インドネシアから見るRCEP協定の活用方法

2023年10月23日

インドネシアでは、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が2023年1月2日に発効し、既に活用が進み始めている。ジェトロ・ジャカルタ事務所には、RCEP協定を活用する上で、既存の複数の経済連携協定(EPA)と比べて、効果的な利用方法を知りたいといった問い合わせも多く寄せられている。本稿では、日本税関が月次で更新している「経済連携協定別時系列表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2023年1~5月分)を用いて、日本のEPA利用に関する公開データ(日本の輸入額)を分析する。その上で、ジェトロがインドネシア税関に対して行ったRCEP協定の利用に関するヒアリング結果を基に、どういった物品でRCEP協定が用いられているかを報告する。

インドネシアから日本へのEPA適用申告額は第6位

経済連携協定別時系列表(2023年1~5月)での日本の輸入申告額(2国間EPAまたは多国間EPA利用)によると、最も多いのは中国からの輸入で、1兆5,966億円だった。日本にとってはRCEP協定が中国と結ぶ初めてのEPAで、この輸入申告額はRCEP協定によるものだと考えられる。輸入者にとってRCEP協定による関税撤廃の恩恵が大きいと言える。一方、EPAを利用したインドネシアからの日本の輸入額は2,155億円で、国別では第6位だった。ASEAN諸国の中ではベトナム、タイに次いで第3番目に申告額が多い(表1参照)。

表1:各種EPAを利用した日本への輸入申告額(2023年1月~5月) (単位:億円)(-は値なし)
順位 国名 輸入申告額計 構成割合
1 中華人民共和国 15,966.20 29.70%
2 ベトナム 5,114.00 9.50%
3 タイ 3,850.50 7.20%
4 米国 3,458.10 6.40%
5 イタリア 2,283.30 4.30%
6 インドネシア 2,154.90 4.00%
7 オーストラリア 1,937.30 3.60%
8 マレーシア 1,662.40 3.10%
9 ドイツ 1,502.00 2.80%
10 フランス 1,488.20 2.80%
11 大韓民国 1,435.20 2.70%
12 フィリピン 1,374.00 2.60%
13 カナダ 1,364.30 2.50%
14 チリ 1,177.40 2.20%
15 インド 1,063.70 2.00%
16 ニュージーランド 932.4 1.70%
17 スペイン 899.9 1.70%
18 メキシコ 748.3 1.40%
19 ルーマニア 576.4 1.10%
20 ギリシャ 500.5 0.90%
その他 4,225.70 7.90%
53,714.90 100%

出所:日本税関、経済連携協定別時系列表を基に作成

次に、インドネシアからの輸入申告額をEPA別に見ると、日インドネシア経済連携協定(IJEPA)の割合が78.4%で最大を占め、日ASEAN包括的経済連携協定 (AJCEP)が15.7%で続いた。RCEP協定の割合は5.9%で、輸入申告額は約126億円だった(表2参照)。なお、RCEP協定を利用した申告額の国別順位で、インドネシアは5位となっている(表3参照)。

表2:インドネシアから日本への輸入申告額(EPA別:2023年1月~5月) (単位:億円)
輸出国 利用EPA 輸入申告額計 構成割合
インドネシア IJEPA 1,689.30 78.40%
AJCEP 338.4 15.70%
RCEP 126.4 5.90%
日米EPA 0.8 0.04%
2,154.90 100%

出所:表1に同じ

表3:RCEP協定を利用した日本への輸入申告額(2023年1月~5月) (単位:億円)
順位 国名 輸入申告額計 構成割合
1 中国 15,979.10 87.0%
2 韓国 1,431.40 7.7%
3 ベトナム 627.2 3.5%
4 タイ 156.5 0.8%
5 インドネシア 126.4 0.7%
6 マレーシア 39.3 0.2%
7 ニュージーランド 9.5 0.1%
8 カンボジア 8.5 0.0%
9 ラオス 2.1 0.0%
10 オーストラリア 0.3 0.0%
11 シンガポール 0.1 0.0%
18,380 100.0%

出所:表1に同じ

表2、3からは、(1)インドネシアから日本への輸入でRCEPが占める割合は大きなものではなく、(2)日本とのEPAがほかにない中国、韓国がRCEP協定を利用した輸入の上位を占めていることが読み取れる。

この点に関して、ジェトロが2023年3月9日、インドネシア関税総局から講師に招いて実施した日本企業向けのRCEP協定についての説明会(2023年3月16日付ビジネス短信参照)で、同総局は「RCEP協定 でインドネシアと他の締約国の関税削減へのコミットメントは、ASEAN+1 FTAでのコミットメントよりも相対的に小さい」「RCEP協定の主な利点は、関税撤廃の範囲ではなく、より包括的に貿易を促進する規則や要件にある。企業が原産地規則を満たすための材料や商品をより容易に入手できるよう、広範な累積プロセスを与えている」と述べている。すなわち、RCEP協定よりも早く発効した既存のEPAによる関税撤廃が進んでいる中、当面のRCEP協定の利点は主により緩和的な原産地規則の活用にあると言える。

RCEP協定利用の多くが衣料品関連

表3からRCEP協定の利用について、ASEAN諸国との比較を見ると、インドネシア(126億円)、タイ(157億円)の上位にはベトナム(627億円)が位置し、その差は顕著だ。インドネシアとベトナムからの輸入の詳細について、それぞれ経済連携協定時系列表をさらに分析したところ、まず、RCEP協定を利用したインドネシアから日本への輸入品目は衣料品、繊維製品が太宗を占めた(表4参照)。

表4:RCEP協定を利用したインドネシアから日本への輸入品目(2023年1月~5月)(単位:億円)(-は値なし)
順位 HS
4桁
品名概要 輸入申告額計 構成
割合
1 6205 男子用のシャツ 25.4 20.10%
2 6203 男子用のスーツ、アンサンブル、ジャケット、ブレザー、ズボン、胸当てズボン、半ズボンおよびショーツ(水着を除く) 24.3 19.20%
3 6204 女子用のスーツ、アンサンブル、ジャケット、ブレザー、ドレス、スカート、キュロットスカート、ズボン、胸当てズボン、半ズボンおよびショーツ(水着を除く) 13.5 10.70%
4 6109 Tシャツ、シングレットその他これらに類する肌着(メリヤス編みまたはクロセ編みのものに限る) 12.4 9.80%
5 1604 魚(調製し、または保存に適する処理をしたものに限る)、キャビアおよび魚卵から調製したキャビア代用物 11.5 9.10%
6 6104 女子用のスーツ、アンサンブル、ジャケット、ブレザー、ドレス、スカート、キュロットスカート、ズボン、胸当てズボン、半ズボンおよびショーツ(水着を除く、メリヤス編みまたはクロセ編みのものに限る) 6 4.70%
7 6110 ジャージー、プルオーバー、カーディガン、ベストその他これらに類する製品(メリヤス編み、またはクロセ編みのものに限る) 5.5 4.40%
8 6103 男子用のスーツ、アンサンブル、ジャケット、ブレザー、ズボン、胸当てズボン、半ズボンおよびショーツ(水着を除く、メリヤス編みまたはクロセ編みのものに限る) 4.8 3.80%
9 6106 女子用のブラウス、シャツおよびシャツブラウス(メリヤス編み、またはクロセ編みのものに限る) 4 3.10%
10 6211 トラックスーツ、スキースーツおよび水着、ならびにその他の衣類 4 3.10%
その他 15.1 11.90%
126.4 100%

出所:表1に同じ

次に比較として、RCEP協定を利用したベトナムから日本への輸入品目を見ると、その多くの品目がインドネシアから輸出される品目と競合している(表5参照)。表4、5の品目はそれぞれRCEP協定で同じ関税率が適用されていることに加え、RCEP協定よりも早く発効した既存のEPAの日・IJEPA、日・ベトナムEPAでは関税が撤廃されている。そのため、関税面での条件はインドネシアとベトナムの間で同様だ。従って、ベトナムとインドネシアでは同様の品目でサプライチェーン構築がされていることになる。インドネシアの製造、運送コストなどとの兼ね合いもあるが、今後はベトナム・日本間の衣料品などのサプライチェーンをインドネシアに拡大していくことも、選択肢の1つとなる可能性がある。

表5:RCEP協定を利用したベトナムから日本への輸入品目(2023年1月~5月) (単位:億円)(-は値なし)
順位 HS4桁 輸入申告
額計
構成割合 表4(インドネシアから日本向けに輸入される品目)での順位
1 6109 100 16.00% 4
2 6203 77.2 12.30% 2
3 6204 71.9 11.50% 3
4 6211 56.4 9.00% 10
5 6110 47.2 7.50% 7
6 6205 28.4 4.50% 1
7 6206 26.6 4.20% 11
8 6105 26 4.10% 15
9 6104 25.2 4.00% 6
10 6103 15.4 2.50% 8
その他 152.6 24.30%
626.9 100%

出所:表1に同じ

繊維・衣料品では原産地規則が緩やか

RCEP協定の1つの大きな特徴として、61類、62類の衣類については、原産地規則の加工工程基準において1工程ルールが採用されている点が挙げられる(RCEP協定解説書:P48参照PDFファイル(12.25MB))。これにより、例えば、全ての原材料をRCEP協定締約国外から調達して製造を行う場合でも、それらの「原材料のHSコード上位2桁と締約国内で製造された製品のHSコード上位2桁が変更」(類の変更)されていれば、RCEP協定の原産性が認められ、特恵関税の適用を受けることができる(注)。これにより、他のEPAに比べ、比較的容易にその原産性を確保し、特恵関税の恩典を受けることができる。

今回の統計データを基に、実際にRCEP協定を適用してインドネシアから日本に申告された61類、62類のHSコードを確認したところ、その数は99品目だった。そのうち36品目については、RCEP協定の特恵関税率が日IJEPAよりも高く設定されている(表6参照)。つまり、IJEPAによる最低税率を適用することではなく、RCEP協定で原産地証明書の取得コストを抑えることなどを選択した輸入者が一定数存在していることがうかがえる。インドネシア関税総局の指摘のように、RCEP協定の緩和的な原産地規則の利用に価値が見いだされていることがわかる。

表6:RCEP協定を利用したインドネシアから日本への輸入品目(HS61、62類抜粋)(HS9桁:2023年1月~5月)
HS4桁 品名 HS9桁 IJEPA税率 RCEP協定税率(ASEAN)
6101 男子用のオーバーコート、カーコート、ケープ、クローク、アノラック(スキージャケットを含む)、ウインドチーター、ウインドジャケットその他これらに類する製品(メリヤス編み、またはクロセ編みのものに限り、第61.03項のものを除く) 610130000 無税 合成繊維製のもの(刺しゅうしたもの、レースを使用したもの、および模様編みの組織を有するものに限る) 8.9%
その他のもの 無税
6102 女子用のオーバーコート、カーコート、ケープ、クローク、アノラック(スキージャケットを含む)、ウインドチーター、ウインドジャケットその他これらに類する製品(メリヤス編み、またはクロセ編みのものに限り、第61.04項のものを除く) 610230000 無税 合成繊維製のもの 8.9%
その他のもの 無税
6103 男子用のスーツ、アンサンブル、ジャケット、ブレザー、ズボン、胸当てズボン、半ズボンおよびショーツ(水着を除く)(メリヤス編み、またはクロセ編みのものに限る) 610333000 無税 無税
610341000 無税 無税
610342000 無税 無税
610343000 無税 無税
610349000 無税 無税

注:太字はRCEP協定税率が最低税率でない品目
出所:表1に同じ

インドネシアに対するRCEP協定適用申告の状況

これまでRCEP協定を適用した日本の輸入について述べてきた。これをインドネシア側の輸入について見るとどうか。前述の日本企業向けRCEP協定説明会では、2023年1月2日~3月5日、インドネシアへの輸入申告に当たって税関に提出されたRCEP協定原産地証明書の数は、中国が434件で首位、韓国が33件で2位、日本が10件で3位と説明された。インドネシアはEPAを利用した輸入状況を公開していないことから、ジェトロは2023年7月、インドネシア関税総局国際協力局に対して個別にヒアリングを行った。同局担当者によると、EPAを利用した輸入実績をHSコード上4桁ベースでのみ集計しており、個別のHSコードごとの数量は集計中とのことだった。その上で、2023年7月2日時点で日本、中国原産としてRCEP協定を利用したインドネシアへの輸入品のうち、割合が多いものについて回答が得られた(参考参照)。

参考:RCEP協定を用いた日中からインドネシアの輸入(HSコード4桁ベース)

(ⅰ)日本からインドネシアへの輸入
  1. 17.04(砂糖菓子)
  2. 18.06 (チョコレートおよびカカオを含むその他の食品)
  3. 21.05(アイスクリームおよびその他の食用氷)
  4. 38.22(化学加工製品)
  5. 48.04(紙)
  6. 55.02(人工フィラメント)
  7. 58.06(繊維製品)
  8. 84.62(機械工具)
  9. 87.14(自転車の部品および付属品)
  10. 90.18(医療に使用される器具および機器)
(ⅱ)中国からインドネシアへの輸入
  1. 29.18(カルボン酸および無水物、ハロゲン化物、過酸化物およびペルオキシ酸、それらのハロゲン化、スルホン化、ニトロ化またはニトロソ化誘導体)
  2. 39.07(一次加工プラスチック)
  3. 39.18(半製造業;プラスチックからの製品)
  4. 39.20(半製造業;プラスチック製品)
  5. 48.10(紙)
  6. 54.02(合成繊維原料)
  7. 87.03(人の輸送のための自動車)
  8. 87.04(貨物輸送用自動車)
  9. 87.11(モーターサイクル)
  10. 87.14(自転車の部品および付属品)

出所:インドネシア関税総局へのヒアリングを基にジェトロ作成

参考の(ⅰ)、(ⅱ)の品目について、インドネシアがそれぞれ日本、中国に設定する関税率をHSコード8桁ベースで確認したところ、別添表7、別添表8のとおりだった。(ⅰ)に列記されている品目のHSコードを8桁ベースでカウントすると、150品目になるが、その全てで既にIJEPA、AJCEPによって関税率が0%と設定されている。従って、インドネシアから日本への輸入と同様、日本からインドネシアへの輸入についても、RCEP協定の利用目的は最低税率を適用することではなく、原産地証明書の取得にかかるコスト削減やサプライチェーンの最適化を主眼にしていると考えられる。

他方、(ⅱ)の中国からの輸入品目について税率を確認した結果、合計940のHSコードのうち419のHSコードでRCEP協定が最も低い税率となっている。そのため、中国は最低税率の獲得という観点からRCEP協定の恩恵を大きく受けているとうかがえる。また1点、この別添表8から読み取れることとして、RCEP協定によって中国はこれら419品目の最低税率の獲得を成し遂げた一方で、これら品目を日本との対比として見た場合、その全品目について中国が獲得したRCEP協定による最低税率以上の関税優遇が既にIJEPA、AJCEPによって達成されていることが分かり、これら品目に関する日本の関税面の優位性は依然として高いものであると考えられる。

表9:インドネシアへ日本原産品としてFTA/EPAで輸入されている産品の累計(各年1~5月)(単位:万ドル)(△はマイナス値)
品目 2022年
1~5月累計
2023年
1~5月累計
前年同期比
17.04(砂糖菓子) 47.4 51.4 8.50%
18.06 (チョコレートおよびカカオを含むその他の食品) 14 15.9 14.20%
21.05(アイスクリームおよびその他の食用氷) 28.4 40.7 43.40%
38.22(化学加工製品) 323.7 353.9 9.30%
48.04(紙) 549.8 487.6 △11.3%
55.02(人工フィラメント) 2,566.20 3,528.70 37.50%
58.06(繊維製品) 146 202.9 39.00%
84.62(機械工具) 604 905.8 50.00%
87.14(自転車の部品および付属品) 3,453.40 1,857.00 △46.2%
90.18(医療に使用される器具および機器) 1,604.30 1,733.10 8.00%
9,337.00 9,177.00 △1.7%

出所:グローバル・トレード・アトラス

さらに、(ⅰ)、(ⅱ)の品目について、2023年1~5月の輸入統計を確認したところ、(ⅰ)の品目に関しては前年同期比1.7%減少している(表9参照)。主な要因としては、87.14(自転車の部品および付属品)が前年同期比46.2%減の一方、55.02(人工フィラメント)や84.62(機械工具)などが増加。結果的に大幅な下落を押しとどめている格好だ。

一方、(ⅱ)のインドネシアへ中国原産品として輸入されている産品は前年同期比3.1%増だった。特に87.03(人の輸送のための自動車)、87.11(モーターサイクル)の伸びが顕著だ(表10参照)。表10のデータにはEPAの種別を判断する項目がなく、RCEP協定のみを利用した貿易額を算出することはできないが、これらの品目の約半数に当たる419ものHSコードについて、RCEP協定により関税引き下げが行われており、その恩恵は大きいと考えられる。

インドネシア税関から教示された品目に関し、2022年と2023年を比べても、インドネシアへの輸入総額には大きな変動が見られないという点で、日本、中国ともに共通しているが、中国にとってはRCEP協定で関税削減が達成されているという点が大きなメリットとして考えられるだろう。

なお、中国のEPA利用の規模に関しては、2023年7月1日付のインドネシアのアンタラ通信が「2023年1月1日から6月25日までに中国当局が発行した原産地証明書は247万件以上、2,021億6,000万ドル相当」「RCEP協定に基づいて中国当局が発行した原産地証明書は約9万2,700件で、前年同期比72.73%増の約32.2億ドル相当」と報道している。中国国際貿易促進委員会(CCPIT)の報道官、ヤン・ファン氏は記者会見で「このRCEP協定の原産地証明書によって輸入国の中国製品に対する関税は4,800万ドル削減される見込み」としている。

表10:インドネシアへ中国原産品として輸入されている産品の累計(各年1~5月)(単位:万ドル)(△はマイナス値)
品目 2022年
1~5月累計
2023年
1~5月累計
前年同期比
29.18(カルボン酸および無水物、ハロゲン化物、過酸化物およびペルオキシ酸、それらのハロゲン化、スルホン化、ニトロ化またはニトロソ化誘導体) 6,158.30 3,450.00 △44.0%
39.07(一次加工プラスチック) 14,199.90 12,687.00 △10.7%
39.18(半製造業;プラスチックからの製品) 3,119.10 3,143.20 0.80%
39.20(半製造業;プラスチック製品) 15,093.80 11,858.90 △21.4%
48.10(紙) 5,015.70 4,564.20 △9.0%
54.02(合成繊維原料) 14,177.20 12,890.80 △9.1%
87.03(人の輸送のための自動車) 76.8 2,470.80 3218.50%
87.04(貨物輸送用自動車) 20,980.30 29,587.90 41.00%
87.11(モーターサイクル) 352.3 1,030.00 292.40%
87.14(自転車の部品および付属品) 16,591.50 17,012.80 2.50%
95,764.90 98,695.60 3.10%

出所:グローバル・トレード・アトラス

RCEP協定の利用可能性は引き続き研究の余地あり

前述のとおり、日本税関やインドネシア税関からもたらされた情報を基に、RCEP協定の利用状況を分析してきた。まとめとして、(1)日本・インドネシア間では全体の輸出入額に占める割合は高くないものの、原産地証明手続きの要件緩和によるメリットが享受されている、(2)中国・インドネシア間では原産地証明手続きの要件緩和に加え、関税額の削減が大きなメリットとして発生している。

日本企業の中では、日本からインドネシアに対する輸出入のみならず、中国への輸出あるいは中国からの原材料調達を行っている企業も少なからず存在している。RCEP協定のメリットを把握することは、企業利益につながるため、継続した情報収集・分析が望まれる。


注:
1工程ルールでは、例えばRCEP協定に参加する1カ国の中で、縫製(織物から衣類への1工程)を行うことで原産地規則を満たすことが可能。他のEPAで多くみられる2工程ルールの場合、例えばEPAに参加する1カ国の中で、製織と縫製(糸から織物、織物から衣類の2工程)を満たすことが原産地規則となる(参考:財務省・税関「RCEP協定利用方法の紹介」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3.8MB)P.19)
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
中村 一平(なかむら いっぺい)
2004年、財務省神戸税関入関。2019年に外務省へ出向後、財務省を経て、2022年から現職。