第15回 ASEAN事務総長とASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)との対話を開催 ―日系経済界代表、今年就任のカオ・キムホン事務総長に地域の繁栄に向けた貢献を約束―

2023年08月09日

ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)とジェトロは8月2日、今年1月に着任したカオ・キムホンASEAN事務総長とジャカルタで対話を行いました。ジャカルタ・ジャパンクラブほか、ASEANの9会議所の代表者がASEAN事務局に集い、将来のASEANのサステナビリティや人材育成に向けた日系企業の貢献や、ASEANがさらに魅力あふれる事業展開先となるような制度・ルール面での改善などを提案しました。

対話には、ASEAN日本政府代表部の紀谷昌彦大使、経済産業省の𠮷川徹志通商交渉官、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の八山幸司COOが来賓として出席しました。ジェトロは、ASEAN進出日系企業とASEAN事務局、各ステークホルダーの仲介役として、対話の場をコーディネートしました。

世界経済の分断リスクが高まる中、サプライチェーンの核となるASEANの重要性は今後さらに増大することが予見されます。米国、中国、EUをはじめ、あらゆる国・地域がASEANとの関係構築に重点を置いています。そうしたなか、FJCCIAは、2027年までの任期中、ASEANをリードする役割を担うカオ総長に対し、日系企業の地域経済・雇用への貢献や、技術革新・産業高度化のパートナーとしての存在感をアピールしました。

  • FJCCIAの上田裕之議長(ジャカルタ・ジャパンクラブ理事長)は対話の中で、「日本の民間企業は、ASEANで事業展開する企業市民として、ASEANと協力していく」と述べ、ASEANの投資先としての魅力を最大化し、2023年のASEAN議長国インドネシアが掲げたテーマである『成長の震源地としてのASEAN』の地位を更に強化していくために提案をしていきたい、というコンセプトを強調しました。
  • 今年のFJCCIAの提言書は、日本政府、日本商工会議所、ジェトロが策定を進める、次の50年を見据えた、新しい時代の日ASEAN経済関係を共に創っていく「日・ASEAN経済共創ビジョン」に基づき、ASEAN包括的復興枠組み(ACRF)に沿って、1.より広範な経済統合、2.包括的なデジタル・トランスフォーメーション、3.より持続可能で強靭な未来に向けた前進、4.人的資本の開発という、4つの柱で構成されます。
  • 参加した各日本商工会議所の代表からは、以下の点について言及がありました。
(豊富な人材に溢れ、サステナブルな成長を続けるASEANの未来)
バンコク日本人商工会議所(藤浩蔵副会頭):ASEAN域内でのクリーン・エネルギーの連結性向上や取引の円滑化、規制の緩和、炭素国境措置(CBAM)への対応にかかる日ASEANでの協力。
フィリピン日本商工会議所(下田茂会頭):ASEANにおけるエンジニア、将来の幹部候補の人材育成のためのサポートや雇用のインセンティブ等の強化。新規事業の創出や社会課題の解決に取り組む起業家やイノベーターなど人材交流の推進。
(経済統合が進んだ、魅力的な投資先としてのASEAN)
カンボジア日本人商工会(水越健晴会長):メコン地域、ASEAN地域における陸上輸送の円滑化とサプライチェーン連結性の継続的な改善に向けた、ASEAN事務局の継続的な支援。
マレーシア日本人商工会議所(澤村剛朗会頭):既存自由貿易協定(FTA)の利用促進と利便性の向上の観点からの、原産地証明書発給手続きの電子化の推進。
(デジタル経済の発展に向けた、ASEAN域内での適切なルール・枠組みの構築)
シンガポール日本商工会議所(馬場孝一郎会頭):電子商取引(EC)サイト上の模倣品対策の積極的な推進。ASEAN電子商取引協定に基づく知的財産権対策の実行。デジタル経済の拡大に向けた、WTO情報技術協定(ITA)への積極的な参加と着実なルールの実施。
ベトナム日本商工会議所(木ノ下忠宏会頭):ASEAN加盟国内の個人データ保護を含めた法規制の調和。各国の個人データ保護法令の制定・運用にあたって、外資企業への影響を最小限に抑えるような、個人データのガバナンスルールの調整。
  • ジェトロは本対話の枠組みが開始して以来、運営を支援しています。河田美緒理事は、FJCCIAの要望項目や、「日ASEAN経済共創ビジョン」の実現に向けて、日本企業の更なる活躍を念頭に、日ASEANにおけるオープンイノベーションなどの推進を提案しました。
  • 今次対話は4年ぶりに各会議所の代表が集まり、対面で対話を実施しました。FJCCIAはASEAN9カ国の日本人商工会議所会員により構成され、2023年6月現在の会員数は7,283社に達する、ASEAN域内最大の連合組織です。2008年から年に一度、ASEAN事務総長との対話を続けています。

ASEAN事務総長への要望・提案(英語 PDFファイル(1.5MB) 日本語PDFファイル(1.0MB)

FJCCIA対話写真

ジェトロ・アジア大洋州課 (担当:山城)
Tel:03-3582-5179

ジェトロ・ジャカルタ事務所(担当:尾﨑)
Tel:+62-21-5200264