統一自動情報システムの運用でスピードアップに期待−連邦税関局と外国企業・組織との会合(2)−

(ロシア)

モスクワ事務所

2015年02月19日

ロシアでは通関手続きを行う税関によって、関税分類番号の判断や必要書類が異なり、日系企業が日々変化するビジネスで、最適なサプライチェーンを構築する際の大きな障壁となっている。連載の後編は税関間の情報共有について。2014年11月から税関における統一自動情報システムの運用が本格的に開始され、通関作業の迅速化が期待されている。

<ロシアでは輸入者登録の規定はない>
日本側の質問は以下のとおり。

通関手続きを行う上で、輸入者登録は必ず必要となるため、連邦税関局のホストコンピュータには輸入者に関する情報が当然登録されており、輸入者ごとに、過去の通関実績が記録されているものと考えている。しかし、これらの情報が登録されているにもかかわらず、特定の税関で何度も通関実績のある製品に関し、異なる税関で通関する際に、異なるHSコードの解釈を提示されたり、必要書類の不備を指摘されたりするなどの状況に日本企業はたびたび直面している。税関間で、過去にどのような書類を提出し、通関許可したかなどの情報共有は確実に行われているのか。もし過去の通関許可時とHSコードや必要書類が異なるのであれば、根拠を示してほしい。

これに対する通関・税関管理本部と商品命名管理局のコメントは以下のとおり。

そもそも、関税同盟(注)やロシアの税関関連法規では輸入事業者の税関での登録については規定されていない。しかし2014年11月12日からは、電子的手段での貨物の通関申告とリリース(リリースの拒絶)、リリース後の税関管理の実施の際の、統一自動情報システム利用規則(2013年9月17日付連邦税関局令第1761号により承認)が発効した。

<電子アーカイブ作成手順が重要に>
本規則の実施に向け、税関の統一自動情報システムのプログラムが抜本的に近代化された。特に、申告者の電子アーカイブ(データベース)の機能が大きく向上した。これにより、貿易事業者は書類を1回だけ電子版で税関に提出すれば、貨物をどこで申告するかにかかわらず全税関で貨物の通関申告時、通関後に何度も利用することが可能となった。

2014年11月12日以降、申告者は税関の統一自動情報システムの一部を利用できるようになった。電子アーカイブは申告書記入のベースとなる電子版書類の提出と保存を目的としている。これにより、通関申告や商品のリリースの段階だけでなく、リリース後や税関管理実施の際に電子的に情報交換することが可能となる。税関管理の全ての段階おいて、税関担当者は申告者に対してではなく、電子アーカイブに情報を求めることができる。

本システムを利用するためには、貿易事業者がまず、電子アーカイブ作成の手順に従うことが必要となる。まず、申告書のベースとなる電子版書類を統一自動情報システムにアップロードする。電子版書類の内容がオリジナルである紙面の書類と一致しており、間違いないことを、申告者は電子署名で認証する。

次に、税関情報システムが提出を受け付けた情報を処理し、申告者に対し、自動通知によって結果を知らせる。提出書類が電子版による規定フォーマットに合致していない場合、税関情報システムは間違いを指摘し、書類を再提出するよう指示する。申告者が税関情報システムから入力済みの書類に対する個体識別(ID)番号を受け取れば、電子アーカイブへの登録が完了する。ID番号へのリンクは、申告者が税関に電子版申告書を提出する際に添付する提出物一覧の注釈欄に記載される。

本電子アーカイブにより、通関申告と税関管理のスピードアップが図られる。理由は、第1に、通関申告のプロセスにおいて、申告人に対し電子アーカイブに登録した書類を要求することがなくなるため。第2に、国際的な相互情報システムであり、許可書類を検査する過程において、税関から連邦の各行政機関に対し書面での照会が不要となるためで、情報システムはID番号により、申告人の電子アーカイブから情報と書類を受け取り、申告書に記載された情報と照合する。第3に、税関の決定を申告人に通知するプロセスが自動化されるため。税関の情報システムが申告人の情報システムにしかるべき通知を発信する。

電子アーカイブの情報は無期限に、または有効期限まで保存されるため、税関は商品の通関時、リリースまたはリリース拒絶時、リリース後において繰り返し利用可能だ。電子アーカイブに保存された申告人に関する情報は、その所在地にかかわらず、貨物の申告先となる全ての税関からアクセスが可能なため、後続の通関手続きが迅速に行われる。

<さまざまなソフトで税関職員の作業円滑化を図る>
通関手続きを担当する税関職員の作業の円滑化のために、連邦税関局では、具体的な貿易事業者の過去の申告歴について、貨物申告地にかかわらず、分析できるプログラムを使用している。例えば、「モニタリング・分析」という複合ソフトでは、税関の検査官が過去にロシア国内の任意の税関ポストでリリースされた商品の申告書を閲覧することが可能で、他の税関管轄地域での貨物の通関手続きを迅速に管理することができる。本ソフトではさまざまな情報〔例えば、申告人の納税者番号(INN)、商品コード、原産国など〕を基に貨物の申告書を検索することが可能だ。

また、税関管理自動情報システム「アイスト−M」には商品分類管理のための電子ダイレクトリーと検索システムが内蔵されている。例えば、検査官に申告書にある商品の記述に該当する特別な要求があることを知らせることができ、申告者に追加書類を要求する際に使用される「HSコードによる商品分類に利用される書類と情報」、連邦税関局令により承認された「個別商品に関する統一HSコードによる分類の決定・解釈集」などが搭載されている。

なお、ロシア連邦税関局とユーラシア経済委員会の公式ウェブサイトには、HSコードによる商品分類の暫定版が掲載されている。

(注)ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟。2015年1月1日にユーラシア経済連合が発足し、同2日にアルメニアが加盟した。

(齋藤寛、エカテリーナ・クラエワ)

(ロシア)

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