ロシア・ウクライナ情勢下におけるロシア進出日系企業アンケート調査結果(2024年2月) ー侵攻より2年、日系企業を取り巻く厳しい情勢が長期化ー

2024年02月21日

ジェトロは2024年2月1日~11日、ロシアに所在する日系企業156社に対し、ロシア事業の現状と今後の見通し、ウクライナ情勢が与える影響のアンケート調査を実施しました。調査結果の詳細は以下のとおりです。

調査結果のポイント

  • 事業ステータスは、2023年5月の調査に引き続き、「一部もしくは全面的に事業(操業)を停止」(60.3%)の回答が最多となったものの、5.9ポイントの減少。うち、「全面的な事業(操業)を停止」(25.4%)が9.2ポイント増加した。「通常どおり」と回答した企業の割合は4ポイント増加した。
  • 事業停止の要因として、レピュテーションリスクが最も多く、次いで本社などの対ロビジネス方針の変更や日本・西側諸国による対ロ制裁が挙がった。「通常どおり」と回答した企業は、事業運営上の困難として決済の困難や対ロ制裁を挙げた。ロシア事業を一部なりとも継続している企業は、事業を継続する理由として、部品等の供給を止めることにより発生する訴訟リスクや撤退のハードルの高さなどを挙げている。
  • 今後1~2年後の事業展開見通しについて、「維持」(41.3%)が最も多い回答となった他方、「休眠」、「撤退」の回答がそれぞれ4.8ポイント、1.9ポイント増加した(2023年10月比)。
  • 景況感については、2023年10月調査と比べて、わずかに上昇。仕入れが止まり、売り上げがほぼ立たないといった状況の企業が多く、依然として指標はマイナスが続くが、事業を継続している企業の中には、好調な市況やマーケットの大きさから好調との回答もあった。

本調査について

  • ‐ 2024年2月1日~11日、モスクワ・ジャパンクラブ加盟企業および在サンクトペテルブルク日系企業の156社・団体を対象にアンケート調査を実施。63社・団体より回答を得た(有効回答率40.4%)。
  • 設問項目:1.現時点の事業ステータス 2.自社の景況感 3.今後の事業展開見通し 4.駐在員・現地従業員の状況

1. 事業ステータス

  • 最も回答が多かったのは「一部もしくは全面的に事業(操業)を停止」(60.3%)で、2023年5月の調査から5.9ポイント減少した。うち、「全面的な事業(操業)を停止」とした企業の割合は25.4%と、9.2ポイント増加した。
  • 「通常どおり」(34.9%)は4.0ポイント増加した(図1)。
  • 「撤退済み・撤退の手続き中」は1社だった。

    図1:現時点の事業ステータス

    図1 現時点の事業ステータスについて。有効回答数は、今回調査が63社、2023年5月31日~6月7日調査が68社、2023年1月24日~31日調査が99社、2022年8月25日~31日調査が107社、2022年4月15日~19日調査が111社、2022年3月24日~28日調査が97社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、今回調査で「撤退済み・撤退の手続き中」が1.6%、「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が25.4%、「一部事業(操業)の停止」が34.9%、「通常どおり」が34.9%、「その他」は3.2%だった。 2023年5月31日~6月7日調査で「撤退済み・撤退の手続き中」が1.5%、「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が16.2%、「一部事業(操業)の停止」が50.0%、「通常通り」が30.9%、「その他」は1.5%だった。 2023年1月24日~31日調査で「撤退済み・撤退の手続き中」が4.0%、「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が17.2%、「一部事業(操業)の停止」が43.4%、「通常通り」が35.4%、「その他」は0.0%だった。 2022年8月25日~31日調査で「撤退済み・撤退の手続き中」が4.7%、「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が17.8%、「一部事業(操業)の停止」が31.8%、「通常通り」が45.8%、「その他」は0.0%だった。 2022年4月15日~19日調査で「撤退済み・撤退の手続き中」が0.9%、「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が9.9%、「一部事業(操業)の停止」が45.0%、「通常通り」が44.1%、「その他」は0.0%だった。 2022年3月24日~28日調査で「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が6.2%、「一部事業(操業)の停止」が37.1%、「通常通り」が55.7%、「その他」が1.0%、「撤退済み・撤退の手続き中」は0.0%だった。

    ※本設問につき前回調査を行ったのは2023年5月。以降の設問と過去の調査実施時期が異なる場合がある。

  • 今回の調査で「一部もしくは全面的に事業(操業)を停止」と回答した企業38社のうち、事業停止に至った要因は、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」(71.1%)、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」(50.0%)が2023年5月の調査に引き続き上位2項目を占めた。また、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」(47.4%)、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」(39.5%)と続いた。1年前の2023年1月調査と比較すると、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」や「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・停滞」を選択した企業の割合が減少した(図2)。
  • 上記38社のうち、事業停止後の対応としては、23.7%の企業が「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」及び「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」と回答し、「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」(21.1%)、「ロシア拠点で完結した資金運営」(18.4%)が続いた。2023年1月調査と比べると「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」が7.8ポイント上昇した(図3)。

    図2:事業停止の要因(複数回答)

    図2 事業停止の要因(複数回答)について。今回調査の有効回答数は38社、2023年1月調査は60社。 今回調査におけるそれぞれの選択肢の割合は、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」が71.1%、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が50.0%、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が47.4%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が39.5%、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」が28.9%、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」が23.7%、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」が21.1%、「ロシア、欧米諸国の取引先との関係変化」が21.1%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(物流・輸送にかかる制限)」が21.1%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(金融分野の制限)」が18.4%、「ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大」が18.4%、「決済の困難(ロシア国内外との決済)」が15.8%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」が15.8%、「ロシア拠点の勤務体制の維持・変更(駐在員不在、現地従業員の増減など)」が15.8%、「レピュテーションリスク回避を目的とした他社の事業活動の自粛」が15.8%、「日本政府による対ロ制裁(新規投資禁止)」が13.2%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(金融分野の制限)」が13.2%、「日本政府による対ロ制裁(日本への輸入禁止)」が10.5%、「ロシア国内での販売の著しい減少」が7.9%、「日本政府による対ロ制裁(その他)」が7.9%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(特定個人・法人との取引制限)」が7.9%、「物流コストおよび商品、原材料、部品、サービス調達コストの上昇」が5.3%、「ルーブル為替の不安定化」が5.3%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(製品・サービスの輸出入制限)」が5.3%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(その他)」が5.3%、「ロシア事業の収益性低下」が5.3%、「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」が0.0%、「その他」が2.6%、「特になし」が0.0%だった。 2023年1月調査におけるそれぞれの選択肢の回答割合は、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が61.7%、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」が60.0%、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」が48.3%、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が40.0%、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」が38.3%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が36.7%、「ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大」が33.3%、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」が26.7%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(物流・輸送にかかる制限)」が23.3%、「決済の困難(ロシア国内外との決済)」が20.0%、「レピュテーションリスク回避を目的とした他社の事業活動の自粛」が20.0%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」が18.3%、「ロシア、欧米諸国の取引先との関係変化」が18.3%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(金融分野の制限)」が18.3%、「ロシア拠点の勤務体制の維持・変更(駐在員不在、現地従業員の増減など)」が13.3%、「日本政府による対ロ制裁(日本への輸入禁止)」が13.3%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(金融分野の制限)」が13.3%、「ロシア事業の収益性低下」が10.0%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(特定個人・法人との取引制限)」が8.3%、「物流コストおよび商品、原材料、部品、サービス調達コストの上昇」が6.7%、「日本政府による対ロ制裁(新規投資禁止)」が6.7%、「ルーブル為替の不安定化」が5.0%、「日本政府による対ロ制裁(その他)」が5.0%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(製品・サービスの輸出入制限)」が5.0%、「「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」が5.0%、「ロシア国内での販売の著しい減少」が1.7%、ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(その他)」が1.7%だった。回答がなかった選択肢は、「特になし」、「その他」だった。

    図3:事業停止後の対応(複数回答)

    図3 事業停止後の対応(複数回答)について。今回調査の有効回答数は38社、2023年1月調査は60社。 今回調査におけるそれぞれの選択肢の回答割合は、「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」が23.7%、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」が23.7%、「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」が21.1%、「ロシア拠点で完結した資金運営」が18.4%、「ロシア国内もしくはロシアの友好国で完結するサプライチェーンの構築」及び「決済手段・通貨の多様化」が15.8%、「輸出管理遵守に向けた取引先の見直し」が10.5%、「その他」が7.9%、「特になし」が31.6%だった。 2023年1月調査におけるそれぞれの選択肢の回答割合は、「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」が21.7%、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」が20.0%、「ロシア拠点で完結した資金運営」が18.3%、「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」が13.3%、「決済手段・通貨の多様化」が13.3%、「ロシア国内もしくはロシアの友好国で完結するサプライチェーンの構築」が8.3%、「輸出管理遵守に向けた取引先の見直し」が8.3%、「その他」が6.7%、「特になし」が33.3%だった。
  • 今回の調査で「通常どおり」と回答した企業22社は、事業運営上の困難として「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」(63.6%)を挙げ、次いで「決済の困難(ロシア国内外との決済)」(59.1%)を挙げた(図4)。2023年1月の調査で最も回答の割合が多かった「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」は順位を2つ落とした。
  • 上記22社のうち、事業運営上の対応については、50.0%が「決済手段・通貨の多様化」を挙げ、次いで「輸出管理順守に向けた取引先の見直し」(36.4%)、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」および「輸出管理順守に向けた取扱商品の見直し」(各31.8%)を挙げた。2023年1月調査と比較すると、「輸出管理遵守に向けた取引先の見直し」と回答した企業の割合が大幅に増加した(図5)。
  • ‐ ロシアビジネスを継続する企業からは、好調な市況や将来的な日ロ間ビジネス再開に対する期待、ロシア市場の成長性への期待から残留を決めているという声も挙がった。他方、撤退によって製品保証期間中の保証義務違反として訴訟を受けるリスク回避や、資本取引規制により事業売却・撤退が困難になったため、ビジネスを続けざるを得ないといった意見も見られた。

    図4:事業運営上の困難(複数回答)

    図4 事業運営上の困難(複数回答)について。今回調査の有効回答数は22社、2023年1月調査の有効回答数は35社。 今回調査のそれぞれの選択肢の回答割合は、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が63.6%、「決済の困難(ロシア国内外との決済)」が59.1%、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」が45.5%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」及び「ルーブル為替の不安定化」が36.4%、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」が31.8%、「物流コストおよび商品、原材料、部品、サービス調達コストの上昇」が31.8%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が31.8%、「ロシア、欧米諸国の取引先との関係変化」が27.3%「ロシア事業の収益性低下」が27.3%、「レピュテーションリスク回避を目的とした他社の事業活動の自粛」が22.7%、「日本政府による対ロ制裁(新規投資禁止)」が22.7%、「日本政府による対ロ制裁(その他)」が22.7%、「ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大」が22.7%、「ロシア拠点の勤務体制の維持・変更(駐在員不在、現地従業員の増減など)」が18.2%、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」が18.2%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(物流・輸送にかかる制限)」が18.2%、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が13.6%、「日本政府による対ロ制裁(日本への輸入禁止)」が13.6%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(金融分野の制限)」が13.6%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(特定個人・法人との取引制限)」が13.6%、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」が9.1%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(製品・サービスの輸出入制限)」が9.1%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(金融分野の制限)」が4.5%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(その他)」が4.5%、「ロシア国内での販売の著しい減少」が0.0%、「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」が0.0%、「その他」が0.0%、「特になし」が4.5%だった。 2023年1月調査それぞれの選択肢の回答割合は、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」が68.6%、「決済の困難(ロシア国内外との決済)」が62.9%、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が62.9%、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」が45.7%、「ルーブル為替の不安定化」が45.7%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」が42.9%、「ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大」が42.9%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が40.0%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(金融分野の制限)」が37.1%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(金融分野の制限)」が34.3%、「ロシア拠点の勤務体制の維持・変更(駐在員不在、現地従業員の増減など)」が31.4%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(物流・輸送にかかる制限)」が28.6%、「物流コストおよび商品、原材料、部品、サービス調達コストの上昇」が25.7%、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」が25.7%、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が22.9%、「レピュテーションリスク回避を目的とした他社の事業活動の自粛」が22.9%、「日本政府による対ロ制裁(新規投資禁止)」が22.9%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(特定個人・法人との取引制限)」が22.9%、「ロシア事業の収益性低下」が22.9%、「ロシア、欧米諸国の取引先との関係変化」が20.0%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(製品・サービスの輸出入制限)」が17.1%、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」が11.4%、「日本政府による対ロ制裁(日本への輸入禁止)」が11.4%、「日本政府による対ロ制裁(その他)」が11.4%、「ロシア国内での販売の著しい減少」が8.6%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(その他)」が5.7%、「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」が2.9%、「その他」が0.0%、「特になし」が2.9%だった。

    図5:事業運営上の対応(複数回答)

    図5 事業運営上の対応(複数回答)について。今回調査の有効回答数は22社、2023年1月調査の有効回答数は35社。 今回調査のそれぞれの選択肢の回答割合は、「決済手段・通貨の多様化」が50.0%、「輸出管理遵守に向けた取引先の見直し」が36.4%、「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」が31.8%、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」が31.8%、「ロシア国内もしくはロシアの友好国で完結するサプライチェーンの構築」が22.7%、「ロシア拠点で完結した資金運営」が4.5%、「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」が0.0%、「その他」が0.0%、「特になし」が22.7%だった。 2023年1月調査のそれぞれの選択肢の回答割合は、「決済手段・通貨の多様化」が45.7%、「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」が28.6%、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」が28.6%、「ロシア国内もしくはロシアの友好国で完結するサプライチェーンの構築」が22.9%、「ロシア拠点で完結した資金運営」が17.1%、「輸出管理遵守に向けた取引先の見直し」が8.6%、「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」が5.7%、「その他」が8.6%、「特になし」が17.1%だった。
  • 「撤退済み・撤退の手続き中」と回答した企業1社のロシア市場からの撤退方法は「現地他社、投資家への譲渡、売却」であった。
  • 撤退の外部要因については、資金・決済・物流面での困難のほか、「ロシア国内での販売の著しい減少」、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が挙がった。
  • 撤退の内部要因では、「レピュテーションリスクの回避」が挙がった。

2. 自社の景況感

  • 自社の景況DI(注)は最近の状況、2カ月後の見通しともに低迷が続いている。最近の状況はやや上向くも、2カ月後の見通しは依然として低い状況が続いている。
    (注)景気動向指数〔ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)〕:景況DIは「良い」と回答した企業の比率から「悪い」とした企業の比率を引いた数値。
  • 景況DIは、前回調査(2023年10月)と比べて8ポイント上昇し、2回連続で前回比プラスを記録したものの、マイナス40と低迷の状況に大きな変化はなかった(図6)。「ロシアによる報復制裁により、収益性事業ができない」、「欧米日等の対露制裁やレピュテーションリスク等により、取引先の事業活動が縮小」といった制裁による悪影響の指摘が複数あった。新規ビジネスが見込めない中、「顧客は既存の機械・設備を延命活用する傾向にあり、これに対するメンテナンスの需要が旺盛」というコメントもあった。

    図6:自社の景況DI(最近の状況)

    図6 自社景況DI(最近の状況)の推移。 在ロシア日系企業の2009年4月から2024年2月までの自社景況DIの推移は順に、2009年4月がマイナス69、6月がマイナス60、8月がマイナス56、10月がマイナス42、2010年1月がマイナス25、3月がマイナス20、5月が5、7月が18、9月が27、11月が38、2011年2月が44、6月が33、9月が39、12月が41、2012年2月が51、7月が28、12月が25、2013年2月が21、6月が24、11月が1、2014年2月が7、6月が7,11月がマイナス23、2015年4月がマイナス32、9月がマイナス36、2016年1月がマイナス28、4月がマイナス24、9月がマイナス13、2017年2月が10、6月が1、9月が22、2018年1月が30、4月が27、9月が21、2019年1月が33、4月が27、9月が13、2020年1月が3、5月がマイナス59、10月がマイナス4、2021年1月が5、4月が19、9月が33、2022年1月が29、5月がマイナス63、8月がマイナス57、2023年1月がマイナス49、5月がマイナス56、10月がマイナス48、2024年2月がマイナス40だった。
  • 景況見通しDI(2カ月後の状況)は、前回から変わらずマイナス50だった(図7)。「状況が好転する兆しはない」、「メンテナンス対象となる機械・設備の数は年々減少していくことから、中長期的な見通しは明るくはない」というコメントがあった。

    図7:自社の景況見通しDI(2カ月後の状況)

    図7 自社の景況見通しDI(2カ月後の状況)の推移。 在ロシア日系企業の2009年4月から2024年2月までの自社景況DIの推移は順に、2009年4月がマイナス61、6月がマイナス54、8月がマイナス39、10月がマイナス29、2010年1月がマイナス10、3月が0、5月が17、7月が27、9月が35、11月が38、2011年2月が46、6月が36、9月が27、12月が33、2012年2月が51、7月が26、12月が23、2013年2月が28、6月が22、11月が9、2014年2月が8、6月が8,11月がマイナス38、2015年4月がマイナス30、9月がマイナス29、2016年1月がマイナス36、4月がマイナス17、9月がマイナス7、2017年2月が15、6月が9、9月が24、2018年1月が30、4月が22、9月が17、2019年1月が25、4月が24、9月が16、2020年1月がマイナス1、5月がマイナス62、10月がマイナス10、2021年1月が10、4月が22、9月が23、2022年1月が14、5月がマイナス67、8月がマイナス61、2023年1月がマイナス49、5月がマイナス56、10月がマイナス50、2024年2月がマイナス50だった。

3. 今後の事業展開見通し

  • 今後1~2年後の事業展開見通しについて、「維持」(41.3%)が最も多い回答となったが、2023年10月時点と比べ6.1ポイント減少している(図8)。一方、「休眠」、「撤退」の回答がそれぞれ、4.8ポイント、1.9ポイント増加した。

    図8:今後1~2年のロシアでの事業展開見通し

    図8 今後1~2年後の事業見通しについて。有効回答数は、今回調査が63社、2023年10月調査が76社、2023年5月調査が66社、2023年1月調査が89社、2022年8月調査が101社、2022年5月調査が90社、2022年1月調査が87社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、今回調査で「拡大」が4.8%、「維持」が41.3%、「縮小」が12.7%、「休眠」が12.7%、「撤退」が3.2%、「不明・該当せず」が25.4%だった。 2023年10月調査では、「拡大」が5.3%、「維持」が47.4%、「縮小」が17.1%、「休眠」が7.9%、「撤退」が1.3%、「不明・該当せず」が21.1%だった。 2023年5月調査で「拡大」が3.0%、「維持」が36.4%、「縮小」が22.7%、「休眠」が15.2%、「撤退」が1.5%、「不明・該当せず」が21.2%だった。 2023年1月調査で「拡大」が3.4%、「維持」が33.7%、「縮小」が29.2%、「撤退」が1.1%、「不明・該当せず」が32.6%だった。 2022年8月調査で「拡大」が4.0%、「維持」が29.7%、「縮小」が32.7%、「撤退」が2.0%、「不明・該当せず」が31.7%だった。 2022年5月調査で「拡大」が2.2%、「維持」が30.0%、「縮小」が30.0%、「撤退」が4.4%、「不明・該当せず」が33.3%だった。 2022年1月調査で「拡大」が31.0%、「維持」が55.2%、「縮小」が3.4%、「不明・該当せず」が10.3%だった。「撤退」を 2022 年 5 月調査から、「休眠」を 2023 年 5 月調査からそれぞれ追加している。


  • 今後の事業見通しに関する主なコメントは以下のとおり。
ビジネス再開を期待
ビジネス再開できる環境となれば、再開したい。
今後1~2年後の状況は不明だが、軍事作戦が終わり、対露制裁が緩和された場合には、ビジネスの拡大も想像できる。
戦争の終了、制裁の緩和が行われ、ロシア事業が再開できることを期待している。
いわゆる制裁対象業種ではないため、収束後の再開は部分的でも早いとは考えるが、なんらかのポジティブなトリガーが必要。
静観/身動きが取れない/状況の長期化を懸念
すでに最小限の機能に絞っており、当面は状況静観の予定。
紛争及び経済制裁の長期化に伴い、将来的に休眠等の判断をする可能性あり。
撤退する方針だが、ロシアから資金の出金に規制がかかっているため、支店を閉鎖することができない。
戦争の行方と、今後の日露双方の政府方針次第。

4. 駐在員・現地従業員の状況

  • 駐在員の状況につき、「ロシア国内で勤務している(1名もしくは複数名)」と答えた企業は41.3%で、2023年5月調査と比較すると0.1%の増加だった。「ロシア拠点駐在員のポストはあるが、勤務はロシア国外(他拠点との兼任含む)」と答えた企業は27.0%で、2023年5月調査より14.2ポイント減少した。他方、「ロシアの駐在員は配置していない(本社等から直接管理)」と答えた企業は31.7%で、14.1ポイント増加した(図9)。

    図9:駐在員の状況

    図9 駐在員の状況について、有効回答数は63社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、「ロシア国内で勤務している(1名もしくは複数名)」が41.3%、「ロシアの駐在員は配置していない(本社等から直接管理)」が31.7%、「ロシア拠点駐在員のポストはあるが、勤務はロシア国外 (他拠点との兼任含む)」が27.0%だった。
  • 駐在員がロシア国内で勤務している(1名もしくは複数名)と答えた企業26社のうち、配置している駐在員数について聞いたところ、「1名」(65.4%)とする企業が最も多かった。次いで、「2~5名」(30.8%)、「6名以上」(3.8%)の順となった(図10)。

    図10:ロシア拠点の駐在員の人数

    図10 ロシア拠点の駐在員の人数について、有効回答数は26社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、「1名」が65.4%、「2~5名」が30.8%、「6名以上」が3.8%だった。
  • 上記26社のうち、駐在員数の増減について「不変」(42.3%)と答えた企業が最も多く、次いで「減少(22年初比で50%~99%)」(34.6%)、「減少(22年初比で50%未満)」(23.1%)となった。なお、「増加」と答えた企業はなかった(図11)。

    図11:帰還・出張する人物(複数回答)

    図11 ロシア拠点の駐在員数の変化について、有効回答数は26社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、「増加」が0.0%、「減少(22年初比で50%~99%)」が34.6%、「減少(22年初比で50%未満)」が23.1%、「不変」が42.3%だった。
  • ロシア拠点の現地従業員数については、「減少(現地従業員数が22年初比で50%~99%)」(34.9%)と答えた企業が最も多かった。次いで、「減少(現地従業員数が22年初比で50%未満)」(31.7%)、「不変」(30.2%)、「増加」(3.2%)の順になった(図12)。

    図12:ロシア拠点の現地従業員数の変化

    図12 ロシア拠点の現地従業員数の変化について、有効回答数は63社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、「増加」が3.2%、「減少(現地従業員数が22年初比で50%~99%)」が34.9%、「減少(現地従業員数が22年初比で50%未満)」が31.7%、「不変」が30.2%だった。
  • 現地従業員数について「減少」と回答した42社のうち、従業員数が減少した理由について「相互合意による解雇」(71.4%)が最も多く、次いで「現地従業員の自主退職」(35.7%)、「事業縮小等に伴う法定解雇」(14.3%)、「その他」(7.1%)という結果になった(図13)。

    図13:従業員が減少した理由(複数回答)

    図13 従業員が減少した理由について。有効回答数は42社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、「相互合意による解雇」が71.4%、「現地従業員の自主退職」が35.7%、「事業縮小等に伴う法定解雇」が14.3%、「その他」が7.1%だった。

ジェトロ調査部(担当:浅元)
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