米商務省、建設業での女性の就職を支援する「CHIPS建設業における女性フレームワーク」発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年05月07日

米国商務省は5月2日、建設業界での女性の就職を支援する5つの指針をまとめた「CHIPS建設業における女性フレームワーク(CHIPS Women in Construction Framework)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。併せて同省は、インテルとマイクロンが、同フレームワークを採用することも発表した。両社はともに、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づき、半導体製造施設の建設などで助成を受けるため、商務省と予備的覚書(PMT)を締結している(2024年3月22日記事2024年4月26日記事参照)。

CHIPS建設業における女性フレームワークは、ジーナ・レモンド商務長官が進めている「建設業における100万人の女性イニシアチブ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の一環で、今後10年間で建設業に従事する女性を倍増させ、同分野での労働力の拡大を目的としている。同フレームワークを採用する企業は、請負業者や労働組合などと協力し、次の点を実践できるよう取り組む。

  • CHIPSプラス法に基づいて資金が提供される建設プロジェクトにおいて、女性参加を増やすための目標を設定し、進捗状況を監視する。
  • 女性や経済的に不利な立場にある人々と建設業界との接点を増やし、同業界への就職促進で実績ある団体などとのパートナーシップを構築する。
  • 女性や経済的に不利な立場にある個人を対象とした研修への投資、アプレンティスシップ(注1)の目標や準備プログラムなど、研修手段を開発する。
  • 女性や経済的に不利な立場にある個人が職場に定着できるよう、育児や交通などの面で支援する。
  • 健康的で安全かつ個人が尊重される職場を維持し、職場の研修、方針、慣行を通して、ハラスメント、差別、報復、暴力を防止する。

レモンド長官は今回の発表に際し、同フレームワークについて「企業、地域社会、労働組合、そのほかの人材育成パートナーを結集して、タレントパイプライン(注2)の整備と職場に必要な支援体制を確立することで、建設業での女性登用を促進する」と、その意義を述べている。

CHIPSプラス法には、包摂性に関する条項が複数含まれており、中には、商務省に対して、経済的に恵まれない人々の半導体業界での雇用拡大を指示しているものもある。またCHIPSプラス法実施の大統領令には、優先事項として、女性や経済的に恵まれない人を含む、幅広い利害関係者と地域への利益を生み出すことが設定されている(2022年8月26日記事参照)。このような方針から、CHIPSプラス法に基づく助成を申請する企業は、一定程度、女性を雇用することが求められている。一方で、半導体施設の新設や拡張に必要な建設業で働く人のうち、女性は1割にも満たないとされており、こうした条件が同法の足かせになっていると指摘されていた(議会専門誌「ザ・ヒル」3月7日)。また、包摂性に関する要件が、同法に基づく助成発表の遅れにつながったとの指摘もある。今回の発表には、こうした懸念を緩和する狙いもあるとみられる。

なお、商務省は、同フレームワークの採用は、CHIPSプラス法に基づく助成を受けるための必須条件ではないとしているが、PMTを締結した全ての企業が同フレームワークを採用することを促している。

(注1)職業訓練における見習い制度。

(注2)人材を確保しておくための仕組み。

(赤平大寿)

(米国)

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