ジェトロ 2023年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)

2023年11月21日

―景況感はさらに悪化。グローバルサウスの主要国には明るい兆し―

本調査について

  • ジェトロは2023年8月後半~9月、海外83カ国・地域の日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、支店、駐在員事務所)1万8,726社を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施。7,632社より有効回答を得ました(有効回答率40.8%)。
  • インフレや中国経済の減速、地政学リスクの高まり、経済安全保障を動機とする規制増加など、国際ビジネスを巡る環境が厳しさを増す中、進出日系企業の業績はどう変化し、新たな課題にどう対応しているか。その最新動向を全世界横断で定量的に把握できる、本邦唯一の調査です。

本調査の結果ポイント

1. 中国での業績悪化際立つ。事業拡大を見込む企業は初めて3割を下回る。
海外進出日系企業のうち、2023年に黒字を見込む企業は63.4%。3年ぶりに低下。中国での業績悪化が際立つ。韓国や香港、ベトナム、シンガポールでも業績悪化が改善を上回る。
中国では、事業の「拡大」を見込む企業が調査開始以来、初めて3割を下回った。半面、「第3国への移転・撤退」を見込む企業は1%未満。ビジネスの継続へ慎重に取り組む姿勢が伺える。
インドやブラジル、南アフリカなど、グローバルサウスの主要国では旺盛な内需が進出企業の業績改善を後押し。周辺国・地域市場開拓も見据えた現地事業拡大意欲高まる。
2. ビジネスと人権、全世界で意識高まるも、中小企業の取り組みに遅れ。
サプライチェーンにおける人権を重要な経営課題と認識する企業は8割超。前年比で20ポイント超増加。他方、人権デューディリジェンス(DD)を実施する企業は3割に至らず、前年から横ばい。
人権尊重や脱炭素化の取り組みにおいて、大企業と中小企業の差がより広がっている実態が浮き彫りに。また、進出国の関連法規制の整備も取り組みの進捗に影響していると考えられる。
3. 欧州主要先進国での賃上げ、インフレ率に追い付かず。
人材不足の問題は、欧米先進国でより深刻。米国やオランダでは7割超の企業が同問題に直面。
2023年の賃金ベースアップ率(名目)は、インドで9.8%、メキシコで8%と高い。一方、欧州先進国やシンガポールでは、高止まりするインフレ率に賃金ベースアップが追い付かない状況続く。

ジェトロ調査部(担当:伊藤、田中)
Tel:03-3582-5177