「上海イノベーション企業 対日投資セミナー」を開催

2018年12月

ジェトロは2018年12月5日、上海で対日投資セミナーを開催し、上海を中心とする中国華東地域のスタートアップ企業など90人が参加しました。セミナーでは、IoTやAIなどデジタル技術分野を中心とする中国企業と、オープンイノベーションに取り組む日本企業との協業によるイノベーションの可能性と日本でのビジネス展開についてアピールしました。

日中双方向の投資、デジタル化分野での連携を呼びかけ

主催者挨拶では、小栗ジェトロ・上海事務所長が、2018年10月に両国政府が「日中イノベーション協力対話の立ち上げに関する覚書」を締結したこと、中国がIoTやAIなどのデジタル経済の規模で日本を追い抜いたことなどを紹介。ジェトロは、中国の革新的な技術を持つ企業と日本企業の双方向の投資を支援し、両国の成長に寄与していくと挨拶しました。続いて、ジェトロが日中双方向のスタートアップ支援で提携するアクセラレーター、匠新(ジェトロ・グローバル・アクセラレーション・ハブの上海拠点)の田中CEOが、両国企業の協力を難しくしている文化の違いを埋める役割を担いたいと述べ、両国スタートアップ企業の利点や強みを引き出し、イノベーション創出を後押したいと訴えました。

来賓挨拶では、福田在上海日本国総領事館領事が、2018年に日中平和友好条約締結40周年を迎えたことを踏まえ、今後40年は日中が協力して新しい価値を創造する機会にしたいと述べました。続いて、陳上海市科学技術委員会イノベーションサービスオフィス所長が中国のスタートアップの創業者の平均年齢について、上海が38歳、北京が34歳、深圳が32歳と紹介し、上海では企業での勤務経験のある成熟した人材が創業者になっていると説明し、上海発のスタートアップの日本進出など、国際化を進めていきたいと語りました。

セミナー会場の様子

オープンイノベーションを進める日本企業と日本進出の中国スタートアップが登壇

次に、日中企業各2社が講演しました。2018年に創業100周年を迎えたパナソニック マニュファクチュアリング イノベーション本部 企画部グロバール推進課の中嶋課長は、同社と中国の関係について、松下幸之助氏と鄧小平氏が会談する動画を交えて紹介。また、同社のオープンイノベーションの取り組みとして、東京や大阪のインキュベーション施設やハッカソンの開催などを説明。さらに2019年4月以降、同社の中国事業を統括する中国社(社内カンパニー)を新設すると説明しました。

三菱UFJ銀行デジタル企画部の岩瀬副部長は、日本の低金利や少子高齢化、世界的なデジタル技術の発展が既存のビジネスモデルに大きな変化を与えていると説明。そうした状況下、アクセラレータプログラムを通じたスタートアップとの協業やスタートアップへの出資などを通じ、様々な企業とつながっていきたいと説明しました。

続いて、ジェトロが日本拠点設立の支援を行った中国のスタートアップ企業2社が登壇。レストランやホテルで稼働するサービスロボットの製造・販売を手掛けるパンゴリン・ロボット・ジャパン(注1)は、2017年4月、日本市場の開拓、日本の大学等との共同研究を目的に東京に日本法人を設立。同社の丁社長は、日本企業の品質への要求基準の高さやアフターサービスの重要性を説明しつつ、スタートアップ企業はそうした日本企業からの要求に応えることも含め、常に挑戦し続ける必要があると、来場者に積極的な取り組みを促しました。

3D-VRカメラの製造・販売と撮影サービスを行う3DNest(注2)は、2018年2月、日本市場の開拓を目的に茨城県つくば市に日本法人を設立。同社の張社長は、日本企業は中国企業のIT技術を高く評価していると説明。また日本政府の積極的で時機を得た支援策がコスト減につながったと評価しました。さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが新たなビジネス機会を創出すると延べ、中国のスタートアップ企業にとって日本市場は魅力がある、と力説しました。

8自治体・機関が日本の地域の魅力を発信

日本の8自治体・機関(茨城県、神奈川県、横浜市、I-BAC(愛知・名古屋国際ビジネス・アクセス・センター)、O-BIC(大阪外国企業誘致センター)、神戸市、福岡市、沖縄県)が、各地域の産業集積、スタートアップ支援策などを例示し、来場者に地域の魅力を積極的にPRしました。最後にジェトロの王氏がジェトロの支援サービスや支援実績を説明。さらに、2018年6月に日本政府が開始した「規制のサンドボックス制度」(注3)の概要などを紹介しました。

セミナー後の交流会では、登壇をした8自治体・機関、登壇企業、ジェトロがPRブースを設置し、来場者と情報交換を行いました。また、今回のセミナーでは、来場者にインスタントメッセンジャーWeChatのグループアカウントに会場で登録してもらい、セミナーと同時進行でセミナー主催者と来場者がオンライン上で資料提供や質疑応答を行うなど、活発な交流が行われました。

WeChatで資料提供や質疑応答を行う参加者

(注1)パンゴリン・ロボット・ジャパンの対日投資成功事例はジェトロウェブサイトをご参照ください。
(注2)3DNestの対日投資成功事例はジェトロウェブサイトをご参照ください。
(注3)「規制のサンドボックス制度」に係る情報はジェトロウェブサイトをご参照ください。

「上海イノベーション企業対日投資セミナー」概要

日時 2018年12月5日(水曜)13時30分-15時40分(15時40分-16時30分交流会)
会場 匠新
主催 ジェトロ、匠新
来場者 90名
プログラム概要
  1. 主催者挨拶
    1. 小栗道明:ジェトロ・上海事務所 所長
    2. 田中年一:匠新 CEO
  2. 来賓挨拶
    1. 福田高幹:在上海日本国総領事館 領事
    2. 陳宏凱:上海市科学技術委員会イノベーションサービスオフィス 所長
  3. 日本企業講演
    1. 中嶋雄一:パナソニック株式会社 マニュファクチュアリングイノベーション本部 企画部 企画部 クロスバリュー推進課 課長
    2. 岩瀬豪:株式会社三菱UFJ銀行 デジタル企画部 副部長
  4. 中国企業講演
    1. 丁劲松:株式会社パンゴリン・ロボット・ジャパン 代表取締役社長
    2. 張顕赫:3DNest株式会社 代表取締役
  5. 各自治体の企業向けサポート
    茨城県、神奈川県、横浜市、I-BAC(愛知・名古屋国際ビジネス・アクセス・センター)、O-BIC(大阪外国企業誘致センター)、神戸市、福岡市、沖縄県
  6. ジェトロの対日投資関心企業向けサポート
    王 赫(ジェトロ業務委託専門員) 錦天城法律事務所 弁護士
  7. ネットワーキング・レセプション
    ※参加自治体、登壇企業、ジェトロが相談コーナーを設置