知的財産ニュース 韓国特許庁、2023年知財保護実態調査の結果を発表…営業秘密流出犯罪への処罰強化を求める声が2倍増え

2024年4月17日
出所: 韓国特許庁

営業秘密流出に対する処罰や模倣品取り締まり支援を求める意見が急増

営業秘密を保有する企業2社のうち1社は「営業秘密流出犯罪に対する刑事罰を強化すべき」と答えた。

韓国特許庁は4月17日水曜日、上記の内容を盛り込む「2023年知的財産保護実態調査」の結果を発表した。

同調査は、不正競争防止および営業秘密保護に関する政策策定の基礎資料として活用する目的に2021年から毎年実施されている。今回の調査は、従業員数10人以上の韓国国内の企業を対象に、①営業秘密保護、②不正競争行為、③商標権保護に対する認識および現況などを調べた。

調査概要
□調査対象:従業員数10人以上の韓国国内の企業
―営業秘密保護の実態調査:営業秘密を保有する企業8,123社(回答した企業2,500社、回答率30.8%)
―不正競争行為の実態調査:不正競争行為を認知している企業11,432社(回答した企業2,000社、回答率17.5%)
―商標権保護の実態調査:商標権を保有する企業75,000社(回答した企業3,000社、回答率4%)
□調査期間:2023年7月~11月
□調査内容:商標権・営業秘密・不正競争行為に対する認識および現況、政策需要など
□調査方法:調査員による非対面形式(電話、インターネット、FAX)のアンケート調査
□主管機関/調査機関:特許庁、韓国知識財産保護院/韓国ギャラップ
※このアンケート調査結果の統計は、統計法に基づく承認統計ではありません。

①営業秘密流出犯罪に対する刑事罰の強化を求める(2022年)27.1%→(2023年)46.4%

営業秘密の侵害・流出に対する予防や対応に向けた政策需要として「営業秘密流出犯罪に対する刑事罰の強化」を求める回答の割合が46.4%※と最も多かった。これは、昨年調査の27.1%から約2倍増えた結果である。
※証拠収集がしやすい制度づくり(36.6%)、営業秘密保護の教育・相談(34.5%)の順

これまで社会的に指摘されていた技術流出犯罪に対する軽い処罰※と、技術流出事件の増加傾向が影響しているとみられる。
※営業秘密の海外流出犯罪の法定刑は最大15年だが、平均の懲役刑は14.9月(2022年)に過ぎない

営業秘密を保護するために行っている活動としては「内部者に対し、定期的に営業秘密保護誓約書を作成」(37.4%)が最も多く、「外部者に対し、守秘義務契約を締結」(7.3%)、「ライバル企業への転職禁止契約および競業避止義務の付与」(5.2%)の順となっている。

②アイデア奪取の防止、是正命令制度が最も効果的33.9%

認知している不正競争行為の類型は「原産地の虚偽表示」が92.9%と最も多かった。次は、「アイデア奪取」(90.4%)、「商品形態の模倣」(84.9%)、「他人の成果を盗用する行為」(83.9%)の順である。

不正競争行為を改善するための対策として「行政調査権の強化(是正命令制度など)」が33.9%と最も多く、「アイデアの原本証明制度を導入」(25.9%)、「民事訴訟で行政調査資料活用の手続きを導入」(14.6%)となっている。

③オンライン上の模倣品増加により、模倣品取り締まり支援(モニタリングなど)を求める声が10倍以上急増

商標権保護に関する特許庁の支援事業の中、「国内模倣品取り締まり支援事業」を利用したいと答えた割合が50.2%と最も多く、「オンライン上の海外模倣品取り締まり支援事業」も35.2%と多かった※。これは、昨年調査の5.1%、2.6%からそれぞれ10倍以上急増した結果である。
※社会的弱者の知財権保護支援(45.6%)、小規模事業者向け知的財産競争力強化(43.6%)の順

今回の結果は、海外直接購入(個人輸入)などオンライン上で模倣品の流通が急増していることで、莫大な経済的被害が発生したことが影響※しているとみられる。
※模倣品により、輸出など売上高が約22兆ウォン減少(2019年、韓国知識財産研究院)

特許庁の産業財産保護協力局長は「営業秘密流出犯罪に対しては、初犯の場合も実刑判決を下す量刑基準※が今年3月に改正され、不正競争行為の防止に向けた特許庁による是正命令制度は今年8月から施行される予定である」とし、「今回の実態調査からみられた今後の課題についても政策・制度面での支援を引き続き進めていく」と述べた。
※裁判官が刑量および執行猶予を付す際に参考する基準

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