社会福祉事業団体向けに国有不動産の賃借を簡素化

(ウクライナ)

ワルシャワ発

2024年04月19日

ウクライナ政府は4月8日、国有不動産の賃借に関する既存の決議の一部を変更する決議を4月2日に採択したことを発表した。これにより、ロシアによる侵攻などに伴う国内避難民の支援などを行う社会福祉事業団体が国有不動産を賃借する際、入札なしで国から不動産を借りることが可能になった。また、社会福祉事業団体が国有財産を賃借する際の提出書類が簡素化されたほか、賃料の優遇処置が定められた。

国有財産の民営化や払い下げ、リース、管理、資産評価などは、ウクライナの中央行政機関の国有財産基金(SPFU)によって行われる。SPFUのビタリー・コバリ総裁は「今回の決議により、社会福祉事業団体がより簡単かつ迅速に国から不動産を借りることが可能になり、国内避難民などへの支援機会の拡大に貢献する」とコメントした。

SPFUは2023年1~9月期に、国有財産の民営化で26億8,364万フリブニャ(約105億円、1フリブニャ=約3.9円)の利益をあげたほか、リースによって5億7,215万フリブニャの利益、国有企業の運営で1億1,650万フリブニャの利益をあげた。これら利益の総額33億7,229万フリブニャは国家予算一般基金へ振り込まれた。

SPFUは2023年9月30日現在、民営化の対象として1,390の小型案件と16の大型案件(注)を抱える。今後は、首都キーウ(キエフ)市中心にあるホテル・ウクライナのほか、キーウの大型ショッピングセンターのオーシャンプラザ、ウクライナ各地のチタン鉱山会社などがオンラインオークションを通じて売却される予定。また、3月中旬時点でSPFUはウクライナの制裁対象となった35の個人またはグループに属する合計731の資産を管理しており、これらも順次オークションで売却される。

SPFUのコバリ総裁は2月19日に開催された日・ウクライナ経済復興推進会議に合わせ、日本を訪問した。農林水産省の代表者らとの作業会議を開催した際には、SPFUが現在38万6,000ヘクタールの農地を管理していることに触れた上で、農業分野の日本の投資機会について議論が行われた。

(注)国有財産の価格が2億5,000万フリブニャ以下のものを小型案件、2億5,000万フリブニャ超のものを大型案件とする。

(柴田哲男、坂口良平、柴田紗英)

(ウクライナ)

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