世界の見本市ビジネストレンド

高付加価値分野へのシフトが見込まれる中国の見本市ビジネス

劉国梁 氏
リード・エグジビション
中国現地法人励展博覧集団

副総裁 劉国梁 氏

「Music China 2012」の会場風景
中国における見本市ビジネスは、近年著しい発展を遂げている。国際見本市会社リード・エグジビション(Reed Exhibitions)の中国現地法人励展博覧集団は、中国国内で機械、ギフト・インテリア、航空宇宙、包装、医薬など幅広い分野で、2012年には54回の見本市を主催している。
同社副総裁の劉国梁氏に中国における見本市ビジネスの状況及び今後の展望などについてインタビューした。

Q.近年の中国での見本市ビジネスはどのような状況か
A. 『中国国内で開催の見本市のスペース販売収入は、2011年に209.72億元(約3,000億円/1元=約14円)に達し、2009年はリーマンショックの影響で減少に転じたものの、その後回復し、年率20%を超える成長率を記録している(表1)。

表1:見本市スペース収入推移

開催地別の件数では、一級都市(主要都市)である上海、広州、北京、深センが上位に並び、成都、西安、鄭州、青島、南京、アモイなどの二級都市が続く状況になっている(表2)。10年前は、上海、北京の両都市がトップに並ぶ状況であったが、近年、上海の発展が著しく他の都市を引き離す状況となりつつある。上海には多数の大規模な見本市会場があり、2015年頃には虹橋地区に展示面積約30万平方メートルの会場が開業する見込みである。中国の見本市会場としての上海の優位性は今後さらに高まるであろう。広州も広州交易会の会場である中国輸出入商品交易会琶洲展館といった大規模な見本市会場があり、近年、北京を上回る開催件数となっている。
まず、1)市政府が見本市ビジネスを重視していること、2)中国西部の中心として、周辺の雲南省、重慶市、陝西省などのエリアもカバーできること、3)成都の消費水準は一級都市と遜色ない高いレベルに達しており市場としての魅力が高まっていることが考えられる。

表2:2011年見本市開催都市分布

業種別の件数では、自動車、総合、食品、不動産、家具、機械の順となっている。近年の傾向としては総合見本市、自動車、食品、インテリア、アパレル、医療器械といった分野の開催が増加している(表3)。』

表3:2011年見本市開催業種別分布

Q.見本市をオーガナイズする際にはどのように対象見本市を選定しているか
A. 『中国における我が社のビジネスは急速に発展している。参加する見本市選定の最も重要な要素は、開催分野の将来的な発展の可能性である。毎年、エコノミストや政府部門の専門家を招聘して、経済情勢に関する意見交換を行い、発展の可能性が高い分野を検討している。その他の要素としては、1)出展費用、2)バイヤー、消費者の分布状況、3)競争相手の存在(類似の見本市の有無)、4)展示会場の空き状況などである。』

Q.中国国内の見本市において今後どのような分野が有望視されるか。
A. 『まず、第一には生活関連分野である。現在の分野別の開催状況からもわかるとおり、人々の生活に密接に関連している分野である自動車、不動産、家具、家庭用品、食品などが上位にある。経済学的な統計では一人当たりのGDP5,000米ドルが消費の転換点とされており、5,000米ドル未満では、衣食住といった基本的な生活にかかわる消費ニーズが高くなる。しかし、5,000米ドルを超えると、個人の消費意欲は飛躍的に高まり、奢侈品や高級品などに対するニーズが拡大するといわれている。現在の中国はその段階にあり、アパレル、インテリア、建材、医療器械分野などへのニーズは更に高くなっていくだろう。
第二には、機械分野である。従来、"Made in China"というのは中国人の誇りであった。しかし、今後、製品のサプライチェーン上、付加価値の低い製造工程に留まるのではなく、より付加価値の高い、"Design in China"の方向に転換しなければならないというのが政府の方針である。
第三には、エネルギー、環境分野である。環境問題は、中国政府として早急に解決すべき問題と認識されているため潜在性は高い。』

Q.中国で開催される見本市に日本企業が出展する場合のアドバイス
A. 『中国では多数の見本市が開催されているため、自社の商品に適した見本市をどのように選定するかが重要である。
主なポイントして、まず、第一に主催者である。良い主催者でこそ、見本市の質は保証される。
第二には、開催都市である。中国国内で広範囲な都市での販路拡大を志向するのであれば、一級都市の北京、上海、広州、深センで開催される見本市に出展するのがベストである。二級都市で開催される見本市の場合は全国的ではなく、地域的な販路開拓にしか繋がらない。
第三には、商品のターゲットである。ある都市では受け入れられる商品であっても、他の都市では受け入れられないケースもある。中国は、同じ国であっても地域によって文化や嗜好が全く異なる。また、日本で売れている商品であっても、そのまま中国に持ち込んでも売れるとは限らない。これらは日本企業がよく陥る過ちであり、注意が必要。
最後に、出展の事前準備、事後フォローである。見本市出展の全体業務の重要性の観点からいうと、期間中の商談が50%とすれば、出展前が30%、出展後が20%のウェイトを占めるといってもよい。出展前に、まずは中国でのビジネスそのもの、中国のバイヤーに対してどのように商談すべきか、どのようにフォローして成約に結び付けるかといった点を十分に理解しておく必要がある。』

(聞き手・執筆・取りまとめ:ジェトロ北京事務所 藤本 勉、宋 紅梅)

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