見本市レポート Baselworld 2017

世界最大の時計宝石見本市

スイス・バーゼル
2017年3月23日(木曜)~30日(木曜)

Baselworld2017会場入り口

世界最大の時計宝石見本市「Baselworld 2017」が、2017年3月23日~30日の8日間、スイス・バーゼルで開催された。1917年にわずか29ブランドで始まった当見本市は、今年100回目を迎え220ブランドに拡大し、100カ国を超える106,000人が来場した。

世界最大の時計宝石見本市「Baselworld 2017

スイスの時計産業は、化学品、機械に次ぐ3番目に大きな輸出産業(構成比9.2%)であるが、2015年1月の対ユーロ為替上限撤廃によるフラン高、中国における倹約令強化、欧州への観光客の減少などにより、輸出金額は2年連続でマイナス成長を記録。スイス時計協会によれば、2016年の輸出金額は前年比9.9%減であった。そうした厳しい状況を反映するかのように、本見本市の出展者数は13.3%、来場者数は4%、それぞれ減少を記録した。出展者の減少については、出展料が高額(1平方メートルあたり1500スイスフラン)なためいくつかの小規模ブランドが参加を見送ったこと、主催者側が「量より質を重視する」としてコンセプトに合わない出展者の参加を却下したことなどの要因もある。出展者の減少と業界関係者の経費節減の動きが、来場者数の減少にも繋がったと見られる。

今回の見本市のトレンドと注目商品の特徴

本見本市が時計ブランドにとって、商談と顧客との関係維持のための重要な機会であることに変わりはない。また主要ブランドの新作コレクションがいち早く披露されるため、時計・宝飾品のトレンドを知ろうと世界中からバイヤーやプレスが訪れる。会場を視察して感じた3つのトレンドを紹介したい。
第一のトレンドは、過去人気を博したトップブランド伝統的モデルの記念商品。例えば、今回出展されたロレックス社の「Sea-Dweller」は同モデル50周年記念モデルとして発表された。また、オメガ社の「Speedmaster」は同モデル誕生60周年記念モデルとしてそれぞれ発表された。
第二のトレンドは、「ファッションアイテムとしての時計」だ。グッチやブルガリ、シャネルといったファッション系ブランドが、遊び心溢れるデザインや、ベルトの色や素材を好みに応じて替えられるタイプの時計を競うように発表。ファッションの一部として楽しむというコンセプトで若者に訴求しようという意欲が感じられた。

ブランパンの展示ブース(彫刻師による実演)

第三のトレンドとして、スマートウォッチが挙げられる。中でも、リッシュモングループ傘下にあるモンブランが同社初めてとなるスマートウォッチを本見本市の開催直前に発表した。一方、タグ・ホイヤ―社はインテルおよびグーグルと協力して開発したスマートウォッチ「Connected」の2代目を発表した。「Connected Modular 45」の特徴は、利用目的や身に着ける人の気分に合わせ、スマートウォッチと機械式2種類のフェイスを付け替えることができる点だ。「着せ替え可能な時計」として売り出すことで、アナログ時計好きとスマートウォッチ好き双方の顧客の裾野を広げる戦略だ。今回の見本市では、サムソンが初出展を果たしており、スマートウォッチの存在感は確実に増している。

総評

スイスの二大時計見本市といえば、1月にジュネーブで開催される「Salon International de la Haute Horlogerie(SIHH)」と、3月にバーゼルで開催される「Baselworld」がある。前者はスイス時計業界を先導する三大グループの一つであるリシュモングループが主催する一方、「Baselworld」はスウォッチグループが実権を握っていると言われる。従って、メイン会場(HALL1.0)のほぼ中心をブレゲ、ハリー・ウィンストン、ブランパン、オメガ等のスウォッチグループを代表する高級ブランドが占め、存在感と影響力を示していた。

グランドセーコーの展示ブース

日本からはカシオ、シチズン、セイコーなど10社・団体が参加したほか、独立時計師協会の共同ブースでは、独立時計師の菊野昌弘氏が作品を展示していた。高級時計・宝飾ブランドが並ぶホール「GLOBAL BLAND」に2ブースを構えたセイコーは、今回初めて「グランド・セイコー(GS)」のみの独立ブースを設置し注目を集めた。同社は2010年から海外展開を開始しているが、数々の高価格帯ブランドがひしめく欧州市場では「高級品」としてのブランドイメージを浸透させる必要があるとして、高級ラインのみを扱う旗艦店を主要都市の目立つ場所にオープンさせている。広報担当者によれば、新規性や機能性を好む米国と異なり、欧州では伝統、歴史、緻密な技術が好まれる。そこでセイコーは独自機構「スプリングドライブ」を武器に、「日本の真面目なものづくり」を前面に打ち出した広報を会場内外で積極的に展開していた。同社にとって本見本市は、ブランドイメージ発信の場であるとともに、海外プレスなど関係者からの意見を聴取する貴重な機会でもあるとのことだ。
次回は2018年3月22日から27日まで、会期を2日短縮し、同じくスイス・バーゼルのメッセ・バーゼルで開催される。なお、主催者は出展者の声を踏まえ、今後はSIHHと会期の接近を図りたいとしている。

ジュネーブ事務所 高橋 努・杉山 百々子

見本市データ
見本市名 Baselworld
開催期間 2017年3月23日(木曜)~30日(木曜)
9時00分~18時00分(最終日は16時00分まで)
初回開催年/開催頻度 1917年/年1回
開催場所 Messe Basel
出展商品内容 時計・宝石関連商品
出展者数 220社・団体(内時計関連企業が183社、宝石関連企業が26社、機械・部品供給関連企業11社;ブランド数は約300)参加
来場者数 約106,000人(100か国以上)
入場料 有料
主催者 MCH Swiss Exhibition (Basel) Ltd.
住所:4005 Basel, Switzerland