中国におけるPE課税

質問

恒久的施設(Permanent Establishment: PE)の定義と課税について教えてください。

回答

PEとは、主に税収協定締約国間の課税権を解決するための概念で、外国企業が中国国内に設立した営業のすべてまたは一部を行う定着した場所を意味します。

I. 恒久的施設(Permanent Establishment: PE)の定義

PEの認定には、通常、次の3つの要素が考慮されます。

  1. 営業場所(建物、土地など)を有している
  2. 上記1の場所は定着したもの、すなわち1つの確定した地点として設立されたものでなければならない
  3. 企業が当該場所で営業活動を行っている

通常、中国に設⽴された管理機関、⽀店、事務所、出先機関、⼯場、作業現場、天然資源を採取する場等がPEと認められます。また、⾮居住者企業が従業員またはその他の⼈員を通じて、中国国内で1つの事業または2つ以上の関係事業についてコンサルティング労務を提供する場合も、⼀定の期間(⽇中租税条約では、12カ⽉間に連続または累計で6カ⽉を超える場合。なお⽇中租税条約では、「6カ月」と規定していますが、国家税務局公告2018年11号により、「6カ月」は「183日」であると解釈されます。)を超えればPEと認定されます。なお、上記の施設を有してもそこで⾏われる活動内容が企業の物品・商品の保管、展⽰、引き渡しや現地での情報収集である場合はPEには該当しません。

II. PEの課税

恒久的施設と認定された場合の課税対象となる税は以下のとおりです。一度、PEと認定された企業の課税義務は、通常、非居住者企業より高くなります。

  1. 企業所得税

    ⼀般には、利益査定の⽅法で課税されます。すなわち、「課税額=営業収⼊ × 査定利益率 × 25%」となります。利益査定率は、税務主管機関がPEと認定された企業の業界の特徴、具体的な業務内容等に基づき総合的に判断します。

  2. 外国籍従業員の個人所得税

    PEと認定され、かつ利益査定率に基づき企業所得税を納付した場合は、外国籍従業員は中国での滞在⽇数に応じて個⼈所得税を納付しなければなりません。通常、滞在⽇数が183⽇以下の場合、個⼈所得税の納付は免税されますが、PEを有する場合は183⽇以下であっても課せられます。

III.「⾮居住者企業が⼈員を派遣して中国国内において労務を提供する際の企業所得税の徴収に関する問題についての公告」の影響

2008年の新企業所得税法実施以来、各地の税務機関は⾮居住者企業の企業所得税に対する管理を強化しました。ただし、⾮居住者企業が国内企業、主に関係企業に⼈員を派遣して国内企業の上級管理職等の職務を担当させ、かつ国内企業が派遣⼈員に賃⾦、給与および管理費等を⽀給することについて、その⾮居住者企業がPEに該当するか否かを税務機関が把握することは困難です。そのため、国家税務総局は、「⾮居住者企業が⼈員を派遣して中国国内において労務を提供する際の企業所得税の徴収に関する問題についての公告」(以下、「公告」といいます)を公布し、⾮居住者企業が中国に⼈員を派遣する際のPEの認定の問題点を明確にし、規範化しました。⾮居住者企業が中国に⼈員を派遣する際に以下の要素に該当する場合、PEに該当する可能性があります。

  1. 基本的判断要素
    1. ⾮居住者企業が派遣⼈員の業務成果に対して責任およびリスクの⼀部または全部を負担する。
    2. ⾮居住者企業が派遣⼈員の業務業績を考査する。
  2. 参考要素
    1. 派遣先企業が派遣元企業に管理費、サービス費などの名⽬で⾦銭を⽀払っている。
    2. 派遣先企業が派遣元企業に⽀払った⾦銭の⾦額が、派遣元企業が⽴て替えて⽀払った派遣⼈員への賃⾦、給与、社会保険費およびその他の費⽤の額を超えている。
    3. 派遣元企業が、派遣先企業が⽀給した関係費⽤を全て派遣⼈員に⽀給せず、⼀部の⾦銭を留保している。
    4. 派遣元企業が負担する派遣⼈員の賃⾦、給与の全額について中国で個⼈所得税が納付されていない。
    5. 派遣元企業が、派遣⼈員の⼈数、職務資格、賃⾦基準および中国国内の勤務場所を確定している。

人員派遣が株主権利を行使するためだけである場合(非居住者企業を代表して株主会に参加する場合など)はPEには見なされません。

IV. 企業の注意点

「公告」の公布後、多国籍企業の多くは、PEと認定されることを避けるため、国内企業と⾮居住者企業が派遣した従業員との間で労働契約を締結する⽅法により、形式上、⾮居住者企業による派遣⼈員業務の管理を回避しています。ただし、実務上、主管税務機関は「形式より実質を重視」する原則を採⽤しており、⾮居住者企業が派遣⼈員の業務を実質的に管理していることが発覚すれば、当該⾮居住者企業はPEと認定される可能性があります。

関係機関

関係法令

中国中央人民政府:
企業所得税法(中国主席令「2007」第63号、2008年1月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
企業所得税法実施条例(中国国務院令「2007」第512号、2008年1月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国国家税務総局:
国家税務総局による税収協定恒久的施設の認定等の問題に関する通知(国税発「2006」35号、2006年3⽉14⽇施⾏)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
非居住者企業が人員を派遣して中国国内において労務を提供する際の企業所得税の徴収に関する問題についての公告(国家税務総局公告2013年第19号、2013年6月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
租税協定執行の若干問題に関する公告(国家税務局公告2018年第11号、2018年4月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
外務省:
日中租税条約(1984年6月9日公布)PDFファイル(0.98MB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2013年11月
最終更新:2019年9月

記事番号: C-131102

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