電子商取引(越境EC)における税務上の留意点:ベトナム

ECサイトを通じ、ベトナム人向けに自社の製品を販売したいと考えています。この場合における税務上の留意点について教えてください。

販売の対象が物品か、物品以外(電子書籍等)であるかによってベトナムにおいて課される税金は異なります。物品を他国からベトナム国内に輸送する際は、関税、付加価値税(VAT)が課され、さらに特定の商品に対しては、これらに加えて特別消費税(ET)が課されます。物品以外の場合には、関税、ETは課されませんが、外国契約者税(FCT)が課される可能性があります。また、ECサイトの運営形態別に、特に留意すべき点について、以下で説明します。

I. ベトナム国内への輸入

  1. 物品の場合
    ベトナム国外からベトナム国内へ物品を輸入する際には、関税及びVATが課されます。また、特定の物品にはこれに加えETが課される可能性があります。
    1. 関税
       関税率は頻繁に変更されていることから、適宜、輸送時点での適用税率を確認する必要があります。ジェトロ「世界各国の関税率」(World Tariff)で最新の関税率をご確認下さい。
    2. 付加価値税(VAT)
      VATとは、事業者が事業の過程で創出する付加価値に課される税金であり、日本の消費税と同様の税金です。ベトナムにおける生産、商業および消費に使用される物品およびサービスに適用され、非居住者から購入する物品およびサービスも含まれます。なお、輸入品については、CIF価格に輸入関税を加算した額にVATが課されます。 輸入者は輸入関税と共にVATを税関へ支払います。なお、2011年2月1日に施行された首相決定第78号2010/QD-TTgにより国際速達サービスを利用する100万ドン以下の輸入品に関する関税および付加価値税(VAT)は免除されます。VATの標準税率は10%、必需品および必需サービスに対しては5%です。
    3. 特別消費税(ET)
      ETは、特定の物品の生産もしくは輸入及び特定のサービスの提供に対して課税される税金です。特別消費税法では、物品として煙草、アルコール、ビール、24席未満の自動車、125cc超の二輪車、航空機、ボート、ガソリン、9万BTU(英国熱量単位)以下のエアコン、トランプ、奉納用擬似紙製品が、サービスとしてディスコ、マッサージ、カラオケ、カジノ、ジャックポット、宝くじ、ゴルフ・クラブ、賭事を伴う娯楽が指定されています。
  2. 電子書籍等のデータの場合
    電子書籍等のデータを日本からベトナム国内に配信する場合には、関税、ETはかかりませんが、外国契約者税の規定によりVATが課される可能性がある点に留意が必要です。
    なお、ベトナム国内に、ベトナムの法律に基づいて設立した外国法人を通して、電子書籍等のデータを販売・配信した場合には、外国契約者税は課税されません。
    1. 外国契約者税(FCT)
      外国契約者税とは、外国の個人または法人(外国契約者)がベトナムの個人または内国法人との間で契約を交わし、ベトナム国内でサービスの提供を行った結果として得られる所得に対して課せられるベトナム特有の税金のことです。 適用対象取引は物品の提供を伴うサービスの提供、据付・性能検証・保証・修繕・交換等のサービスとともに行われる商品の販売、輸出・輸入の同時取引(物品がベトナム国内企業の2社間で直接輸送されるものの、商流としては一度海外の企業を経由する取引)となります。単なる物品の輸出入はFCTの対象とはなりません。
      そのため、電子書籍等のデータを販売する場合、単純な販売取引であり、ベトナム国内でのサービス提供(輸送等)も生じないため、外国契約者税の課税対象ではないと考えられますが、課税リスクを避けるため、契約条項には所有権はベトナム国外にて移転する旨を明示しておくと良いでしょう。これは、物品販売に対して外国契約者税が課されるか否かは、ベトナム国外で所有権が移転するか否かに関わるためです。
      販売条件として、売主がベトナム国内の輸送義務を負い、ベトナム国内にて買主に所有権が移転するとみなされる取引では、販売価格に対して外国契約者税(法人税部分)1%が課されますのでご注意ください。また、物品販売に付随してベトナム国内でサービス提供がある場合、上記同様に販売価格に対して外国契約者税1%が課されるとともに、提供するサービスに対しても外国契約者税(法人税および付加価値税)が課されます。この場合、物品価格、各サービス価格を契約上分けておかないと、サービス毎に税率が異なる場合、最も高い税率が一括して全ての課税対象に課されることになりますので注意が必要です。
      FCTは、ベトナムに恒久的施設があるか否かにかかわらず、ベトナム国内において得た所得や付加価値に対して課される税金で、VAT部分と法人所得税部分から構成されています。日本で外国税額控除を受ける場合には、法人所得を課税標準とする税が対象となるため、外国契約者税の付加価値税(VAT)部分は含まれないことに留意してください。
      なお、納税義務者は、取引形態上、外国契約者にサービスの対価を支払うベトナム法人になる場合が多いものの、下記条件を全て満たす場合には、外国契約者自らが納税義務者になることも可能です。
      1. ベトナムに恒久的施設を有している、又はベトナムの居住者である。
      2. 外国契約者としての期間が 183 日以上である。
      3. ベトナムの会計システムに基づいて会計処理を行う。

II. ECサイトの運営形態における留意点

一般的に、ECサイトの運営形態は、大きく分けて4つのケースがあります。(1)現地子会社を設立し、当該現地法人を通してECサイトを構築・展開するケース、(2)日本から現地向け自社ECサイトを展開するケース、(3)現地の既存ECモールに出店するケース、(4)日本の既存現地向けECモールに出店するケースです。

  1. 現地子会社を設立し、当該現地法人を通してECサイトを構築・展開するケース
    親会社の人材が出向し、ECサイトの構築等の技術支援を行った場合、外国契約者税が課される可能性があります。また役務提供取引とみなされ移転価格税制に基づき課税される可能性があります。ベトナム財務省は、2005 年に公布された移転価格税制に関する法令の改訂版として、2010 年にCircular66/2010/TT-BTCを公表しています。
    また、現地子会社が日本を含むベトナム国外の法人に、ECサイトの制作を外注した場合も外国契約者税が課されます。
  2. 日本から現地向け自社ECサイトを展開するケース
    既述の内容以外で、特筆すべき税務上の論点はありません。
  3. 現地法人の運営する既存ECモールに出店するケース
    現地法人に対して、日本法人である自社は出店料等のサービス料を支払うことになります。サービス料への課税はありません。
  4. 日本法人の運営する既存ECモールに出店するケース
    当該法人に対する出店料等のサービス料に対して日本の消費税が課せられます。

関係機関

ベトナム貿易振興庁HP(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

首相決定第78号2010/QD-TTg(ベトナム語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

ジェトロ:
ベトナムの税制

調査時点:2017/1

記事番号: C-170201

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