スコットランド、30年排出削減目標を撤回、新たな政策パッケージを発表

(英国)

ロンドン発

2024年04月24日

英国・スコットランド自治政府は4月18日、温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに1990年比で75%削減する目標(注)を撤回した。新たな気候変動に関する政策パッケージの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で明らかにした。

この目標の撤回は、政府諮問機関の気候変動委員会(CCC)による目標達成を不可能とする声明(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を受け決定された。なお、2045年までのネットゼロ目標は維持される。

CCCは声明で、気候変動計画の更新や気候変動対策の遅れにより、2030年の目標は達成できないと指摘。目標未達となった2021年にGHG排出量が減少したのは電力供給と産業部門のみで、植林、泥炭地の再生率、ヒートポンプ導入率など、目標の進捗を示すほとんどの重要な指標は計画から遅れていた。BBCによると、年間のGHG排出量削減目標は冬の気候に大きく左右される運任せのもので、過去12年間で8回達成できなかったことからこの傾向は明らかなものだった。スコットランド最後の石炭火力発電所であるロンガネット発電所の廃止によって容易に実行可能な施策はやりつくされ、今後の進展には生活様式の変更を伴う大きな変化が必要という。一方、緑の党は、政策よりも目標に重きを置きすぎた現在のシステムが根本的に失敗していると指摘した(BBC4月18日)。

今回発表された新たな政策パッケージは、輸送、土地利用・農業、その他の3分野について18の施策で構成される(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。主な施策は次のとおり。

  • 2030年までに約2万4,000カ所の電気自動車(EV)用充電ポイントを増設する新たなルートマップを2024年中に発表
  • 農家と連携した、家畜からのGHG排出削減に向けたメタン抑制飼料の普及を支援する試験スキームの実施
  • 泥炭地再生、植林、再生可能エネルギー発電促進のため、大規模土地所有者への新たな炭素税導入について協議を実施
  • 2030年までに自動車利用を20%削減し、自動車への依存を低下

英国全体の気候変動目標に向けた計画も見直しが進んでいる。2023年9月には、内燃車販売禁止の2035年までの延期など、2050年のネットゼロ達成に向けた計画の見直しが発表された(2023年9月22日記事参照)。

(注)ウェールズ、スコットランド、北アイルランドは大幅な自治権を有し、自治政府はそれぞれ独自のGHG削減目標を設定。スコットランドは2030年の中間目標のほか、2045年までのネットゼロを法定目標として掲げており、これは英国全体の2030年までの68%削減、2050年までのネットゼロより野心的な目標だった。

(奈良陽一)

(英国)

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