東洋機械株式会社

10年という月日を長いと感じるか。拙速よりも巧遅を選ぶ。

1947年の創業以来、日本の鉄道の発展とともに、車両製造、線路等の管理、特殊鉄道車両の検査・整備・修繕を行う。国内市場が縮小する中で、日本で長年培ってきた高い技術力を武器に、タイへの進出を目指す。

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展開国・地域:
・2019年 タイ
事業内容:
鉄道用特殊車両の検査・修繕・改造、鉄道用特殊車両の製造・部品販売・メンテナンス、保線用機械の開発・製作

代表取締役社長 佐々木 拓 氏

限られたパイより大きなパイを目指す

日本経済はバブル崩壊に加えて、少子高齢化社会に突入したことで、国内の経済活動の拡大が見込めない状況だと思います。これは国内の人の移動が伸び悩むことを意味しており、ひいては鉄道会社の車両購入数の減少や経営合理化に向けた管理費用の縮小にもつながります。弊社が取り扱う車両は、地域ごとに代理店があり、営業力・技術力を強化しても売り上げの拡大が望めません。担当する地域に新路線が建設されない限り、受注が大きく増えることもなく、このままでは弊社の成長戦略を描くことが困難な状況でした。そこで、10年程前から、新規顧客の獲得や受注増を目的に、成長が著しいアジア市場に進出しようと考えていました。進出先としては、自国のインフラを自国で運営でき、かつ、その規模も比較的大きいタイを選びました。また、タイが親日国家であることも、進出先に決めた大きな要因となりました。

名取工場で修理車両のメンテナンスを行う様子

同工場にある修理車両運搬のためのレール

良きパートナーとの出会いが成功を導く

鉄道事業の輸出は日本の国策となっています。しかしながら、ODAでは車両納入に成功したとしても、弊社が強みとする特殊鉄道車両のメンテナンスに関するノウハウを継続的に売り込める保証はありません。進出するからには長期的に存続できる事業に仕立てることが必要なため、投資形態を模索していました。加えて、鉄道事業は公益性が高く、地元の理解も必要となります。そのため、現地パートナーの存在が重要な要素となりますが、当初はタイ側との意思疎通に苦労しました。ビジネス手法や商習慣は当然のこと、時間に対する考え方まで日本とは異なります。それを解決してくれたのが国費留学で来日し、東京大学博士課程を修了してタイに帰国したタイ人パートナーの存在でした。併せて、日本で取引のある車両メーカーに推薦書を書いてもらえたことも、タイ国鉄に弊社の技術を高く評価してもらうことにつながりました。

タイ 代表的な鉄道車両

時間をかけても確信してから実行する

弊社は、進出を検討する段階で時間軸を長めに取ることを心掛けました。時間に制約があると、見落としや誤判断につながりやすいからです。「必ずいつまでに進出するという姿勢ではなく、いつか必ず進出する」という姿勢が良いと思います。時間を経ることで、確信できることが多くあります。間違いや見落としをなくし、現地パートナーと真のお付き合いができるかを見極めるための時間も必要でしょう。そうした考えから、タイでの事業はまずはメンテナンスサービスの提供から始め、信頼の獲得と現地のニーズを把握してから、車両等の商品の提案につなげていきたいと考えています。併せて、最悪の事態も想定し、いきなり資本を全額投入するのではなく、最小限の資本から始めることにしました。こうしたリスク管理のアドバイスはジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」の専門家からいただき、現地パートナーにも理解してもらっています。

現地法人のグランドオープニングセレモニーの様子

専門家からのポイント

進出成功の最大のポイントは、東洋機械の佐々木社長がタイ側のパートナーと信頼関係を構築し、時間をかけて情報収集と戦略構築に取り組んだ事だと思います。結果として、2019年に現地での法人登記が完了し、現在は安定操業に向けて、タイ国鉄への拡販活動とともに現地法人の基盤・体制整備に取り組んでいます。同社の主な事業は鉄道軌道特殊車両のメンテナンス・修理で、今後近代化が進んでいくと思われるタイ国鉄に技術とノウハウを提供し、タイ国鉄と共に鉄道近代化に貢献したいと言う社長の想いの具現化に取り組んでいます。

ご利用いただいたジェトロのサービス

  • 新輸出大国コンソーシアム
    日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開にご関心をお持ちの中堅・中小企業の皆様へワンストップの支援サービスを提供します。

東洋機械株式会社

宮城県名取市
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代表者:佐々木 拓
設立年:1947年10月
従業員:83名
事業内容:鉄道用特殊車両の検査・修繕・改造、鉄道用特殊車両の製造・部品販売・メンテナンス、保線用機械の開発・製作

2020年9月

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