日本からの輸出に関する制度

アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き

インドネシアの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2020年5月

これまでインドネシアは、東京電力福島第一原子力発電所事故発生時より、日本産農産物について放射性物質の検査報告書の提出を求めていましたが、7月26日付けでこの提出義務が解除されました。これにより、インドネシアにおける放射性物質輸入規制が撤廃されました。
詳しくは、関連リンクの「農林水産省『インドネシアによる日本産食品の輸入規制の撤廃について』」を参照してください。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2019年7月

日本からのアルコール飲料の輸入は、商業省からアルコール飲料登録輸入業者(IT-MB)の認定を受けた法人に限定されます。輸出国の商標保有者は、輸入業者との間に、インドネシアにおける販売者に指定するディストリビューター指名書の契約を締結する必要があります。 IT-MBがアルコール飲料の商品登録を行うにあたり、輸出者側からは次の書類の提出が必要です。

  • アルコール飲料を提供する海外の製造会社、輸出会社からIT-MBへのディストリビューター指名書
  • 衛生証明(Health Certificate)または自由販売証明書(Certificate of Free Sale)
  • 輸出入契約書
  • GMP(適正製造規範)、HACCP(危害分析および重要管理点)、ISO-22000の認証または同種の認定証明書、あるいは原産国政府の監査結果

また、必要に応じて次の書類も求められます。

  • 商標登録証
  • オーガニック食品認証
  • 遺伝子組み換え食品に関する証明書
  • 放射線照射に関する証明書

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2019年7月

なし

インドネシアの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2019年7月

アルコール飲料は、BPOM長官規則2016年第14号によって安全品質規格が定められており、品質要件としてメタノール濃度が0.01%未満であることが指定されています。個別の品目については同令の付属書において、品質規格が定められています。
また、加工食品に対して使用が認められない原料は、BPOM長官規則2018年第7号に定められています。

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2019年7月

残留農薬規制については原則、食品の国際規格であるCODEX(コーデックス委員会)の規格が採用されています。
残留農薬の監督を行うインドネシアの保健省と農業省は、1996年に保健・農業大臣合同決定No.881/Menkes/SKB/VIII/1996,No.711/Kpts/TP.270/8/96にて218種類の農薬について独自の残留/汚染上限を設け、基準を超える食品の輸入および国内販売を禁止しました。また、これらに規定されていない農薬の残留は認められていません。

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2019年7月

2018年に改訂された加工食品の重金属および化学的汚染物質の上限に関するBPOM長官規則2018年第5号および同第8号により、アルコール飲料は、重金属/汚染物質の規制の対象とされています。

重金属の許容限度基準値(mg/kg)は、次のとおりです。

  • ヒ素(As)0.1 mg/kg
  • 鉛(Pb)0.2 mg/kg
  • 水銀(Hg)0.03 mg/kg
  • カドミウム(Cd)0.2 mg/kg

缶入りの飲料については、スズの許容限度量が100 mg/kgとされています。

汚染物質の許容限度基準値については、次のとおりです。

  • オクラトキシンA:ビール0.2 ppb、ワイン2 ppb、
  • パツリン:りんごを原料とするアルコール飲料50 ppb

4. 食品添加物

調査時点:2019年7月

保健大臣規則2012年第33号では、調味料に使用が禁止される食品添加物として次の19の物質を挙げています。

  • ホウ酸
  • サリチル酸とその塩
  • ジエチルピロカーボネート
  • ズルチン
  • ホルムアルデヒド
  • 臭素酸カリウム
  • 塩素酸カリウム
  • クロラムフェニコール
  • 臭化物食用油
  • ニトロフラゾン
  • ズルカマラ
  • コカイン
  • ニトロベンゼン
  • アントラニル酸シンナミル
  • ジヒドロサフロール
  • トンカ豆
  • ショウブの根茎からとれる精油(Calamus oil
  • ヨモギギクの精油(Tansy oil
  • サッサフラスの精油(Sasafras oil

また、使用が認められる食品添加物は保健大臣規則2012年第33号に、使用規制量はBPOM規則2019年第11号に定められています。

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2019年7月

食品用の容器包装は、2019年国家医薬品食品監督庁(BPOM)規則第20号に、食品包装として使用が禁止されている原料と、使用が許可されている原料のリストが掲載されています。食品包装として使用が許可されている原料については、食品への移行量の規制についても記載されています。
食品包装として使用が認められる原料としては、プラスチック(モノ/マルチレイヤー)、ゴム/エラストマー、紙とカートン、ふた/ガスケット/封印、レジン/ポリマーレイヤー、陶器、ガラス、金属があり、食品への移行量の制限つきでリストが定められています。
なお、工業大臣規則No.24/M-IND/PER/2/2010により、食品包装には食品に適した安全な容器を使用していることを示すロゴの表示が義務けられています。またプラスチック容器については、リサイクルのコードと使用しているプラスチックの種類を表記することが定められています。

6. ラベル表示

調査時点:2019年7月

アルコール飲料のラベルは、加工食品の規定に従いインドネシア語の表示が義務付けられます。表示が義務付けられている項目は次のとおりです。

  1. 品名
    食品種類、製品名
  2. 使用原材料の一覧
    原材料、食品添加剤、加工助剤、アルコール度数
  3. 正味重量または正味容量
  4. 製造者または輸入者の名称と住所
  5. 製造年月日および製造番号
  6. 使用期限
    品質が保証される年月日を記載、保存期間が3カ月以上の商品については、年月だけでもよいとされています。また、アルコール度数が7%超の場合は、表記の義務はありません。
  7. 加工食品流通許可番号
    「BPOM RI ML xxxxx (取得番号)」
  8. 特定食品原料成分の説明
    動物起源の原料、ハラールに関連する原料、遺伝子組み換え原料、放射線照射原料などです。ただし遺伝子組み換え原料の使用量が5%以下の場合は表示が免除されています。
  9. 注意文
    人工甘味料、豚由来原料、アレルゲン、アルコール含有に関する項目をインドネシア語で表示しなければなりません。
    • アルコール含有飲料であることの表示
    • 食品カテゴリーに基づく種類、またはアルコール度数に応じたカテゴリー(A、B、C)
    • 21歳未満の者および妊婦の摂取は禁止
    • アルコール度数
  10. 栄養表示
    エネルギー総量、脂肪総量、タンパク質、炭水化物、ナトリウムの表示が必要です。

製品名および注意文は、2mmのArialフォントによる小文字の「o」と同じかそれより大きいサイズで記載しなければなりません。

ラベルは加工食品流通許可の取得時に承認されている必要があり、承認済みのラベルと同一のものが、インドネシア国内に搬入される際に表示されている必要があります。

7. その他

調査時点:2019年7月

なし

インドネシアでの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)

調査時点:2019年7月

日本からアルコール飲料を輸入するにあたっては、輸入業者が商業大臣からアルコール飲料特定輸入業者(IT-MB)に認定されている必要があります。
IT-MBの認定は株式会社に限定されています。申請要件として、アルコール飲料商業許可(SIUP-MB)を取得していること、少なくとも海外 5 カ国の最低 20 のアルコール飲料工場から年最低 3,000 カートンを調達することを記載したディストリビューター指名書などが求められます。

輸入にあたってはIT-MB が商業大臣から輸入承認を取得し、輸入割当を受けます。輸入割当の申請は、毎年4月1日の15日前までに提出します。IT-MB は輸入割当量の少なくとも 80%の実現が求められます。

商品登録は、IT-MBが国家医薬品食品監督庁(BPOM)に申請し、BPOM長官が発行する加工食品流通許可番号(ML番号)と流通許可証(Izin Edar)を取得します。商品ラベルにはML番号を記載する必要があります。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2019年7月

商業大臣規則2019年第25号により、輸入されたアルコール飲料はすべて、保税物流センター(PLB)に搬入することが義務付けられています。
輸入港は、商品を搬入する保税物流センターに最も近接していることとされています。

通関の手続きとしては、次のプロセスを経て保税物流センターから搬出されます。

(1)輸入申告
税関に輸入品通知書(フォームBC1.6)と、次の添付書類を電子データで作成し、提出します。
  • インボイス
  • パッキングリスト
  • 船荷証券
  • その他の条件となる書類
(2)書類審査
税関による申告内容や添付書類の審査
(3)PLB商品搬出許可(SPPB PLB)の取得
これらの検査を経て船卸港の税関からの搬出許可が出たのち、貨物は保税物流センターへの搬入が可能となります。保税物流センターから商品を搬出する際に、留保されていた関税および輸入関連税を納付します。
また、輸入港は、海港ではブラワン(北スマトラ州メダン)、タンジュンプリオク(ジャカルタ)、タンジュンマス(中部ジャワ州スマラン)、タンジュンぺラック(東ジャワ州スラバヤ)、ビトゥン(マナド)、スカルノハッタ(南スラウェシ州マカッサル)の 6港、空港は全国の国際空港に限られます。自由貿易地域で搬入された輸入アルコールは同地域内での消費用のみが認められます。

3. 輸入時の検査・検疫

調査時点:2019年7月

なし

4. 販売許可手続き

調査時点:2019年7月

アルコール飲料は、加工食品としてBPOMに商品登録し、「流通許可(Izin Edar)」を取得することが義務付けられています。申請は輸入業者が行います。必要な条件は次のとおりです。

  • 輸入業あるいは販売業の事業認可を取得している。
  • 原産国の企業からの契約書のかたちでの指名書を保有している(流通許可登録を行う権 利の付与や指名期間など明記、公証人・商工会議所・在外公館の認証が必要)。
  • 法規に基づく食品の適性流通方法の要件を満たしている。

輸入されたアルコール飲料は、IT-MBから指定ディストリビューターへの供給に限られます。さらに指定ディストリビューターから指定サブ・ディストリビューターを経て、小売店や現地で飲用に提供する店舗に販売されます。いずれの事業者もアルコール飲料取り扱いの事業許可が必要です。

なお、アルコール飲料を飲用に提供する場は、ホテルやレストラン、バーに限定されています。また、小売り販売については、スーパーマーケットまたはハイパーマーケットに限定されます。また地方自治体により、提供場所や販売店、地域などが規制されている場合もあります。

5. その他

調査時点:2019年7月

なし

インドネシア内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2019年7月

日本から輸入されるアルコール飲料には、ビールは1リットル当たり14,000ルピア、ビール以外の醸造酒と混成酒は90%、蒸留酒には150%の関税が課されます。保税物流センターへの搬入が義務付けられているため、輸入時は関税が留保され、保税物流センターからの搬出時に課税されます。

2. その他の税

調査時点:2019年7月

輸入されたアルコール飲料に対しては、アルコール度数に応じて、1リットル当たり次の物品税が、保税物流センターからの搬出時に課されます。

  • Aカテゴリー(アルコール度数5%以下):Rp.15,000
  • Bカテゴリー(アルコール度数5%超-20%以下):Rp.44,000
  • Cカテゴリー(アルコール度数20%超):Rp.139,000

輸出前に、輸入業者はラベルまたは梱包の見本と、指定機関によるアルコール度数の試験結果を提出し、関税総局に適用税率の認定を受ける必要があります。

3. その他

調査時点:2019年7月

前払い所得税
ビールを除くアルコール飲料には、輸入前払い所得税(PPh-22)が、保税物流センターからの搬出時に徴収されます。税率はCIFの7.5%です。これは法人税の年次申告時に法人税と相殺されます。

その他

調査時点:2019年7月

ハラール認証
ハラール製品保証法に基づき、ハラールでない食品は、ハラールでない旨を製品に表示しなければなりません。アルコール飲料はハラールではないので、2019年10月17日以降、対応期限である2024年10月17日までに、ハラールではない旨を表示する必要があります。