2023年版 ジェトロ世界貿易投資報告 ―分断リスクに向き合う国際ビジネスー

2023年07月26日

本年の報告について

  • 「ジェトロ世界貿易投資報告」は、世界と日本の貿易・直接投資、通商政策、国際ビジネスに関わるルールの最新動向を豊富なデータを用いて分析した年次レポートです。
  • 本年の報告は、国際貿易・投資の秩序の揺らぎと、各国の政策によって高まる分断リスクに企業がどう向き合うべきか、その具体的なヒントを提案することを狙いとしました。新たな政策やルールに対応するうえで指針となる情報を多く盛り込んでいます。

2023年版世界貿易投資報告のポイント

1. 世界と日本の経済・貿易
2023年に入り、世界貿易の増勢は失われつつある。ウクライナ紛争の長期化、貿易制限措置の増加、米中関係などの地政学リスクの影響により、自由貿易体制に歪みが生じている。
経済効率性や比較優位に基づいて形成されてきた主要国・地域間の貿易関係は、政治的な価値観を共有する同志国を優先する方向へ徐々にシフトが見られる。
2. 世界と日本の直接投資
インフレの高進や金利の高止まり、債務の増大などの危機の連鎖を受け、約2年続いた力強い投資の回復トレンドは一転、2022年後半から下降局面にシフトした。
米国やEUで、多額の財政支出を伴う戦略産業の誘致競争が本格化。自国本位で内向きな産業政策と、サプライチェーン途絶リスクへの警戒が、企業の投資行動に大きな変化をもたらしている。
3. 世界の通商ルール形成の動向
経済安全保障やサプライチェーン強靭化を動機とする各国独自の政策、規制の増加が、企業の貿易環境の不確実性を高め、貿易取引の拡大や多角化を阻害している側面もある。
企業は乱立するルールへの対応強化が急務に。従来の貿易管理の範疇を超え、地政学リスクに基づく調達・生産・販売網の見直し、レピュテーションリスク対応など、広範な課題への備えが必要。
4. 持続可能な社会を目指す政策とビジネス
2022年の世界のESG債券投資が一転減少。監視や規制の強化でESG投資に変化の兆し。
EUの「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」が施行され、世界で導入が進む炭素価格は新たなステージに入った。企業には温室効果ガス排出量の算出が避けて通れない課題となりつつある。

添付資料:2023年版「ジェトロ世界貿易投資報告」

ジェトロ国際経済課 (担当:伊藤、森)
Tel:03-3582-5177