ジェトロ 2023年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)

2023年12月26日

―高まるグローバルサウスの一角としての存在感―

本調査について

  • ジェトロは2023年8月23~9月27日にかけて、中南米(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア、ベネズエラ)に進出する日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、日本企業の支店)721社を対象にアンケートを実施。455社より有効回答を得ました(有効回答率63.1%)。
  • 本調査は1999年から年1回実施し、今回が24回目。ベネズエラについては一部の設問に限り質問しています。
  • 調査項目:I. 営業利益見通し、II. 今後の事業展開の方向性、III. サプライチェーン(販売・調達・生産)、IV. 競合状況、V. 投資環境、VI. 雇用環境、VII. ESGへの対応、VIII. FTA/EPAの活用状況

本調査の結果ポイント

1. 世界全地域計の5.4倍に相当するDI値(景況感)、2024年も更なる改善見通し
2023年の営業黒字見込みの割合(64.8%)と、景況感を示すDI値(24.3pt)は共に世界全地域計を上回り、特にDI値は世界全地域計の5.4倍となった。これを牽引したのはメキシコとブラジル。9月の実質金利は両国ともに米国の3.5倍超と世界主要国で1位、2位を記録。現地通貨高にもかかわらず、経済成長と失業率低下を維持したことが現地市場ニーズの拡大と輸入調達コスト低下に作用し、DI値改善につながった。メキシコでは好調な米国経済も自動車生産の需要を拡大した。ブラジルでは自動車のほか、幅広い産業で市場ニーズが拡大した。中南米の2024年DI値見通しはさらに上昇し、38.4ptに達する。
2. 今後1~2年の事業拡大割合は南西アジアに次ぐ水準に、現地市場ニーズ拡大に対応
今後1~2年の事業拡大割合(54.4%)は世界全地域計より7.4pt高く、インドを含む南西アジアに次ぐ地域となった。牽引したのはブラジル(68.9%)とメキシコ(56.4%)だが、拡大割合の前年比増加幅(14.7pt)が世界主要国でトップとなったブラジルが際立っている。
要因はいずれの国も「現地市場ニーズの拡大」。拡大する機能はいずれの国も販売機能がトップ。ニアショアリングの影響から、米国市場向けのメキシコ、ブラジル市場向けのアルゼンチンのそれぞれで生産機能強化の比重が他国より高かった。
3. 在メキシコ日系企業:調達先変更と生産拠点移転が顕著に、工場作業員不足が深刻化
調達先を見直す企業は43社で自動車関連が多い。日本からの見直しが30件と最も多く、うち21件がメキシコ国内への見直し。生産地の見直しも15社(18件)で、主に米国、東アジア、ASEANからメキシコ国内(計9件)への見直し。
メキシコ進出日系企業は人件費高騰を投資環境悪化のトップ項目(46.5%)にあげ、工場作業員の不足が「とても深刻(36.8%)」と回答した割合が、他の職種より際立っている。

ジェトロ調査部米州課中南米班(担当:佐藤、小西)
Tel:03-3582-4690