外国人女性の多くはまだアバーヤを着用(サウジアラビア)
観光ビザ解禁2カ月後のリヤド

2019年12月3日

サウジアラビアで観光ビザが9月27日に解禁されてから(10月1日付ビジネス短信参照)、約2カ月が経過した。10月8日付当地アラビア語紙によると、観光ビザ解禁後10日間で約2万3,000件の観光ビザの申請があった。国籍別では、中国が7,000件で第1位を占め、英国が第2位で6,000件、そしてカナダ・米国合わせて3,000件と続く。

エンターテインメント・イベントが目白押しのリヤド

首都リヤドでは、「リヤド・シーズン」(2019年10月11日~12月16日)と呼ばれるエンターテインメント・イベント月間の真っただ中にあり、連日、市内各所で多くの人出が見られている。日本に関係のあるイベントとしては、初の日本のアニメ関連イベント「サウジ・アニメ・エキスポ」(2019年11月14日~16日)や、日産、パナソニックのチームが参戦した電気自動車版フォーミュラ・カーレースである「フォーミュラE」が、前年に続いてリヤド郊外の世界遺産ディルイーヤ地域で開催された(2019年11月22日~23日)。こうした多岐にわたるエンターテインメント・イベントは、まさにここ2、3年でサウジアラビアが急速に変化していることを体感できるものだ。

多くの外国人女性はアバーヤを着用

観光ビザの解禁とともに、政府からは外国人女性旅行客にはアバーヤ(伝統衣装)の着用を義務付けない旨が発表された。かつては服装の乱れを厳しく指導していた、いわゆる宗教警察の権限も弱まり、アバーヤを着用しなくても誰からも注意されることがなくなった。市内のショッピングモールでは、アバーヤを着用していない外国人女性の姿も時折、見かけるようになった。

しかし、それでも筆者を含めて、在住の外国人女性のほとんどはまだアバーヤを着用しているのが実情だ。近年のサウジアラビアの変化があまりにも急激すぎて、サウジアラビア社会がアバーヤを着用していない女性にまだ慣れ切っていない過渡期にあるためだ。ビジネスの場合を除き、アバーヤを着用していない場合、ぶしつけな視線を投げかけられたり、不必要に声掛けされたりすることなどが起こる。本来であれば、男性側がこうした行為をするべきではないのだが、当地社会がこうした面で成熟していくには、まだもう少し時間がかかりそうだ。

特に、サウジアラビアの観光地は地方都市にあることも多く、地方都市ではまだ伝統的・文化的な考え方が色濃く残っており、新しいサウジアラビアをまだ感覚として受け入れきれていない一定の層が存在していることも事実だ。

男性側からの嫌がらせに対して、不快に感じる度合いは個々人で異なるため、アバーヤを着用したほうが良い、あるいはしなくても良いとは一概にはいえないが、過渡期にある当地に滞在するに当たり、宗教的な違いも考慮した上で、各自が快適に過ごせると感じる境目はどこなのかを渡航前に考え、サウジアラビアの魅力を楽しんでいただきたい。

執筆者紹介
ジェトロ・リヤド事務所
柴田 美穂(しばた みほ)
2004年、ジェトロ入構。海外調査部(中東アフリカ課)、企画部(中東・アフリカ担当)、農林水産・食品部を経て2018年8月より現職。