有限会社東北工芸製作所

世界中の人々の暮らしを明るくする工芸「玉虫塗」を目指して

「見る工芸から使う工芸へ」というものづくりの精神とベンチャー精神をもって、玉虫塗の可能性を広げてきた東北工芸製作所。TAKUMI NEXTには2021年から2年連続で採択され、北米・香港のライフスタイルショップとの取引に成功。

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展開国・地域:
米国、オーストラリア、香港
取扱製品:
漆器の製造・卸・小売販売

常務取締役 佐浦氏

デザインを入口に、伝統工芸の新たな魅力を伝える

当社は宮城県の伝統工芸「玉虫塗」という技法を発展させ、漆器を生産しています。初代の祖父が英語を話せたこともあり、進駐軍の方やマッカーサーの奥様がお土産品として買いに来てくださるなど、かつては海外との接点はありました。しかし、フランクフルトメッセに2回出展した際に、「食洗器は使えないのか」「飾り物なのか」という質問を多く受けました。そこで、「使われる工芸」という理念に基づき、さらに玉虫塗の可能性を広げようと、産業技術総合研究所と紫外線や熱に強い表面塗膜を共同開発しました。今では東北楽天ゴールデンイーグルスのヘルメット塗装も行っています。震災を経て国内市場が縮小したこともあり、「玉虫塗」の認知を海外でも高めるため、東京のデザイナーや写真家の協力のもと立ち上げたブランドがTAKUMI NEXTに採択された「Touch Classic」シリーズです。モダンなデザインをきっかけにまずは手に取っていただき、実はツヤの正体が玉虫塗という仙台の伝統工芸であることが後から伝わる看板商品となっています。

「酒器三点セット」
グラデーションした玉虫塗は宮城の山の稜線と波打つ海をイメージしている

メンタリングでの学びを活かして商談での魅せ方を磨き上げ

TAKUMI NEXTで最も役に立ったプログラムはメンタリングです。はじめは商品写真しか準備していなかったのですが、メンタリングを通じて食器は利用シーンを見せることで「使ってみたい」と思わせることがポイントだと気づき、飲料を注いだときの見え方がわかる写真や、商談中に実際に注いで見せることで成約に結び付けられるようになりました。また、「ブランディングは企業の歴史と同義ではなく、ブランドとしてどのように考えているかを発信することが重要」ということを学び、商談中の説明方法も変えました。同じ地域・業界内における取り組みだと、自社の足りない部分を忖度なしに言ってもらえる機会はなかなかなかないと思います。TAKUMI NEXTでは全国の様々な業界の取り組みを知ることができ、自分たちに置き換えて考えることで前に進むためのヒントを得ることができました。メンタリングには二人で一緒に臨んでいましたが、社内で話を共有し、議論をすることもできました。

「オールドグラス」
素地は玉虫塗の彩りを最大限に引き出す薄く透明度の高い松徳硝子

TAKUMI NEXTをきっかけに新商品開発へ

TAKUMI NEXTは国内取引だけでは得られなかった視点から、会社全体の方向性や、どのような商品をつくっていくべきか見定めるうえで役立っています。どこにでもある商品ではないため、値段から入るのではなく商品についてもっと知りたいというバイヤーと出会えたのは貴重で、TAKUMI NEXTで商談をした香港バイヤーとは今でも継続的に取引があります。仙台市と提携しているまたはゆかりのある海外都市での展開に関心を持っており、現地のクリエイターとの新商品開発プロジェクトを進めているのですが、TAKUMI NEXT事業を通じて資料に盛り込むべき内容を事前に検討していたため、スムーズに提案を行うことができました。今後の展開を検討する上では、グループメンタリングに参加した他の企業の取組みも参考になっています。TAKUMI NEXTの参加企業とは方向性が近いため、コラボレーションの可能性も考えられると感じています。一方的に講義を聞く形ではないため、他の事業者の話で気になるところを掘り下げて聞いてみたり、お互いのインスタグラムをフォローし合って情報交換したりできるのも大きなメリットだと思います。

「短冊しおり 春夏秋冬」
仙台の風物詩「七夕」の短冊を模した形に、金粉を蒔いて絵付けしたしおり。工房では絵付け体験も可能

ジェトロ担当者からの一言コメント

同社はメンタリングで得られた気づきを社内で共有し、商談や共同開発などのビジネス機会に活かすスピーディーな姿勢が印象的です。他社やメンターとの関わりの中でブランドとして発信したい想いに立ち返り、課題の発掘・言語化を行っている点が着実な成果につながっているのだと思います。今後も光を放つ美しい玉虫塗で、世界の人々の暮らしを明るく彩ってもらえたらと思います。

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有限会社東北工芸製作所

宮城県仙台市
http://www.t-kogei.co.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表:佐浦 康洋
設立年:1933年
事業内容:宮城県指定伝統的工芸品「玉虫塗」の製造・販売

2023年6月

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