米USTRのスペシャル301条報告書、中国の知財慣行を引き続き懸念

(米国、中国)

ニューヨーク発

2024年04月30日

米国通商代表部(USTR)は4月25日、知的財産権の保護・執行に関する各国の状況をまとめた2024年版スペシャル301条報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書は1974年通商法182条に基づき、知財保護やその侵害に対する取り締まりなど執行が不十分な国を特定し、懸念が大きい順に「優先国」「優先監視国」「監視国」に指定している(注1)。優先国に指定した場合、USTRは当該国の通商慣行について、1974年通商法301条(注2)に基づく調査を開始する。調査の結果、当該国の通商慣行が米国の商業に負担または制限を与えていると判断される場合には、追加関税などの対抗措置が講じられ得る。

2024年版報告書では優先国に指定した国はなかった。優先監視国には前年(2023年4月27日記事参照)と同じく、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、ロシア、ベネズエラの7カ国を指定した。監視国には前年から引き続いて20カ国(注3)を指定した一方、ドミニカ共和国とウズベキスタンの2カ国を除外した。なお、過去に優先監視国に指定していたウクライナは、ロシアの侵攻を理由に引き続き評価対象外となった。

USTRは優先監視国に指定した中国について、知財保護と執行に関して多くの深刻な懸念が残っていると指摘した。また、中国の知財関連の改革ペースは2023年も遅いままだったと懸念を示したほか、技術移転や模造品などに関する問題を列挙し、米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意、2020年2月21日記事参照)の順守状況を監視し続けると記した。

監視国から除外した2カ国のうち、ドミニカ共和国については、偽造医薬品に対する執行強化、執行関連統計の公開、知財専門の検察官の増員など、執行と透明性に関する懸念への対応に大きな進展があったとした。ウズベキスタンについては、関税法を改定し模造品の輸出入を差し止められるようにしたことなど、知財保護と執行に関して持続的な進展がみられたとした。

(注1)優先国には、米国製品に特に深刻な悪影響を与える政策や慣行を取っている国が指定され、1974年通商法301条に基づく調査の対象となる。USTRは優先国の指定を補助するため、知財の保護や執行に特定の問題がある国を優先監視国と監視国に指定している。USTRは優先監視国に1年以上指定している国に関し、当該国の問題解決を支援するための行動計画を策定するよう義務付けられる。

(注2)1974年通商法301条に基づく措置の例には、トランプ前政権下の2018年7月以降に賦課されている対中追加関税(301条関税)がある。301条関税の発動経緯や動向については、2024年1月18日付地域・分析レポート参照

(注3)アルジェリア、バルバドス、ベラルーシ、ボリビア、ブラジル、ブルガリア、カナダ、コロンビア、エクアドル、エジプト、グアテマラ、メキシコ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ、トルクメニスタン、ベトナム。

(葛西泰介)

(米国、中国)

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