Webプラットフォーム活用で、地域の社会課題解決やSDGs推進を(日本)
CUUSOOがエリアサイトを開設

2021年9月24日

クラウドファンディングの分野における先駆者でもあるCUUSOO SYSTEM(本社・東京、以下CUUSOO)。今般、企業の社会課題解決や持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組み推進に向け、Webプラットフォームを立ち上げた。このプラットフォームの第1弾は大阪市(東淀川地区)を対象とするエリアサイトで、参加会員企業は共同でのカーボンニュートラル、求人募集、災害対応などに取り組むことが可能になる。同社は2021年末までに、近畿・東海エリアを中心に約50カ所のエリアサイトを開設する予定だ。

工業団地・産業集積地などでの社会課題解決と地域活性化を狙う

CUUSOOが開設した参加型Webプラットフォーム「みんなの場」では、工業団地や産業集積地といったエリア単位で、参加会員企業(注1)が「カーボンニュートラル」「仕事環境の整備・求人」「災害時の備え(例えば、緊急避難場所整備)」などで協力・連携できる。このプラットフォームを用いて、参加会員企業が提案するプロジェクトに賛同者を集め、その地域(ローカル)ごとの社会課題解決を通じた地域活性化や脱炭素社会の実現などSDGsへの取り組みを担う。

具体的には、「例えば『工場の屋根に太陽光パネルを設置したい』と言う場合、サイト上にプロジェクトを上げ賛同者を募れば、導入コストが1社より下がる仕組みづくりが可能」「1社ごとに取り組むより、目的を同じくする企業同士が協力して共同で導入・購入を目指せば、スケールメリットや協力体制が生まれ、コスト面でもノウハウの面でもより導入しやすくなる」(CUUSOOのプレスリリース、注2)としている。

「みんなの場」は、参加会員企業がカーボンニュートラルに取り組みやすくするプラットフォームだ。地域内外での協力なしには実現・導入が困難視される「通勤バスのEV化」「駐車場のEV充電対応」「敷地の緑化」などへの働きかけも、サポートしていくという。その他、CUUSOOが運営するコンテンツ企画も実施予定。これは、「あったらいいな」「できたらいいな」という、地域で働く人や参加会員各企業などの「空想的なアイデア」をサイト内で募集・公開し、賛同が集まれば何らかの形で実現させていくというものだ。

なお、「みんなの場」を閲覧・応募する限りでは、一般ユーザーとして費用はかからない。ただし、コンテンツを掲載する場合には参加会員企業になる必要があり、会費が発生する。

同種のWebプラットフォームサービス提供について、CUUSOO関係者は「知る限り類似した試みはないと認識している」と述べた。


参加型エリアサイト「みんなの場」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますロゴ(CUUSOO提供)

まずは大阪市内からスタート

「みんなの場」第1弾の開設は、2021年9月1日、大阪府大阪市東淀川地区だった(注3)。最初の開設地に選んだ理由は、(1)大阪が商業やモノづくりの街であること、(2)2025年には「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに大阪万博が開催予定で、未来社会の「共創」デザインに同社の参加型Webプラットフォームが適合する(すなわち、工業団地・工場集積地やそこで働く人や地域の人々の共創なしには、未来社会はうまく回っていかない)と考えたこと、などによる。


参加型エリアサイト「みんなの場」トップ画面(CUUSOO提供)

CUUSOO代表取締役社長の西山浩平氏は、「参加型エリアサイト『みんなの場』で共同導入・購入することなどを通じ、地域経済活性化・地域共創のお手伝いをしていきたい。特に、バッテリーや太陽光発電などを工業団地内で共有することでカーボンニュートラルを地域単位で促すことができる。また、欧州で普及しているプラスチックのパレットを工業団地単位で導入すれば、環境に優しい物流にも寄与できる。今後の計画として2021年12月末までに、近畿・東海エリアを中心に約50カ所のエリアサイトを開設予定だ。そのエリアの範囲については、これまで行政が決めた単位に限らず、新しい技術や経済的合理性を踏まえて決めていきたい」と語る(注4)。また、同社は、Webプラットフォームの海外での事業展開について、将来的に視野に入れていきたい、との考えもあるという。

ジェトロのインタビューに対し、総合商社関係者は、「工業団地や産業集積地に所在する工場などをコミュニティ化し、地域の抱える社会課題の解決に皆で取り組んで行く試みは、大変面白い。海外の工業団地では、数多くの入居企業に対し一斉メールで呼びかけることが現実にある。この種のWebプラットフォームがあれば効率的な対応が可能になるものと思われる」と言及。あわせて、「入居企業含め各社ともDXを推進している現況下、『みんなの場』のようなプラットフォームがいかにうまく管理運営されていくか興味深い」と付言した(注5)。

また、東海エリアに所在する電機メーカー関係者は「みんなの場」に関し、「大変良い取り組みだと思う」とコメント。「単なる日本企業間の情報交換の場でなく、SDGs推進上、お互いの良いとこ取りができるシステムだ。カーボンニュートラルへの対応も、1社だけでは困難で、このようなコミュニティで一緒になって考えることができるのもメリット。また、近隣住民などのステークホルダーに対するフォローも可能で、社会貢献活動も共同で行うことにより効率良くできそうだ」との考えを示した(注6)。


注1:
参加会員企業とは、それぞれの工業団地・工場集積地に、工場や倉庫、事務所を出店するなど、そのエリアに実質的に関わっている企業・団体などとされる。
注2:
株式会社CUUSOOSYSTEMプレスリリース「日本各地の工業団地・工場集積地を活性化させる参加型エリアサイト「みんなの場」。第一弾、“東淀川エリア”開設のお知らせ」2021年9月1日
注3:
参加型エリアサイトみんなの場〔大阪府〕東淀川エリアウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。
注4:
2021年9月8日にコメント入手。
注5:
2021年9月10日にコメント入手。
注6:
2021年9月14日にコメント入手。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部上席主任調査研究員
川田 敦相(かわだ あつすけ)
1988年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、シンガポール、バンコク、ハノイ事務所などに勤務、海外調査部長を経て2019年4月から現職。主要著書として「シンガポールの挑戦」(ジェトロ、1997年)、「メコン広域経済圏」(勁草書房、2011年)、「ASEANの新輸出大国ベトナム」(共著)(文眞堂、2018年)など。