トルコの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年の実質GDP成長率は5.5%の伸びと好調。インフレ率は64.3%と急激に上昇した。
  • 貿易はエネルギー価格の上昇を受け、輸入超過が拡大。
  • 対内直接投資は4.3%減もEUからは97.0%増。M&Aは湾岸諸国が存在感を増す。
  • 日本からの輸出は前年並み、輸入は2桁増。直接投資は2009年以来最低水準。

公開日:2023年9月15日

駐在員による3分解説動画

動画再生のためのモーダルウィンドウを開く

マクロ経済 
高成長となるも、マクロ経済の不均衡は拡大

2022年のトルコ経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大下でのロックダウン(都市封鎖)の中にあっても生産活動を維持したこともあり、上半期に好調だった外需が雇用を支え、個人消費が成長をけん引した。中国を中心としたアジアのサプライチェーンの混乱が、欧州市場に近接するトルコの輸出産業に好影響をもたらした。また、ロシアによるウクライナ侵攻に対して、トルコはNATO加盟国でありながら欧米の制裁に参加することなく、仲介姿勢をもって、エネルギーおよび商品物流の代替ルートを提示するなど、外交では独自路線を見せた。観光部門もロシアCIS地域からの観光客が急増したこともあり好況を呈し、コロナ禍前の水準へ回復を見せた。

この結果、実質GDP成長率は5.5%の高成長を実現した。しかし、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領が実践する、輸出・生産・雇用を優先するための低金利政策、すなわち「新経済政策」は、マクロ経済の不均衡を拡大させており、2022年の消費者物価指数(CPI)上昇率は10月(前年同月比85.5%)をピークに、前年比64.3%まで高騰した。政府はこれに対して、2022年から2023年7月にかけ最低賃金を4度にわたって引き上げるなどして対応した。

表1 トルコの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 11.4 5.5 7.8 7.6 4.1 3.3 3.9
階層レベル2の項目民間最終消費支出 15.4 19.0 19.8 21.7 19.6 15.9 17.3
階層レベル2の項目政府最終消費支出 3.0 4.2 4.3 1.7 3.8 6.5 6.1
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 7.2 1.3 2.8 3.8 △1.8 0.6 3.7
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 25.1 9.9 17.0 18.8 11.7 △3.3 △2.6
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 1.7 8.6 2.8 6.5 13.3 10.4 14.2

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

他方、トルコ中央銀行は2022年8月以降、政策金利(1週間物レポ金利)を引き下げ続け、2023年2月時点で8.5%とした。そのため実質的なマイナス金利は拡大し、海外からの投資意欲は大きく減退した。また、為替市場でのトルコ・リラ(以下リラ)の下落は、対ドルで2021年の45%に続き、2022年は28%の減価となった。為替の下落は続いており、2023年7月時点ですでに年初から28%の減価となっている。

2023年第1四半期のトルコ経済は、2月にトルコ南東部で大規模な地震が発生したが、前年同期比3.9%の成長を遂げ、5月の大統領選挙および議会選挙におけるエルドアン大統領の勝利への追い風となった。また、2018年に立ち上げ、22年末に量産を開始したトルコ国民車TOGG(乗用車)の電動スポーツ用多目的車(SUV)「T10X」の受注、販売を開始するなど、産業面でも進展がみられた。他方、インフレ率(CPI上昇率)は2023年6月時点で前年同月比38.2%となお高く、リラの減価や外貨準備高の減少は、政府に経済政策の見直しを余儀なくさせた。選挙後、エルドアン政権は、経済担当閣僚および中銀総裁を刷新し、政策金利も25%(2023年8月24日段階)に引き上げ、金融引き締めの方向にかじを切った。

貿易 
貿易赤字は倍増

2022年の貿易は、輸出が前年比12.9%増の2,541億7,000万ドル、輸入は34.0%増の3,637億1,100万ドルで、輸入超過により貿易赤字は2.4倍の1,095億4,100万ドルとなった。リラ安で輸出競争力が高まった半面、輸入エネルギーコストも上昇し、輸入の伸びが輸出を上回った。

輸出を品目別にみると、鉱物性燃料が92.9%増で最大の伸び率となった。そのほかには、プラスチック製品、電気機器、一般機械、自動車・同部品などが伸びた。一方、上半期に好調だった鉄鋼は、世界的な需要減もあり下半期に減少し、通年では14.0%減となった。

表2-1 トルコの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車・同部品 25,022 26,801 10.5 7.1
一般機械 20,775 22,672 8.9 9.1
鉱物性燃料 8,507 16,411 6.5 92.9
鉄鋼 17,063 14,671 5.8 △ 14.0
電気機器 12,011 13,704 5.4 14.1
プラスチック製品 10,015 11,572 4.6 15.5
ニット衣類 10,781 11,006 4.3 2.1
鉄鋼製品 8,801 10,533 4.1 19.7
貴金属類 10,965 10,208 4.0 △ 6.9
非ニット衣類 7,513 8,458 3.3 12.6
アルミニウム・同製品 5,173 6,708 2.6 29.7
家具 4,787 5,260 2.1 9.9
果実・ナッツ類・豆類 5,367 4,943 1.9 △ 7.9
塩・硫黄・土石類・プラスター・セメント 3,418 3,815 1.5 11.6
合計(その他含む) 225,214 254,170 100.0 12.9

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

表2-2 トルコの主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 50,692 96,549 26.5 90.5
一般機械 30,967 34,574 9.5 11.6
鉄鋼 27,618 28,367 7.8 2.7
貴金属類 7,074 23,458 6.4 231.6
電気機器 19,964 21,535 5.9 7.9
プラスチック製品 17,590 18,976 5.2 7.9
自動車・同部品 15,596 17,678 4.9 13.4
有機化学品 9,341 11,120 3.1 19.0
アルミニウム・同製品 6,593 7,683 2.1 16.5
銅鉱・同製品 5,266 5,510 1.5 4.6
穀物 4,249 5,369 1.5 26.4
光学・精密機器 4,883 5,244 1.4 7.4
綿・綿糸・綿布 3,715 4,842 1.3 30.3
医療用品 6,875 4,560 1.3 △ 33.7
合計(その他含む) 271,426 363,711 100.0 34.0

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

国・地域別の輸出では、全体の40.5%を占めるEU(EU27からキプロスを除く)向けが前年比10.7%増となったが、欧州市場の減速もあり、上半期の前年同期比21.7%増からは大きく鈍化した。国別では、ドイツ(9.5%増)が首位、次いで米国(14.7%増)、第3位のイラク向けが23.6%増と好調だった。最大の寄与度となったのはロシアで、伸び率は61.8%増だった。

輸入を品目別にみると、最大の輸入品目の鉱物性燃料は、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰とリラ安の影響で前年比90.5%増となり、金を主体とする貴金属類(3.3倍)とともに、貿易赤字の主因となった。また、綿・綿糸・綿布、穀物、有機化学品などが好調だった。

国・地域別の輸入では、天然ガスを主力とするロシアからの輸入が前年比2倍に急伸している。中国が28.3%増、インドが34.8%増となったほか、金需要の増加でスイスが5倍となった。EUからの輸入は9.3%増だった。

なお、トルコは2022年2月にウクライナとの自由貿易協定(FTA)に署名(2023年8月時点で未発効)した。また、2023年3月にアラブ首長国連邦(UAE)と包括的経済連携協定(CEPA)に署名し、同年6月に批准(2023年8月時点で未発効)した。

対内・対外直接投資 
対内直接投資は低迷

中銀発表の国際収支統計によると、2022年の対内直接投資(株主資本、フロー)は、前年比4.3%減の67億9,100万ドルとなった。地域別では、全体の67.4%を占めるEU(EU27からキプロスを除く)からの投資額が前年比97.0%増と好調だった。国別の投資額では、スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア(BBVA)銀行によるガランティ銀行の株式買い増しや、フェロビアルによるダラマン空港買収(60%株式)などで、前年比27.5倍で首位となり、次いでオランダが15.4%増、スイスが41.7%増、ドイツが45.5%増と欧州勢が上位を占めた。他方、前年好調だった英国が71.2%減、米国が78.3%減と低迷した。中東からは、2021年に関係を改善し7.6倍と急増したUAEが39.2%減となり、中東全体でも54.5%減と低迷した。アジアからは台湾が2.2倍と好調だった。台湾からの投資案件では、2019年に進出したステンレス鋼製品のYCイノックス(允強実業股分有限公司)が、新工場の建設を始めている。また、中国の開山集団が、オランダに拠点を置きトルコに子会社を持つトランスマーク・リニューアブルのギュルプナル地熱発電所に投資している。他方、中国のスマートフォンメーカーのオッポは、2021年にイスタンブール県トゥズラ市に設立した組み立て工場を2023年5月に閉鎖した。

表3 トルコの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、株主資本、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域名 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU27(注) 2,325 4,580 67.4 97.0 2,108 2,713 55.6 28.7
階層レベル2の項目スペイン 58 1,592 23.6 2644.8 71 39 0.8 △45.1
階層レベル2の項目オランダ 749 864 12.7 15.4 1,394 1,931 39.6 38.5
階層レベル2の項目ドイツ 479 697 10.3 45.5 212 366 7.5 72.6
階層レベル2の項目アイルランド 221 371 5.5 67.9 0 5 0.1
階層レベル2の項目ルクセンブルク 368 295 4.3 △19.8 95 64 1.3 △32.6
階層レベル2の項目イタリア 40 260 3.8 550.0 55 26 0.5 △52.7
階層レベル2の項目オーストリア 94 193 2.8 105.3 7 36 0.7 414.3
階層レベル2の項目フランス 127 174 2.6 37.0 23 32 0.7 39.1
英国 1,392 401 5.9 △71.2 296 211 4.3 △28.7
スイス 521 738 10.9 41.7 180 65 1.3 △63.9
ロシア 3 24 0.4 700.0 45 26 0.5 △42.2
米国 1,180 256 3.8 △78.3 1,345 1,181 24.2 △12.2
中東 791 360 5.3 △54.5 298 336 6.9 12.8
階層レベル2の項目UAE 449 273 4.0 △39.2 243 273 5.6 12.3
階層レベル2の項目カタール 150 11 0.2 △92.7 2 4 0.1 100.0
階層レベル2の項目アゼルバイジャン 150 2 0.0 △98.7 25 9 0.2 △64.0
アジア 826 414 6.1 △49.9 168 129 2.6 △23.2
階層レベル2の項目台湾 51 112 1.6 119.6 0 0 0.0
階層レベル2の項目中国 88 83 1.2 △5.7 29 16 0.3 △44.8
階層レベル2の項目日本 222 80 1.2 △64.0 3 1 0.0 △66.7
階層レベル2の項目韓国 344 59 0.9 △82.9 0 1 0.0
階層レベル2の項目カザフスタン 4 0 0.0 83 32 0.7 △61.4
階層レベル2の項目ウズベキスタン 0 0 0.0 24 24 0.5 0.0
合計(その他含む) 7,098 6,791 100.0 △4.3 4,620 4,879 100.0 5.6

〔注〕EU27カ国からキプロスを除く。
〔出所〕トルコ中央銀行

業種別では、例年通りサービス部門のシェアが高く、全体の67.0%を占める。卸・小売業が前年の急増(約4.2倍)から前年比52.7%減に転じたことなどを受け、サービス部門全体では10.8%減となった。しかし、金融・保険業は前年の不振から10倍以上の回復を見せている。製造業は全体で4.0%減だったが、食品・飲料は3.5倍、コンピュータ・電気・電子機器・精密機器が81.5%増と好調だった。電力・ガス供給も2.8倍と前年同様に伸ばしている。

2022年のM&A案件では、上述のスペインからの投資案件に加えて、スタートアップでは日用品配送プラットフォームのゲティル(アブダビ政府系ファンドのムバダラ・インベストメントが主導)や、ゲーム関連が好調だった。また、UAE・アブダビ首長国のIHCによるカリヨン・エナジー(再生可能エネルギー)の株式50%買収、カタール投資庁(QIA)によるイスタンブールのユーラシア・トンネル運営建設投資(韓国系)の株式24.5%買収、同ド・リーム・グループ(レストラン事業)の株式20%買収など、湾岸諸国からの買収案件は過去5年間で最高金額に達している。

トルコの対外直接投資は、前年比5.6%増の48億7,900万ドルだった。地域別ではEU向けが前年比28.7%増となった。国別では、税制優遇で有利なオランダへの投資が前年比38.5%増となり首位を堅持した。欧州向けではブルガリア(2.9倍)、モンテネグロ(2.5倍)、ギリシャ(2.5倍)、マケドニア(2倍)といったバルカン諸国向けが好調だった。また米国向けは12.2%減となった。中東・北アフリカでは関係改善が進んでいるUAE(12.3%増)、エジプト(3.2倍)向けの投資が目立った。アジアでは近年カザフスタン、ウズベキスタンへの投資が活発で、中国、バングラデシュ、インドが続く。業種別では、不動産業(50.4%増)、金融・保険業(33.0%増)を中心にサービス部門が16.0%増と好調だった。製造業は、食品・飲料が1.2%増。繊維・繊維製品が13.2%増だったが、全体では6.6%減になった。

対日関係 
日本からの輸出は前年並み

日本の財務省「貿易統計(通関ベース)」でトルコとの貿易をみると、2022年は輸出が32億3,320万ドル(前年比1.4%増)、輸入が10億3,217万ドル(27.3%増)だった。貿易黒字は、2021年より7.5%減少し、22億103万ドル となった。

輸出は、前年低調だった輸送用機器が、乗用車(前年比79.5%増)を中心とする自動車が2桁の回復を見せ好調だった。また、全体の28.3%を占める一般機械は、原動機が35.8%減だったものの、繊維機器が32.9%増、建設用・鉱山用機械が8.9%増、電算機類および同部分品、荷役機械の3桁増などから、4.4%増となった。

輸入では、最大の構成比(41.7%)を占める食料品が前年比57.9%増だった。特にマグロを中心とする魚介類は74.8%増と伸ばしている。パスタを主力とする穀物類 も53.3%増と回復し、鉄鋼も2.8倍と好調だった。他方、全体の12.1%を占める衣類・同付属品は前年比8.7%減と振るわなかった。

表4-1 日本の対トルコ主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機械 877 916 28.3 4.4
階層レベル2の項目建設用・鉱山用機械 215 234 7.2 8.9
階層レベル2の項目繊維機械 98 131 4.0 32.9
階層レベル2の項目原動機 191 123 3.8 △ 35.8
階層レベル2の項目金属加工機械 115 120 3.7 4.0
階層レベル2の項目ポンプ・遠心分離機 82 82 2.5 0.5
輸送用機器 572 608 18.8 6.3
階層レベル2の項目自動車の部分品 387 318 9.8 △ 18.0
階層レベル2の項目自動車 165 273 8.4 65.3
電気機器 674 608 18.8 △ 9.8
階層レベル2の項目電池 219 192 5.9 △ 12.3
階層レベル2の項目重電機器 154 154 4.8 △ 0.4
階層レベル2の項目電気計測機器 99 81 2.5 △ 18.6
原料別製品 646 656 20.3 1.4
階層レベル2の項目鉄鋼 479 482 14.9 0.6
階層レベル2の項目金属製品 63 66 2.0 3.7
化学製品 214 225 7.0 5.3
階層レベル2の項目プラスチック 75 77 2.4 2.3
階層レベル2の項目有機化合物 57 71 2.2 24.5
合計(その他含む) 3189 3,233 100.0 1.4

〔出所〕 財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

表4-2 日本の対トルコ主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
食料品 272 430 41.7 57.9
階層レベル2の項目魚介類 108 188 18.3 74.8
階層レベル2の項目穀物類 41 63 6.1 53.3
階層レベル2の項目果実 51 61 5.9 21.3
階層レベル2の項目野菜 26 30 2.9 13.5
その他 180 171 16.6 △ 5.0
階層レベル2の項目衣類・同付属品 137 125 12.1 △ 8.7
階層レベル2の項目バッグ類 12 17 1.6 40.6
原料別製品 93 139 13.4 48.6
階層レベル2の項目鉄鋼 26 72 7.0 180.3
階層レベル2の項目織物用糸・繊維製品 36 35 3.4 △ 2.0
階層レベル2の項目金属製品 10 13 1.2 26.5
一般機械 74 75 7.2 0.8
階層レベル2の項目原動機 40 33 3.2 △ 17.0
化学製品 48 65 6.3 34.0
階層レベル2の項目医薬品 22 22 2.1 0.3
輸送用機器 62 63 6.1 0.7
階層レベル2の項目自動車 31 29 2.8 △ 7.5
階層レベル2の項目自動車の部分品 25 27 2.7 10.9
合計(その他含む) 811 1,032 100.0 27.3

〔出所〕 財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

日本からの投資額は鈍化

トルコの国際収支統計で、日本のトルコ向け直接投資 (株主資本インフロー)をみると、2022年は前年比64.0%減の8,000万ドルと、2009年以来最低の水準に冷え込んだ。案件としては、東洋鋼鈑とトスヤル・ホールディングの合弁会社トスヤルトーヨーが、2022年8月にオスマニエ工場のブリキ生産増強に向けた投資を発表している。さらに2023年3月には、同工場での太陽光発電施設の建設を発表した。また、自動車関連でも活発な動きがみられ、2022年4月にGSユアサがマニサ県の持分法適用関連会社IGYAの株式10%を追加取得し子会社化した。同年10月には、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ターキー(TMMT)が、サカリヤ県の工場でハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)バッテリーの新規生産投資を行うと発表した。また同月、自動運転ソフトウエア開発のティアフォーが、自動運転スタートアップのレオドライブに出資した。

2023年に入ってからも自動車分野の投資案件は多く、3月に丸紅が傘下のテムサ・イシュ・マキナラルを完全子会社化し、社名を丸紅流通サービスに変更したことを発表した。丸紅流通サービスは、コマツやボルボ・トラックなどの販売代理店となっている。また、5月にアナドールいすゞが、トルコの自動車部品メーカーであるFZKエンジニアリングのカーカス(タイヤの骨格を形作るコード層の部分)生産事業を買収し、6月には三菱自動車工業が小型自動車「コルト」をアライアンスパートナーであるルノーのブルサ工場で生産、販売すると発表した。また、2010年にトルコで子会社を設立した空気圧制御機器メーカーのSMCは、6月に本社・工場の開所式を行った。

基礎的経済指標

人口
8,528万人 (2023年2月、暫定値)
面積
78万3,562平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
1万618 米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) 1.8 11.4 5.5
消費者物価上昇率 (%) 14.6 36.1 64.3
失業率 (%) 13.1 12.0 10.4
貿易収支 (100万米ドル) △49,879 △46,221 △109,539
経常収支 (100万米ドル) △31,888 △7,232 △48,387
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 49,958 71,046 82,904
対外債務残高(グロス) (100万ドル、期末値) 429,177 437,280 458,698
為替レート ( 1 米ドルにつき、リラ、期中平均) 7.01 8,85 16.56

出所:
人口、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支:トルコ統計機構(TUIK)
面積:CIA The World Factbook
1人当たりGDP:IMF「世界経済見通し(2023年4月)」
経常収支、対外債務残高(グロス):トルコ中央銀行
外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF(2022年のみトルコ中央銀行)