物価スライド、公務員の大幅な賃上げと民間企業の深刻な人手不足とみられる。同レポートでは、西バルカンの実質賃金の上昇率が2015年から生産性の上昇を上回っていることを問題視しているが、2024年4月15日に開催されたウィーン比較経済研究所(WIIW)のセミナーに参加した、世界銀行の西バルカン担当主席エコノミストのブラドミール・ヨバノビッチ氏は、賃金は非常に低いレベルから上昇してきたため心配はなく、購買力の上昇は経済成長の追い風にもなると指摘した。

貧困率は2023年に13.4%と前年比で引き続き低下傾向だが、新型コロナ禍前に前年比3ポイント以上だった減少幅は、2023年以降の予測では1ポイント前後となっている。ヨバノビッチ氏は、同氏が北マケドニアで実施した調査によると、貧困率は高インフレのために上がりつつあるとした。

2023年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比で5.1%となり、1月の14.3%から大幅に減少した。食品価格を含む国際商品価格上昇の鈍化が主な要因。

西バルカンの対外的ポジションは顕著に改善し、主にエネルギー輸入額の減少により、経常赤字はGDP比4.9%で過去最低のレベルに下がった。国別では、2度目の経常黒字を達成した北マケドニアで顕著な改善がみられた。

世界銀行の西バルカンの中期予測は、慎重ながらも楽観的だ。当該地域のGDP成長率は2024年に3.2%、2026年に3.8%と緩やかに上昇する見通しだが、複数の下方リスクとして、世界経済、特にユーロ圏の不振による外国直接投資の減少と貿易への悪影響、また域内の懸念事項として、地政学的緊張の高まり、さらなる人口流出、不安定な政治や継続的インフレを挙げている。

(注)セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、コソボ、北マケドニア、アルバニア。

(エッカート・デアシュミット)

(西バルカン)

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