小口貨物の通関制度:シンガポール

質問

シンガポールの小口通関制度について教えてください。

回答

シンガポールで輸入を行うためには監督官庁から許可を取得する必要があります。しかし、一定額を超えない範囲ではライセンス不要で免税で輸入できます。

I. 少額免税制度の有無

以下の貨物は少額免税制度の対象です。

  1. 非管理品目が航空便で搬入される場合、CIF価格が400 シンガポールドル以下のものは輸入許可および財・サービス税(GST)納付が免除されます。一方、海上貨物・陸上貨物で搬入される小口貨物の少額免税制度はありません。
    非管理品目とは、他省庁の法令で管理されていない品目を指します。管理品目については、ジェトロのウェブサイト「基本的なシンガポールの輸出入制度」で「貿易管理制度」の項を参照ください。
  2. 貿易見本品、分析試験用標本、贈答品でCIF価格が400 シンガポールドル以下のものは輸入許可およびGST納付が免除されます。管理品目のうち、食品庁(Singapore Food Agency: SFA)が管理している魚介類〔ワシントン条約(CITES) 管理品目を除く〕、生鮮果実・野菜(中南米諸国原産のものを除く)、シンガポール企業庁(Enterprise Singapore: エンタープライズシンガポール)が管理している米などについても同様にCIF価格が400 シンガポールドル以下のものは輸入許可およびGST納付が免除されます。
  3. 国際郵便小包
    1. 非課税品目・非管理品目でCIF総額が 400 シンガポールドルを超えない国際郵便小包による輸入は、輸入許可およびGST納付が免除されます。シンガポールポスト(SP)より荷受人に配送され、荷受人は受け取り時点で仕入書(インボイス)を提示する必要があります。
    2. 管理品目でCIF総額が 400 シンガポールドルを超えない商業貨物(ビデオテープ、レーザーディスク、出版物など)の国際郵便小包による輸入は、GST 納付が免除されます。ただし、貨物(郵便小包)は管理品目の所轄省庁に転送されます。所轄省庁より召喚状を受け取った荷受人は、所轄省庁に出向き輸入ライセンスを提示の上、郵便小包を受け取ります。
    3. 課税品目および非課税品目でCIF総額が 400 シンガポールドルを超える国際郵便小包による輸入には免税措置はありません。郵便小包は入出国管理局(ICA)のシンガポールポストセンター(SPC)に保管され、召喚状を受け取った荷受人は、輸入許可を取得するとともに諸税を納付した上で荷物を受け取ります。
  4. 旅行者の個人用携行品
    以下の免除枠があります。
    1. 課税品目のうち、酒類の持ち込みには、個人消費目的のワイン、ビール、スピリッツの総量が 2 リットル(スピリッツは1リットル、ワイン、ビールは各2リットルが上限で組み合わせ)までは一般関税の免税措置(Duty-Free Concession)が与えられます。ただし、旅行者が18 歳以上で、48 時間以上シンガポール国外に滞在し、マレーシアを除く海外からの入国であることが条件です。GSTの免税措置(GST Relief)はありません。また、課税品目のうち、タバコ類および補助容器に入れた内燃機関用燃料の持ち込みについては、一切の諸税免税の措置がありません。
    2. 非課税品目に限り、新品、贈答品、食品などの持ち込みは、個人消費目的で、 商品の金額が 500 シンガポールドル(シンガポール国外の滞在時間が 48 時間以上の場合)または 100 シンガポール ドル(シンガポール国外の滞在時間が 48 時間未満の場合)を超えないものは、GSTの免税措置が与えられます。本規定は 2019 年 2 月 19 日以降、シンガポール人、永住権保有者、外国人旅行者など個人に適用されています。雇用許可書(EP)、ワークパーミット、家族帯同パス、長期滞在パスを所持する外国人には適用されません。また旅行者の携行品であっても、商業目的のものはすべて一般関税およびGSTの課税対象です。
    3. 投資適格貴金属(純度の高い金、銀およびプラチナ)の持ち込みについて、GST納付が免除されています。投資適格貴金属を持ち込むには、事前にGST納付免除許可を取得し、シンガポール到着時、レッドチャネル(申告品あり)の窓口で申告する必要があります。

II. 簡易税率制度の有無

シンガポールでは簡易税率制度はありません。

III. 個人・小口貨物の簡易通関制度

旅具通関制度として、個人が携行品として以下のものを持ち込む場合、レッドチャネルの窓口で簡略化された輸入申告フォームにより簡易通関できます。

  1. 0.4キログラム以下のタバコ類
  2. 10リットルを超えない酒類
  3. 車輛の補助容器に携行する10リットル以下の内燃機関用燃料
  4. 0.5キログラムを超えない個人使用目的の投資適格貴金属
  5. 商業目的の荷物でGST総額が300シンガポールドル以下のもの
  6. 貿易見本品(酒類・タバコ類を除く)としての表示が施され、課税価格が400 シンガポールドル以下のもの

上記の重量・容量・金額を超えるものについては、事前にシンガポール税関のWebページ、専用アプリを通じて輸入許可を取得して諸税を納付した上で通関します。

IV. 小口輸入・通関に際して注意すべきこと

  1. 他法令による個人輸入の数量制限(輸入ライセンスが免除される範囲)
    1. 医薬品
      医薬品の輸入は、所轄官庁である保健科学庁(HSA)から取得したライセンス保有者を介して行われなければなりません。ただし、特定の医薬品を必要とする観光客個人に対しては、以下の条件で携行品での持ち込みが認められます。
      1. 医薬品の量は3カ月の服用量を超えないこと
      2. 睡眠薬(Sleeping Pills)、抗鬱薬(Depressants)、覚醒薬(Stimulants)など「処方目的」の医薬品は、観光客の医療ニーズに対応していることを確認する医師の処方箋を所持していること
      3. 医薬品成分には国際法で規制されている麻酔薬(Narcotic Drug)や向精神性薬物(Psychotropic Substances)が含まれていないこと
    2. 化粧品
      2008年1月にASEAN化粧品指令(ASEAN Cosmetic Directive: ACD)が導入され、シンガポール国内で販売されるすべての化粧品の保健科学庁(HSA)への届出が義務付けられました。化粧品は輸入管理品目に指定されており、化粧品の輸入にはHSAの承認が必要です。ただし、HSAは個人使用目的の常識的な範囲内であれば、個人輸入や旅行者の携行品としての持ち込みを認めています。
    3. 食品
      旅行者が個人消費目的で一定量の食品を携行品としてSFAの輸入ライセンスなしに持ち込むことを認めています。SFAの輸入ライセンスなく持ち込める食品の種類や量は以下のとおりです。
      1. 肉類:総量で一人当たり5キログラムまで(牛肉、牛肉製品、豚肉、豚肉製品等。個人消費用で日本国内にて市販されている製品であること。鶏肉、鶏卵の携行品輸入は禁止されています)
      2. 魚介類:総量で一人当たり5キログラム(調理された冷凍カニまたは冷凍エビは2キログラム)まで(生牡蠣については日本からは三重県のみ認可されている)
      3. 生鮮野菜・果実(中南米原産品を除く):常識的な範囲まで
      4. その他の加工食品:総重量・容量で一人当たり5キロ/あるいはリットル、かつ一人当たり総額100シンガポールドルまで
  2. 外国人の海外赴任に伴う引越し荷物
    個人の身の回り品・家庭用品で3カ月以上使用しているもの、または個人用ペットで3カ月以上所有しているもので航空貨物または海上貨物として搬入されるものは、GST免税措置が与えられます。ただし、これら引越し荷物は本人の入国後6カ月以内にシンガポールに輸入され、到着後3カ月以内に引き取る必要があります。
    陸上貨物で搬入される場合のGST免税措置はケースバイケースで与えられます。荷物を分割して複数回に搬入することは認められません。酒類、タバコ類、車輛を引越し荷物として搬入する際には、一般関税とGSTが徴収されます。ペットの搬入については国立公園庁(National Parks: NParks)所管の動物・獣医サービス(Animal Veterinary Service: AVS)の輸入ライセンスと動物検疫要件を遵守する必要があります。
  3. 税関法違反に対する罰金
    シンガポールでは課税品目であるタバコ類に関する違法輸入はとくに厳しく処罰されます。また違反回数が増えると懲罰が重くなります。
    1. タバコ類の無申告または誤申告に対する罰金
      初回違反:1箱(20本入り)当たり200シンガポールドルまたは1本当たり10シンガポールドル
      2回目違反:1箱(20本入り)当たり500シンガポールドルまたは1本当たり25シンガポールドル
      3回目違反:1箱(20本入り)当たり800シンガポールドルまたは1本当たり40シンガポールドル
    2. タバコ類以外の課税品目の無申告または誤申告に対する罰金
      初回違反:課税額の10倍(最少額50シンガポールドル)
      2回目違反:課税額の15倍(同上)
      3回目違反:課税額の20倍(同上)
    3. 非課税品目の無申告または誤申告に対する罰金
      GST額の20倍(最少額50シンガポールドル)
    4. シンガポールで登録された車輌で、出国する際に燃料タンクが4分の3に満たないことが判明した場合の罰金
      初回違反:100シンガポールドル
      2回目違反:300シンガポールドル
      3回目違反:500シンガポールドル

関係機関

シンガポール税関(Singapore Customs: SC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
入出国管理局(Immigration & Checkpoints Authority: ICA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

Attorney General's Chambers:
税関法(Customs Act)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出入規制法(Regulation of Import and Export Act)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
物品・サービス税法(Goods and Services Tax Act)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
物品・サービス税(輸入免除)命令(Goods and Services Tax(Imports Relief)Order)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

シンガポール税関:
通関手続きについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国際郵便小包による輸入について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
免税措置およびGST免除について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
税関法違反に対する罰金について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
外国人の海外赴任に伴う引越し荷物について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品庁(Singapore Food Agency:SFA):
旅行者が個人消費目的で持ち込める食品外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
動物・獣医サービス(Animal Veterinary Service: AVS)
個人用ペットの輸入について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
保健科学庁(HSA):
医薬品の個人持ち込みに関するガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ:
基本的なシンガポールの輸出入制度

調査時点:2017年3月
最終更新:2020年9月

記事番号: S-140203

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