バイデン米政権、アースデイに際し気候変動対策に係るファクトシート発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月23日

米国のバイデン政権は4月22日、アースデイに際し、気候変動対策に関する新たな取り組みやこれまでの成果をまとめたファクトシートを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ファクトシートで新たに発表されたのは、低所得地域や恵まれないコミュニティーにおける太陽光発電へのアクセス拡大に向けた取り組みだ。具体的には、インフレ削減法(IRA)に基づき環境保護庁(EPA)が所管する「ソーラー・フォー・オール」競争的資金プログラムから70億ドルを拠出する。これを通じて、90万世帯以上が住宅用太陽光発電を導入することで、今後25年間で3,000万トン以上の炭素排出量の削減が見込めるほか、電気代が1世帯あたり年約400ドル、全米では3億5,000万ドル以上削減されるとしている。なお、EPAは対象となる60のプロジェクトを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、全米50州のほか、準州のプエルトリコや部族地域などもカバーされている。また、太陽光発電へのアクセス以外にも、気候変動対策に従事する若者向けトレーニングプログラム(the American Climate Corps)などの取り組みも進めていく方針を示した。

ファクトシートでは、こうした新たな取り組みとともに、これまでのバイデン政権の取り組みの成果も強調している。IRAとインフラ投資雇用法(IIJA)により、米国の太陽光発電、風力発電、蓄電池、そのほかのクリーンエネルギー技術への投資ブームが引き起こされたとし、(1)再生可能エネルギーの導入拡大〔10ギガワットを超える洋上風力プロジェクトの導入(2024年4月4日記事参照)など〕、(2)送電網の増強やアップグレード、(3)恵まれない地域社会における分散型エネルギーの導入や農村地域へのクリーン電力の導入拡大、(4)電気自動車(EV)・バッテリーおよびそのサプライチェーンに対する投資の増加やアクセスの改善(EV価格は就任前と比較して20%以上低下、充電ステーション数は80%以上増加など)、(5)製造業の脱炭素化支援(2024年3月29日記事参照)などを通じた製造業・クリーンエネルギーへの民間投資の増大(約7,000億ドル)、(6)クリーンエネルギー関連での質の高い雇用の創出などの具体的な成果を強調した。

また、このほかにも、水供給の改善やPFAS汚染対策(注)といった環境負荷の軽減、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電所の建設停止(2023年12月5日記事参照)や2050年までに原子力エネルギー発電容量を3倍に引き上げる計画の発表(2023年12月6日記事参照)、クリーンエネルギーサプライチェーンの強靭(きょうじん)化に向けた国際パートナーとの連携強化など気候変動対策における国際的なリーダーシップの回復といった点についても成果をあげたとした。

(注)PFASは、いわゆる有機フッ素化合物の総称で、耐熱性や耐水性、耐油性、非粘着性などの特性があり、衣料、食品包装、調理器具、化粧品、電子・電気部品、自動車部品をはじめとする多くの産業や製品に利用されている。一方で、PFASが環境や人体に与えるマイナスの影響を理由に、PFASに関する規制の導入やメーカーが製造の中止を表明するといった動きもある(2022年12月22日記事2023年3月15日記事参照)。

(加藤翔一)

(米国)

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