サービス業での進出:インド

質問

インドにサービス業で進出する際に必要な規制や許認可について教えてください。

回答

ここではサービス業のうち、人材派遣・紹介(人材サービス)業、学習塾(コーチング機関)等非公式教育産業、理容・美容業を例に説明します。

インドでは、上記3種のサービス業への外国投資に関する出資規制はありません。外資出資比率100%であっても認可されます。会社設立手続きに関する基本情報は、文末の「外国企業の会社設立手続き・必要書類」を参照ください。

I. 各サービスに共通する事項

いずれのサービス業も以下の法律を順守する必要があります。

  1. 中央政府による労働および労働福祉に関する規則

    以下の法律は中央政府が制定し、各州政府が採用し、拡大適用または改正する権限を持っています。2019年に労働関連に関わる中央法が大幅に改正され、複数存在した法律が4つに集約されました。一般的に、ブルーカラーとされる職種は労働法で管理、ホワイトカラーは各社の就業規則や雇用契約書で管理されます。

    • Code on Wages,2019:賃金法案。最低賃金、賞与支払いなどが規定されています。
    • Occupational Safety, Health and Working Conditions Code,2020:労働安全衛生および労働条件法案。衛生条件や州間の移民労働者に関連する事項が規定されています。
    • Industrial Relations Code, 2020:労使関係法案。産業紛争や組合に関する事項が規定されています。
    • Code on Social Security,2020:社会保障法案。従業員積立基金、従業員国家保険、出産給付金や退職金について規定されています。
  2. 州による規制
    店舗および施設法(The Shops and Commercial Establishment Act)により、店舗および商業施設の労働条件および雇用条件が規制されています。また、通常、それぞれの管轄区域内の登録、開店・閉店時刻、労働時間、休日、健康・安全対策、超過勤務に対する賃金等の義務が規定されています。
  3. 営業許可(事業ライセンス)の取得
    事業開始に当たり、各地方自治体から営業許可を取得する必要があります。申請に必要な書類や手数料は、自治体により異なります。
  4. 物品・サービス税(Goods and Services Tax: GST)登録

    2017年に物品・サービス税(Goods and Services Tax: GST)が導入され、従来のサービス税や中央物品税などがGSTに統合されました。

    事業者は課税対象のサービスに対してサービス税が発生した日から30日以内、または申請者の活動開始日から30日以内に、管轄区域のGST登録局にサービス事業者のGST登録申請を行う必要があります。複数の州で事業を展開する場合には、全ての州で登録が必要です。
    税率は0~28%で、サービスによって異なります。教育サービス(分類9992)、人材派遣サービス(分類9995)、美容サービス(分類9997)はいずれも18%となります。

II. 業種別の規制および参入形態

  1. 人材サービス業
    1. Contract Labour(Regulation & Abolition Act, 1970)の遵守
      「20名以上の労働者を請負労働者として雇用、または過去12カ月のいずれかの日に雇用していたすべての施設」、「20名以上の労働者を雇用している、または過去12カ月のいずれかの日に雇用していたすべての請負業者」が適用対象です。すべての請負業者は、労働雇用省(Ministry of Labor and Employment)から免許を取得し、免許に基づいて業務を請負い、実行することが義務付けられています。請負業者は「主たる雇用主」として労働雇用省に登録しなければなりません。
    2. 人材紹介会社(Recruiting Agents: RA)としての登録
      海外での雇用を目的としてインド人を募集・採用するすべての人材紹介業者・施設は、外務省移住保護局長(Protector General of Emigrants, Ministry of External Affairs)が発行する登録証の取得が義務付けられています。ただし、派遣先の国によっては登録証が不要のケースもあります。インドの人材紹介会社で働く日本人は特別な技能資格を取得する必要はありません。
    3. 外資系人材サービス業の多くは、現地法人設立または支店開設という形でインド市場に参入しています。
  2. 非公式教育産業
    1. コーチング機関の登録
      ビハール州など一部の州では、開設を計画するコーチング機関は、在籍生徒数、指導科目、講師陣、生徒のニーズを満たすために利用可能な設備等の詳細情報を提供し、各自治体に登録申請することが義務付けられています。また、生徒に対して講座・料金体系の案内と講師が持つ資格と経験を明示しなければなりません。全国レベルでのコーチング機関を規定する法案Private Coaching Centres Regulatory Board Act, 2016が協議されていますが、施行には至っておらず、州レベルでの規定を遵守する必要があります。規定内容は州によって異なります。
    2. インドで非公式教育産業の講師として働くための教員免許等のライセンスは不要です。非公式教育産業では、外資系教育機関の多くは、フランチャイズ、100%出資の現地法人設立、インドのパートナーとの合弁会社設立等の形でインド市場に参入しています。
  3. 理容・美容業
    1. 事業許可
      理容・美容業は各自治体申請し事業許可を取得します。各自治体が管轄する基準の規定があります。
    2. インドの理容・美容業で勤務する日本人は、理容・美容にかかわる資格・免許を取得する必要はありません。外資系理容・美容業者の多くは、フランチャイズ、現地法人設立、ホテルや現地小売業者との提携により参入しています。

参考資料・情報

関係法令

インド労働雇用省
The Code on Wages 2019外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
The Occupational Safety, Health and Working Conditions Code,2020外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
The Industrial Relations Code, 2020PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(444KB)
The Code on Social Security,2020PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(444KB)
Contract Labour(Regulation & Abolition) Act, 1970外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ビハール州政府
The Bihar Coaching Institute (Control & Regulation) Act, 2010PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(205KB)
インド法務省
the Emigration Act, 1983外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
インド財務省
The Central Goods and Services Tax Act, 2017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.3MB)

参考資料・情報

インド財務省
GST Rate-Services外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Explanatory Notes to the Scheme of Classification of Services外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
インド外務省
Recruiting Agents (RAs)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ:
外国企業の会社設立手続き・必要書類

調査時点:2016年10月
最終更新:2021年2月

記事番号: J-131201

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