中古車の現地輸入規則及び留意点:オーストラリア向け輸出

質問

オーストラリアへ中古車を輸出する際の現地での輸入規則と輸入手続きについて教えてください。

回答

オーストラリア輸入時に道路車両基準法(RVSA: The Road Vehicle Standards Act 2018)に基づき、オンラインシステムでの輸入許可申請が必要です。申請時にオーストラリア・デザイン・ルール(ADR)を満たしていること等を示す必要があります。

I. 規制概要

オーストラリアで走行する自動車は、連邦レベルと州レベルで規制されています。連邦インフラ・地域開発省が主導するオーストラリア・デザイン・ルール(Australian Design Rules: ADR)では、車種ごとの安全・防犯及び排ガス基準を定めています。州レベルでは、ADR成立以前から独自の制度を施行しており、ADR成立後は既存の制度をADRに則ったものに順次改定しています。ADRはまた国際規格(UNECE規格)を反映したものであるため、国際規格の変更によって随時更新されます。

ADRでは車種をLカテゴリー(二輪車・三輪車)、Mカテゴリー(乗用車)、Nカテゴリー(貨物車)、Tカテゴリー(トレイラー)の4つに分け、それぞれブレーキ、インジケーター、ランプ、ドア、シート、シートベルトなどの構造的基準、騒音、排ガス、燃費などの環境基準、子供の乗車、ポジショニング、衝撃(緩和)性などの安全性基準を定めています。

輸入した自動車は、各州の関係機関で車両登録申請が必要です。登録には各州が定める自動車規格に適合していなければなりません。大部分はADRに基づいた規格となっていますが、各州で異なったものもあります。

II. 輸入許可申請

2021年7月1日に、旧式の自動車基準法(MVSA)に代わり新たに道路車両基準法 (RVSA: The Road Vehicle Standards Act 2018) が導入されました。この法改正は、旧法のMVSAが設定された1989年以降最大の抜本的改正となります。道路車両基準法及びその他の関連法は、総称して道路車両基準 (RVS) 法と呼ばれます。

RVS法に基づき、オーストラリアの道路で使用される車両は、オンライン データベースである RAV(Register of Approved Vehicles )への登録が必須となりました。 輸入車両がRAVに登録されるためは、車両型式承認(Vehicle type approvals)または一台ごとの承認(Concessional RAV entry approvals)のいずれかの承認を取得する必要があります。

2021年7月よりRAVへの登録を含めRVS法に基づく様々な申請は、オンライン サービス ・ROVER外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (Road Vehicle Regulator)にて行う必要があります。
ROVERの機能は下記のとおりです。

  • 申請書の提出と支払い
  • 申請の進捗状況の監視
  • 申請に関する質問への対応
  • 決定結果の通知(審査は、最大60営業日かかる場合があります)
  1. 車両型式承認(Vehicle type approvals)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    車両型式承認(Vehicle type approvals)は、同一メーカー・同一モデル(または型式)の車両を無制限に輸入したい場合の認証方法です。車両型式承認が得られれば、その型式の車両をオーストラリア市場に無制限に供給することが可能になります。この承認方法は通常商業輸入要件に使用されます。ただし、車両や部品がオーストラリアの各種基準を満たしていることの立証や、車両・部品の設計図や製造工程に関する情報へのアクセス許可、そして製造施設の立ち入り検査を許可できることなどが必要条件となっています。
    すでに許可された車両形式と当該許可の所有者に関しては、ROVERのウェブサイト(List of road vehicle type approvals)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから検索可能です。
  2. 一台ごとの承認(Single Road Vehicle Approval)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    一台ごとの承認方法には、次の3つの承認形式があります。なお、少量輸入(同一車種30台まで、トレーラーであれば4台まで)であれば、一度の承認申請時に含めることができます。
    1. コンセッション承認(Concessional RAV entry approvals)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
      自動車収集家や移民等、以下のような特殊事情がある車両に対して用いられる承認形式です。
      • 輸入後、認可工場において改造される予定の車両
      • 25年以上前の車両(自動車収集家向けのクラシックカー等)
      • オーストラリアへの移民や、一定期間後にオーストラリアに帰国するオーストラリア国民が持ち込む個人車両
    2. 非RAV エントリー輸入承認(Non-RAV entry import approvals)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
      特定の目的または限られた期間のみ輸入され、公道での使用が意図されていない、またはごく限られた場合しか公道で使用されない車両(レースや広告、公共の場で展示するもの)やホットロッド(大規模改造車)などは、非RAV エントリー輸入承認を求めることができます。
    3. 逆輸入承認(Reimportation import approvals)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
      以前に車両をオーストラリアから輸出したことのある所有者は、その車両をオーストラリアに持ち帰ることができます。車両は RAVに搭載されているか、以前の法律 (MVSA) に基づく承認を取得している必要があります。

III. 輸出手続き

日本からの輸出に必要な書類はジェトロ貿易・投資相談Q&A「 中古車輸出の際の必要書類と手続き 」を参照ください。

IV. 中古車の輸入関税率、内国税の種類と税率

中古乗用車の関税率は、5%です。中古車1台当たり1万2,000豪ドルかかっていた特別税は2018年1月に撤廃されました。

内国税の種類と税率は以下のとおりです。

  1. 財・サービス税(GST)
    課税価格(Customs Value)及び関税等諸税の合計額の10% 。障害者用自動車には特例としてGSTは課税されない場合があります。
  2. 奢侈自動車税(Luxury Car Tax: LCT)
    LCT課税価格(課税価額、関税、GST等の合計額)がLCT基準額(2023/2024年度 7万6,950豪ドル)を超える自動車(2トン未満・9座席未満、トラック・バス等の商用車を除く、リムジンは含む)に対し、「LCT課税価格のLCT基準額を超えた分からGSTを除いた金額の33%」がLCTとして課税されます。また、低燃費車(燃料消費量が100キロ当たり7リットル以下)に関しては、8万9,332豪ドルのLCT基準額が適用されます。
    • LCT=(LCT課税価格-LCT基準額76,950豪ドル)×10/11×33%
    • 低燃費車LCT=(LCT課税価格-低燃費車LCT基準額89,332豪ドル)×10/11×33%
    例: LCT課税価格(関税課税価格・関税・GST等の合計額)が94,000ドルの低燃費車の場合
    低燃費車LCT = ($94,000 – $89,332) x 10/11 x 33% = $1,400※式中の10/11はGST分を除くことを意味しています。

また、下記の場合輸入時におけるLCT課税は免除されます:

  1. GST登録済みの事業者が、自らによる使用以外の目的(主に再販目的を想定)で輸入する場合はそのABNを申告することでLCT課税を販売時まで留保させることが可能です(なお、輸入時点から2年経過すると再販時にLCTの課税対象ではなくなります。)
  2. 消防・警察・救急などの緊急車両
  3. 身体障碍者向けの改造を施した車両(当該改造にかかる部分の金額のみ免除される)
  4. モーターホーム、キャンパーバン、及び主に乗客ではなく貨物の運搬を目的とする商用車
  5. 1995年税関法のスケジュール4の10, 11, 15, 18, 21 or 24に該当する場合(主に外交公館などの外国政府機関や軍隊が所有・使用する車両、及び飛行機・船舶の乗組員の2つの場合)

V. 輸入通関、登録手続き

ROVER申請後の輸入・通関手続きは以下のとおりです。

  1. 輸入許可書の入手
    ROVER申請後、承認された旨のメールを受信します。承認には車両の使用条件が含まれる場合があります。
  2. 車両の発送手配
    出荷前に車両の内側と外側をスチーム洗浄して、検疫上のリスクを引き起こす可能性のある物質の除去が必要です(検疫については、VI.1.参照)。
    出荷前に、エアコンガスが除去されていることを確認します。
    必要に応じてアスベストの検査と除去を手配します。
  3. 通関手続
    通関申告を行います。
    関税と、物品サービス税 (GST) 、該当する場合は奢侈自動車税(LCT)を支払います。
    アスベストが付着していないことを確認します。
  4. オーストラリアの検疫要件の確認
    オーストラリアの農林水産省に検疫を申請します。
    検査予約の手配をします。(本人またはブローカーの立ち会いが必要な場合があります)(検疫については、VI.1.参照)
  5. 輸入承認条件に沿った追加手配
    • 車両の改造を手配します。
    • テストを実施し、コンプライアンス適合証明書を手配します。
    • 再度登録車両データベース(RAV)への登録申請を行います 。
  6. 登録
    関連する州の自動車登録窓口で、車両の登録(ナンバープレート取得)を申請します。

VI. その他の留意点

  1. 検疫
    輸入車両が、オーストラリアにバイオセキュリティ上のリスクをもたらさないことを確認するのは、輸入者の責務となります。また、自動車の汚染状態の確認については、外装と内装に分けたチェック項目の確認が必要です。
    中古車は、オーストラリア到着時に車両外部及び内部検査の対象となります。ただし輸出前に、オーストラリア政府が認可した事前検査業者による車両内部と外部の洗浄及び事前検査を受けた中古車は、オーストラリア到着時の検査が軽減されます。
    政府が認可したオフショア中古車事前検査業者のリストは、同省のウェブサイトで確認できます。
    オーストラリアに車両が到着後、指定された場所でバイオセキュリティ担当者による検査を受ける場合があります。もし汚染が発見された場合、輸入者または所有者の費用負担で以下の処置が施される可能性があります。
    • 洗浄や薫蒸
    • 汚染がひどい状態で到着した場合、輸出元国へ差し戻し
    • 廃棄
    また、バイオセキュリティ担当者が内部まで検査できるように、自動車の鍵の提供を求められます。
  2. フロンガス
    代替フロン(HFC・HCFC(CFC))をはじめ、オゾン層破壊物質(ODSs・SGGs)を使用しているエアコンや冷蔵庫の輸入は規制されています(Ozone Protection and Synthetic Greenhouse Gas Management Act 1989)。
    中古車にオゾン層破壊物質(ODSs・SGGs)や代替フロンを使用したエアコンが装着されている場合は、輸入にあたって機器ライセンス(EQPL)の申請が必要になる場合があります。以下の場合は申請が免除される可能性があります。
    • 個人使用の場合
      輸入以前に12ヶ月以上所有しており、オーストラリア国内での個人使用または国内での使用を目的として輸入される場合は機器ライセンスの申請が免除されます。
    • 1996年以前に製造された車両でHFC-134aが含まれていない場合
      機器ライセンスを申請する必要はないが、車両の空調システムが HFC 冷媒を使用するように変更されており、冷媒が含まれていないことを証明した書類、請求書、作業指示書、またはその他の明細書の提出を求められる可能性があります。
  3. アスベスト
    アスベストを含有する部品を使った車の輸入は禁止されています。(Customs(Prohibited Imports)Regulations 1956)

関係法令

参考資料・情報

車両登録についての各州の情報
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南オーストラリア州外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
タスマニア州外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
インフラ・地域開発省:
Importing a road vehicle into Australia外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
8 steps to importing a vehicle外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
個人輸入オプション(Personal Imports Option)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Guide to the RAV for vehicle type approval holders外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
環境:エネルギー省:
エアコンガスに関する情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
HCFC及びCFC冷凍空調機器の輸入禁止外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省:
車両輸入時の検疫外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中古車両のオフショア事前検査業者リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
New vehicle pre-loading biosecurity risk guide外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
内務省(連邦税関):
Importing a motor vehicle外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Current tariff classification外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
財務省課税局:
Luxury Car Tax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2016年9月
最終更新:2023年8月

記事番号: A-001227

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