労働者消費基金未加入企業への罰則が明確に

(メキシコ)

メキシコ発

2024年04月11日

メキシコ政府は4月4日、連邦官報で連邦労働法(LFT)の改正外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、翌日に施行した。改正したのはLFT第994条III号で、法定価額算出係数(UMA、注)の50~1,500倍の罰金の対象となる違反行為として、雇用主の義務を定めるLFT第132条のXXVI-BIS号を追加した。第132条XXVI-BIS号は、雇用主が国家労働者消費基金庁(Infonacot)の運営する基金に加入する義務を定めている。今回の改正は、議員立法で2018年から提案されていたものだが、最終的に2024年2月20日に国会上下両院を通過した。

Infonacot(通称Fonacot)は、労働者が家具や住宅建設資材、衣類などの物品、旅行や葬儀などのサービスを購入する資金を低利融資する政府機関で、融資を受けた労働者は、所得水準に応じて分割払いの返済スケジュールを組むことになる。返済は労働者が自ら行うのではなく、雇用主が給与から天引きするかたちで雇用主が労働者に代わって返済する。また、労働者が職を失った場合の返済義務の繰り延べ(最長6カ月)、労働者が死亡した場合の返済免除などの恩典がある。

Infonacotに雇用主が加入する義務は、2012年11月30日付官報で公布した労働法改正によって既に10年以上前から導入されていたが、違反した場合の明確な罰則が定められていなかった。今回、明確となった罰金の額は、2024年時点では5,428.50ペソ~16万2,855ペソ(約4万9,000円~約147万円、1ペソ=約9円)となる。

労働査察に備え、Infonacot加入の徹底を

LFTの第1,002条は、LFT第16編(義務と制裁、第994~1,010条)で制裁が定められていない違反については、UMAの50~5,000倍の罰金を科すことができると規定しているため、今回のLFT改正は、罰金額の軽減(上限がUMAの5,000倍⇒1,500倍)とも解釈できる。しかし、雇用主のInfonacot加入義務違反が明示的に罰金の対象となることがLFTに規定されたことで、労働社会保障省(STPS)が今後実施する事業所査察で、企業のInfonacot加入状況が検証され、加入していない場合に罰金が科される可能性は高まると推測される。

(注)2016年から従来の最低賃金に代わって導入された罰金などの計算の用いる係数。インフレ率などを加味して国立統計地理情報院(INEGI)が毎年1月に更新する。2024年のUMAは1日当たり108.57ペソ(約977円、1ペソ=約9円)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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