有限会社八丹堂

杉線香のファンを世界中に

1940年に栃木県日光市で創業。主力商品の杉線香は、日光杉の自然の香りを特徴とする栃木県の伝統工芸品。昔は近隣の地区に30~40のメーカーが存在したが、今では需要減や後継者不足で10社程度に減少。3代目当主の飯野大仁氏は、コロナ禍で本業のOEMビジネスが低迷する中で、海外ビジネスに着手。杉線香のほかに、ラベンダー等の香り付き線香や、残った灰に文字の現れる「讃佛香」など、多様なニーズを捉えた商品ラインナップを展開。

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展開国・地域:
米国、シンガポール、南アフリカ等
取扱製品:
線香

代表取締役 飯野氏

薄利多売からの脱却、海外市場での価値を高める

海外展開のきっかけは、2020年からのコロナ禍で主に仏事に用いる線香の国内需要が大幅に減少したことで、特定の仕入先に依存せぬよう販路拡大の必要性を強く感じたことでした。コロナ以前にも海外のバイヤーから問い合わせを受けたことがあり、漠然と海外市場への興味は抱いていました。そんな折、知人の紹介でジェトロのプロジェクトに参加したことが、海外への第一歩となりました。本格的な展開はまだまだこれからですが、従来の国内向けOEM商品と比較して、海外市場では驚くくらい高い値段で買っていただけることもあります。今後も現地のニーズに合った新商品やパッケージを開発し、高付加価値の商品を海外に展開していきたいと考えています。

日光杉の容器に納めたお線香「杉礼香」。

オンラインで学んだ課題を一歩ずつ解決

ジェトロ事業への参加を通じて、南アフリカ共和国やカナダ、米国のバイヤーとのつながりができました。特にTAKUMI NEXTプロジェクトへの参加は、自社のブランディングを大きく見直すうえでもよい学びになりました。まずオンライン商談を経験していくにつれ、限られた時間で自社商品の魅力を伝えきることに限界を感じ、英語版ホームページの整備やラインシート等各種資料の掲載を行いました。英語での情報発信の効果は非常に大きく、短期間で自社サイト経由での海外バイヤーからの問い合わせ・取引が驚くほど増加し、コラボ商品の製作等新たなお話を頂けるようになりました。加えて製造方法・商品の概要・自社の歴史等を紹介するプロモーション動画も英語で作成し、オンライン商談時にはバイヤーに直接見せることによって、より端的に、かつ視覚的に自社商品の魅力が伝わるよう工夫しています。日光からは東京に出るのも一苦労なので、海外ビジネスがリモートですべてできてしまうのがとても良かったです。

同社の製品は栃木県の「とちぎの伝統工芸品」にも認定

国内外の繋がりを活かし、線香の魅力を世界へ

今後は徐々に海外比率を高め、「八丹堂のファンを海外に30社作る」ことを目標にしています。海外バイヤーの中には日本の文化や製品に精通している方も多く、商談を通じて自社製品の特徴・強みである「杉の心安らぐ香り」を「日本らしさを象徴する特異なもの」として高く評価頂くことができました。香りはデジタル化できないので、まだまだ大きなチャンスがあると思っています。引き続き商品開発やブランディングでの工夫を重ね、線香の魅力を海外に訴求していきたいと思います。
また、栃木・日光地域の他の地場産業とも連携し、地域全体の価値向上に努めたいと思っています。過去に香港のバイヤーより「木製の箱に入れた線香が欲しい」との要望をもらい、「木工のまち」として知られる栃木県鹿沼市の工芸品である日光杉の木箱をパッケージに採用しました。趣のある木箱に、現地の嗜好に合わせたスタイリッシュなデザインの包装を重ねることで、海外市場向けの高級品としてもとても評判がよいです。他にも「日光下駄」等の周辺地域の工芸品を海外バイヤーに紹介するなど、地域で連携した新たな取り組みができないか、日々模索しています。

ジェトロ担当者からの一言コメント

同社は市況や自社の立ち位置を俯瞰し、自らビジネスをアップデートし続ける革新的、かつ積極的な姿勢が印象的でした。TAKUMI NEXTへの参加を通じてウェブサイト等自社メディアの改善を図ったことで、より販路が拡大したというお話は私たち担当者としても非常に嬉しく感じております。今後も引き続き、同社の新たな挑戦をお手伝いしてまいります。

有限会社八丹堂

栃木県日光市
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代表:飯野 大仁
設立年:1940年
事業内容:線香の製造・販売・商品開発

2023年7月

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