米ジョージア州知事、労働者の投票を経ない労組結成を制限する法案に署名

(米国)

アトランタ発

2024年04月30日

米国ジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)は4月22日、新たな労働組合結成に制限を与える法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名し、同法は成立した。同州の経済優遇措置を受けるには、組合組織化に当たって労働者による投票実施が必須となる(注1)。

労働組合への加入や結成のためには、全米労働関係委員会へ請願書を提出して投票を行い、労働者の過半数の賛成を得るか、組合授権カード(注2)などで労働者の過半数の支持を示した上で雇用主の承認を得る必要がある。労働省によると、企業による自主的な承認の利点は、組織化に当たって最も論争が多く、長引く部分の選挙プロセスを省略できることだ(注3)。

今回成立した同法により、ジョージア州の経済優遇措置を受ける条件として、雇用主は次の3点を禁止される。(1)無記名投票によって交渉代表者の選出が行われるかもしれない状況で、署名済みの組合授権カードにのみ基づいて、雇用主が従業員に交渉代表者承認の権利を自主的に付与すること、(2)州法または連邦法で別途要求される場合を除き、従業員の事前の書面による同意なしに、従業員個人の連絡先情報を労働組合または労働組合を代表して行動する第三者に自発的に開示すること、(3)下請け業者に上記(1)、(2)の行為を要求すること。2025年1月1日以降に同州と企業の間で締結された優遇措置が対象となり、条件に反した場合には、対象事業に関して受領した経済開発奨励金を全額返還する必要がある。なお、同様の法律がサウスカロライナ州やテネシー州でも制定もしくは支持されているとのことだ(「アトランタ・ジャーナル・コンスティチューション」紙電子版3月20日)。一方で、同法は「ジョージア州の労働者と民間企業に対する違法な攻撃だ」として、ジョージア・米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は同法に反対する書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出した。

米国南東部は労働組合の組織化率が低いものの、全米自動車労働組合(UAW)が米国で組合を持たない自動車メーカー工場での組合組織化キャンペーンを2023年11月に開始して以降、組織化に向けた動きが活発になっている。4月16日には、ケンプ知事を含む南部6州(注4)の共和党知事がUAWのキャンペーンへの反対を共同で表明していたものの(2024年4月23日記事参照)、テネシー州のフォルクスワーゲン(VW)のチャタヌーガ工場で4月19日、UAW傘下の労働組合結成が従業員投票で可決された(注5、2024年4月23日記事参照)。さらに、5月13~17日にはメルセデス・ベンツのアラバマ州タスカルーサ工場でも、UAW加入のための投票を実施する予定で、今後の動向が注目される。

(注1)ケンプ知事は2024年1月、政権の優先課題の1つとして、雇用の条件として組合への参加義務付けを禁止する労働権法を有する州としての地位強化を挙げ、「州の優遇措置利用企業に対し、労働者が組合結成を図る場合には、労働者の権利を尊重し、無記名投票へのアクセスを義務付ける法案を提出する予定だ」と述べていた。

(注2)労働者が労働組合を交渉の際の代表として支持することを示す署名入りのカード。

(注3)例えば、2023年1月には、マイクロソフト傘下企業での品質保証部門の労働者による組合組織化運動で、マイクロソフトは投票を行わずに同労働組合を承認した。

(注4)アラバマ、ジョージア、ミシシッピ、サウスカロライナ、テネシー、テキサスの6州。

(注5)米国自動車大手3社〔ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティス〕以外の自動車メーカーの南部の工場での労働組合結成は初めてとなる。

(横山華子)

(米国)

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