海外農林水産・食品ニュース(Food & Agriculture)

GCC 統一残存アルコール濃度規制を施行済み -UAE連邦政府も2018年4月より施行-

(アラブ首長国連邦)

ドバイ事務所発

2019年02月25日

 UAE(アラブ首長国連邦)政府は2018年4月1日、GCC(湾岸協力会議)で定められた食品中の残存アルコール濃度規制であるGSO2538-2017(The maximum limits for residues of ethyl alcohol (ethanol) in food)を施行した。

GCC初の食品中アルコール残存濃度規制

2018年4月1日より前は、GCC加盟国に輸入される食品中に含まれる残存アルコール濃度の規制は存在せず、それまではGSO2538-2017の前身となる基準がドバイの食品安全局の担当官の内部手持ち資料として使われてきた。

新たに施行されたGCC 統一残存アルコール濃度規制は、ドバイ食品安全局の内部資料を基にGCCで統一された新しい規制として施行されたもので、内容はドバイ食品安全局がそれまで食品輸入企業に対する指導用指針としてして使ってきた規制内容とほぼ同じ内容である。食品のカテゴリーが多少変更されているものの、残存濃度の上限はワインビネガーの1%v/v、最も厳しいものはその他の食品の0.02%v/vであり、従来と変わらない。日本のしょうゆはソース類に分類され、0.5%v/v(またはv/w)以下は輸入が許可されることとなり、これも従来と変わらない。

表:食品別アルコール残存許容濃度
食 品 アルコール残存
許容濃度
1. ブドウ酢 1% V/V
2. ブドウ酢以外のすべての酢 0.5% V/V
3. ソースとケチャップ、濃縮飲料ジュース、
濃縮液、フードミックス、芳香性ハーブ油
0.5% V/V
(又はV/W)
4. あらゆる種類のジュース:ネクター、カクテル、
飲料類、味付き水、その他すべての飲料
0.1% V/V
5. 生鮮食品/加工食品
(原材料:肉、牛乳、種、豆、油、卵、
海産物、こう香辛料等)
0.3% V/V
(又はV/W)
6. 濃縮タンパク質、砂糖、酵母菌、芳香油、
ココア、類似物からなる原材料
0.5% V/V
(又はV/W)
7. チョコレート 0.02% V/W
8. その他の食品 0.02% V/V

(注)V/V:体積/体積、V/W:体積/重量
(出所)GSO2538-2017(「残存アルコール濃度規制」2018年4月1日施行)。
原本はアラビア語。一部を抜粋してジェトロが仮和訳。

夏季はドライコンテナで輸送中の発酵に要注意

最近、日本から輸出される食品のうちみそやしょうゆなどの発酵食品では、酵母菌をなくす「火入れ処理」を施している製品等が多く流通している。日本からドバイへの食品やソースの輸出において、「火入れ処理」を施していないものを4月から10月までの暑い時期にドライコンテナ船で日本からシンガポール等を経由してドバイの港に輸送した場合、海上輸送中のコンテナ内の熱が酵母菌に影響し、発酵するという問題が生じやすかった。かつてドバイ到着時にサンプル検査を受けた際、残存アルコール濃度が許容基準値を超え、輸入が認められず、輸入したロットがすべて廃棄処分になるというケースが多かった。ただし、こういったケースは最近では少なくなっているようである。

しかし、盲点となる製品もある。例えば、柑橘系の果汁100%などアルコールが含まれない調味料であっても注意が必要である。瓶詰め段階で微量の酵母などが瓶内に混入すると、輸送途中にコンテナ内部の熱でアルコール発酵して、ドバイ到着時のサンプル検査で許容基準値以上のアルコールが検出されることがある。暑い時期の輸送で発酵する可能性のある食品や調味料を輸送する際には、細心の注意が必要だ。

(中尾 純二)

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