上海市土地使用権払下げ弁法

2009年2月27日作成

【法令名称】
上海市土地使用権払下げ弁法
【発布機関】
上海市人民政府
【発布番号】
上海市人民政府令第8号
【発布日】
2008-11-27
【施行日】
2009-1-1

法令紹介

主旨と目的

  • 上海市土地の有償使用制度を整備し、土地使用権の払下げ行為を規範化する。(第1条)。

日系企業への影響
本法令は中国の国内外の自然人、法人及びその他の組織等各種の主体(日系企業を含む)に適用される。本法令に基づき、日系企業は、上海市行政区域内にて国有土地使用権を譲受けた場合、本法令に定められる範囲、方式及び手続等を厳格に遵守しなければならない。

なお、本法令は「上海市土地使用権払下げ弁法」(上海市人民政府令第101号、以下「元の法令」という)を一部改正したものであり、土地使用権払い下げの方式や手続き等については、文言や条文の順序が整理された程度で内容に変更はないが、元の法令と比較すると次の二つの規定が削除されている。

  1. 元の法令第25条「土地使用権の納付」に関する規定。
  2. 元の法令第37条「期限経過後の土地使用金の納付に対する処分」に関する規定。

本法令における上記二か所の改正は、主に上海市が「土地使用金」の徴収を廃止し、各種企業(日系企業を含む)の負担を軽減するために行ったものである(もともとの徴収基準は、払下土地の面積に基づき計算し、1平米につき1元とし、土地使用権払下期限内に年ごとに徴収することであった)。従い、2009年1月1日以降、土地使用金の支払いは免除されている。

内容のまとめ
本法令は、上海市行政区域内にある土地使用権(以下「土地使用権」という)の払下げの範囲、方式、手続、払下げ土地使用権の収用及び関連法的責任等の事項につき明確に規定している。主たる内容は以下の通りである。

土地使用権払下げについての一般規定(第5~9条)
  • 譲受人:国内外の自然人、法人及びその他の組織(第5条)。
  • 主管部門:上海市土地管理部門(第6条)。
  • 払下げ契約:土地使用権の払下げは払下げ契約を締結しなければならない(第7条)。
  • 譲渡、抵当権の設定、賃貸等:譲受人は土地使用権の払下げ年限以内において、払下げ契約及び関連法律、法規の規定に基づき、土地使用権の譲渡、抵当権の設定、賃貸を行い、又は法律が認めるその他の経済活動に使用することができる(第8条)。
  • 相続:払い下げにより土地使用権を取得した自然人は、土地使用権の払下げ期限内にこれを相続することができる(第9条)。
土地使用権払下げの範囲(第11条)
  • 割当の方式により土地使用権を取得する場合を除き、各種の建設プロジェクトは有償で土地使用権を取得しなければならない。
  • 分譲住宅プロジェクトは払下げにより土地使用権を取得しなければならず、その他のプロジェクトは払下げ又は賃貸等の方式により土地使用権を取得することができる。
  • 割当の方式により土地使用権を取得した場合で、不動産譲渡の際に、規定に基づき払下げにより土地使用権を取得しなければならない場合には、不動産譲渡の譲受人は払下げ人と払下げ契約を締結し、規定に基づいて土地使用権払下げ金を支払った後、土地使用権を取得する。
土地使用権払下げの最高年限(第13条) 下記のとおり用途により異なる。
  • 居住用地:70年
  • 工業用地:50年
  • 教育、科学技術、文化、衛生、スポーツ用地:50年
  • 商業、観光、娯楽用地:40年
  • 総合又はその他の用地:50年
土地使用権払下げの方式(第14条)
  • 入札募集
  • 競売
  • 協議
  • 国及び上海市人民政府が定めるその他の方式
※備考:商業、観光、娯楽、金融、サービス業、分譲住宅等プロジェクトに使用される土地使用権の払下げについては、入札募集、競売の方式にて行われなければならない。ただし、上海市人民政府に許可され協議により払い下げられる土地使用権の特別の場合は除く。
土地使用権払下げの手続(第15、17~19条)
  • 書面により計画管理部門に当該土地の計画要求を照合する(第15条)。
  • 入札募集、競売により土地を払い下げた場合、書面により投資管理部門及び関連管理部門に意見を求める(第15条)。
  • 投資、計画等の管理部門に建設プロジェクトの関連手続を行う(第15条)。
  • 入札募集による土地使用権の払下げについての特別な手続(第17条)。
  • 競売による土地使用権の払下げについての特別な手続(第18条)。
  • 協議による土地使用権の払下げについての特別な手続(第19条)。
譲受人による土地使用権の登記(第23条) 払下げ土地にある元の建築物、構築物及びその他の附着物の撤去の状況によって変わってくる。
  • 既に撤去した場合、又は撤去する必要がない場合(土地使用権と地上にある建築物、構築物及びその他の附着物が一緒に払い下げられた場合)には、譲受人は払下げ契約に基づいて払下げ金の全額を支払った後、土地使用権の登記を行う。
  • 撤去すべきにもかかわらず撤去しなかった場合について。
    1. 払下げ人が撤去に責任を負うと約定した場合には、譲受人は払下げ契約の規定に基づき払下げ金を全額支払い、払下げ人は払下げ契約に基づき建物を撤去し、払下げ土地を引渡した後、登記を行う。
    2. 譲受人が撤去に責任を負うと約定した場合には、譲受人は払い下げ契約に基づき、払下げ金を全額支払い、払下げ人は譲受人に土地臨時使用証明を発行し、譲受人が指定された機構と、元の建築物、構築物及びその他の付着物を撤去する旨の契約を締結し、撤去した後、登記を行う。
払下げ土地使用権の延長(第27条)
  • 土地使用権の払い下げ年限が満了し、譲受人が引続き土地を使用する必要がある場合、遅くとも期限満了の1年前までに延長を申請しなければならない。
  • 社会公共利益のために土地使用権を収用する場合を除き、譲受人の延長申請を許可しなければならない。
  • 許可を経て延長が認められた場合、払下げ人は譲受人と改めて払下げ契約を締結し、譲受人が規定に基づいて、払下げ金を支払う。
払下げ土地使用権の収用(第28条)
  • 土地使用権の払下げ年限が満了し、譲受人に次に掲げる状況があった場合、その土地使用権は無償で収用されなければならない。
    • 譲受人が延長を申請していない場合
    • 譲受人が延長を申請したものの、許可されなかった場合
  • 土地使用権が無償で収用された場合、その地上にある建築物、構築物及びその他の付着物については、払下げ契約の約定に基づき処理される。
土地使用権の期限満了前の収用及び補償(第29~32条)
  • 払下げ年限が満了していない土地使用権を繰上げて収用しない。但し、特殊な状況である場合、社会公共利益のために、法定手続に基づいて、払下げ土地使用権を繰上げて収用することができる(第29条)。
  • 繰上げて土地使用権を収用する場合、払下げ人は遅くとも土地使用権収用日の6ヶ月前までに、払下げ土地の位置、範囲、収用理由、収用日などを譲受人に通知し、払下げ土地の範囲内で公告しなければならない(第30条)。
  • 繰上げて土地使用権を収用した場合、払下げ人は譲受人に相応の補償を与えなければならない。補償の方法は次の2通り。
    • 払下げ年限の残余期間、計画用地目的、払い下げ金及び地上の建築物・構築物とその他の付着物の価値などにより、払下げ人と譲受人が協議の上決定するか、又は資格を有している不動産評価機構が不動産価格評価を行った上確定する(第31条)。
    • 払下げ人は譲受人と協議のうえ、別途土地の土地使用権を譲受人と交換することが出来る。土地使用権の交換が行われる土地の払下げ金の金額は、払い下げ人と譲受人が協議の上、決めるか、又は資格を有している不動産評価機構に不動産価格の評価を依頼した上確定する(第32条)。