2022年の乗用車新規登録台数、前年比 7.8%減(フランス)
燃料・車両価格の上昇で購入意欲減退

2023年9月11日

2022年のフランス国内の乗用車新規登録台数は前年比7.8%減の152万9,035台だった。うち、バッテリー式電気自動車〔BEV、燃料電池車(FCEV)を含む〕の新車登録台数は、前年比25.3%増の20万3,121台と大幅増が続いた。一方、プラグインハイブリッド車(PHEV)は前年比10.2%減の12 万 6,549 台と縮小に転じた。

燃料や新車価格の上昇で購入意欲低下

フランス自動車工業会によると、2022年の乗用車新規登録台数は、前年比7.8%減の152万9,035台と、1974年以降では最低となった〔詳細はフランス自動車工業会資料参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(98KB)(フランス語)〕。半導体などの素材不足で新車供給が低迷する中、原材料価格の高騰を背景に新車価格が上昇。これにロシアのウクライナ侵攻を受けた燃料価格の高騰が重なり、消費者の購入意欲が減退した。中古車販売市場は520万4,628台で、前年比13.5%減少した。

小型商用車(車載量5トン未満)の新車登録台数は前年比19.5%減の34万8,075台、大型トラック(車載量5トン以上)は4万4,012台で、前年からほぼ横並び(0.3%減)だった。

欧州自動車工業会(ACEA)の発表によると、2022年のフランスの国内乗用車生産台数は94万690台で、過去最低だった前年の85万2,812台を10.3%上回ったが、新型コロナウイルス危機前の水準(2019年:159万636台)のほぼ6割にとどまった。

乗用車新規登録台数をメーカー・ブランド別にみると(表1参照)、ルノー・グループはルノーが前年比12.1%減の23万6,405台と減少する一方、グループ傘下のダチア(ルーマニア)は4.5%増の13万855台と前年を上回った。

ステランティスは、プジョーが前年比14.1%減の24万5,608台、シトロエンが19.8%減の12万9,883台、フィアットが8.5%減の3万6,508台と、主要ブランドが軒並み減少した。

外国勢では、トヨタが前年比4.3%増の10万268台となり、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)を抜いて、外国メーカー最大シェアを獲得した。前年までトップだったVWは前年比7.6%減の9万7,292台、グループ傘下のシュコダが4.9%減の2万8,904台と低迷した。高級車ブランドはメルセデス・ベンツが5.5%減の4万7,977台と縮小が続いたほか、BMWが1.2%減の4万5,439台、アウディが12.8%減の4万3,687台と前年を下回った。

韓国勢では、起亜が4.5%増の4万6,224台、現代は4.1%増の4万7,106台と増加幅は縮小したが、前年からのプラスの伸びを維持した。米国勢では、フォードが7.6%増の4万7,095台、テスラが10.4%増の2万9,199台と急増した。このほか日本勢では、日産が2.9%増の2万7,169台で、小幅ながらプラスとなった。

モデル別に見ると、プジョー「208 II」が 8万8,812台と最多だった。これにダチア「サンデロ3」の6万4,293台、ルノー「クリオV」が6万4,012台と続いた。上位10位まではステランティス、ルノー・グループのモデルが並ぶ。外国勢ではトヨタ「ヤリス」が3万1,115台で11位だった。

表1:2022年の主要メーカー・ブランド別乗用車新規登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・ブランド 登録台数 前年比
プジョー 245,608 △ 14.1
ルノー 236,405 △ 12.1
ダチア 130,855 4.5
シトロエン 129,883 △ 19.8
トヨタ 100,268 4.3
フォルクスワーゲン 97,292 △ 7.6
メルセデス・ベンツ 47,977 △ 5.5
現代 47,106 4.1
フォード 47,095 7.6
起亜 46,224 4.5
BMW 45,439 △ 1.2
アウディ 43,687 △ 12.8
フィアット 36,508 △ 8.5
オペル 36,052 △ 3.6
テスラ 29,199 10.4
シュコダ 28,904 △ 4.9
日産 27,169 2.9
合計(その他を含む) 1,529,035 △ 7.8

出所:フランス自動車工業会

新車登録台数に占める低公害車の割合上昇

乗用車新規登録台数を燃料別にみると〔詳細はラ・プラットフォーム・オートモビル(PFA)資料参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(177KB)(フランス語)〕、ガソリン車は前年比14.8%減の56万8,880台で、全体に占める割合は37.2%と、前年(40.2%)から3ポイント低下した(表2参照)。ディーゼル車は31.6%減の23万9,111台と大幅減を示した。ディーゼル車の全体に占める割合も15.6%と、前年(21.1%)からさらに5.5ポイント低下した。2020年(30.6%)からの2年間で、全体に占める割合はほぼ半減した。

ハイブリッド車は45万9,212台で前年を6.6%上回り、全体に占める割合は前年(25.8%)より4.2ポイント多い30.0%に達した。このうちPHEVの新車登録台数(乗用車のみ)は12万6,549台で、前年(14万1, 001台)を10.2%下回った。全体に占める割合は8.3%と、前年(8.5%)から0.2ポイント低下した。

BEVは20万3,121台(うちFCEVは193台)で、前年比25.3%増となった。環境報奨金と買い替え補助金制度に加え、都市部でディーゼル車など高排出ガス車の乗り入れを規制する「低排出モビリティーゾーン」設置増加の動きや、同地区に居住する低所得者を対象にした電気自動車(EV)の購入支援措置などが後押しした(2022年5月24日付ビジネス短信参照)。

乗用車新規登録台数に占めるBEVの割合は13.3%と、前年から3.5ポイント増加した。PHEVと合わせた低公害車の割合は21.6%で、初めてディーゼル車の割合を上回り、新車市場の電動化加速の動きが明らかになった。

表2:燃料別乗用車新規登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料 2021年 2022年
登録台数 登録台数 構成比 伸び率
ガソリン 667,503 568,880 37.2 △ 14.8
ディーゼル 349,479 239,111 15.6 △ 31.6
ハイブリッド 430,838 459,212 30.0 6.6
階層レベル2の項目〔プラグインハイブリッド(PHEV)〕 141,001 126,549 8.3 △ 10.2
バッテリー式電気自動車(BEV) 162,167 203,121 13.3 25.3
階層レベル2の項目〔燃料電池車(FCEV)〕 61 193 0.0 216.4
スーパーエタノール(e85) 2,424 11,753 0.8 384.9
天然ガス 170 109 0.0 △ 35.9
合計(その他を含む) 1,659,003 1,529,035 100.0 △ 7.8

出所:ラ・プラットフォーム・オートモビル(PFA)からジェトロ作成

フランスの市場調査会社AAA Dataの集計結果に基づく報道によると、2022年のBEV新車登録台数のモデル別内訳では、プジョー「e-208」が最大で1万9,219台となり、これにダチア「スプリング」の1万8,326台、テスラ「モデル3」の1万7,005台が続いた。ルノー「メガーヌe-テック」、フィアット「500e」は前者が1万5,580台、後者が1万5,163台と好調だった。中国メーカーによるBEVの市場拡大も見られた。2022年12月はテスラ(5,416台)、ルノー(3,947台)、ダチア(2,800台)、VW(2,558台)、プジョー(1,891台)に続き、中国の上海汽車集団(SAIC)傘下の英国系MGが1,486台と6位に躍進した。

EV購入者の平均年齢は50.6歳で、都市部に住む高所得層の男性に多い。42%程度がリース契約を利用している〔2022年7月・AAA Data発表資料参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.12MB)(フランス語)〕。また、2023年1月に実施された世論調査によると(AAA Data調べ、報道ベース)、フランス人の4人に1人はEV購入を望んでいる。特に18歳~34歳の若年層は回答者の29%がEV購入に前向きな姿勢を示した。購入を控える理由としては「価格」を挙げた人の割合が74%と最も多く、「航続距離」との回答(67%)を上回った。

EVサプライチェーン構築の動きが本格化

フランス政府は、2030年までに年間200万台のEVの国内生産を目標に掲げる。総額540億ユーロの国家投資計画「フランス2030」の中で、モビリティーの脱炭素化に36億ユーロの予算を充て、バッテリーの国内生産プロジェクトなどEVのサプライチェーン構築に公的資金を投入している。

フランスの自動車メーカーによるEVサプライチェーン構築の動きをみると、ルノーは2021年に北部オー・ド・フランス地域圏のドゥエ、モブージュ、リュイッツの3つの工場を統合してEVの開発・製造拠点「エレクトリシティー(ElectriCity)」を開設し、2022年に「メガーヌe-テック」「カングー2 ZE」の生産を開始した(同年の年間生産台数は前者が4万6,722台、後者が3,000台)。

ルノーが2015年から「ゾエ」「トゥインゴ」「カングー」「マスター」向けに、電動モーターを製造している、ノルマンディー地域圏のクレオン工場では、2022年に生産ラインを増設した。同工場では2024年から年間100万個を超える電動モーター(EV向け50万個、ハイブリッド車向け51万個)が生産される。

バッテリー製造については、同社がバッテリー事業で提携する中国系エンビジョンAESCが2022年にドゥエ工場に隣接する工業用地でギガファクトリーの建設に着手した。ルノーが資本提携するスタートアップ企業ベルコールがオー・ド・フランス地域圏ダンケルク市に建設中のギガファクトリーは2025年に稼働を開始する予定だ(2022年2月10日付ビジネス短信参照)。

ステランティス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(フランス語)は2022年12月、ニデックルロア・ソマーホールディングと共同で立ち上げた合弁会社「イーモーターズ(Emotors)」が北東部グラン・テスト地域圏のトレムリー工場で新型電動モーターの生産を開始したと発表した。2024年から年間100万個を超える電動モーターの生産を目指す。同工場で製造した電動モーターは2023年から「プジョーe-208」「DS3e-テンス」などに搭載される。同社はフランス国内12カ所の製造拠点のうち、ミュールーズ、レンヌ、ソショーなど5つの工場で合わせて12モデルのEVを製造する計画だ。

バッテリー製造については、同社がドイツのメルセデス・ベンツ、フランスのエネルギー大手トタルエナジーズと共同で設立したオートモーティブ・セルズ・カンパニー(ACC)が2023年5月、オー・ド・フランス地域圏のドゥブラン市郊外に国内初となるギガファクトリーを開所した(2023年6月5日付ビジネス短信参照)。

なお、欧州電気自動車協会フランス支部AVERE Franceによると、充電ステーション数は2022年12月末時点で8万2,107カ所と、前年の5万3,667カ所から53%増加した。政府が掲げた10万カ所の設置目標が2023年5月に達成されたことを受けて、2030年までに充電ステーションを40万カ所に広げる新たな目標が設定された。

乗用車輸出台数は増加するも、コロナ禍前の水準には戻らず

フランス税関の統計によると、乗用車(HSコード8703)の輸出台数は前年比21.7%増の142万1,105台となった。ポーランド向けが2.2倍の20万5,814台と大幅に増加し、ドイツを抜いて最大輸出相手国となった。2位のドイツ向けは2.7%減の19万5,902台、3位のベルギーは27.8%増の19万1,075台とプラスの伸びに転じた。イタリア(3.4%減、13万3,424台)、スペイン(7.2%減、9万8,301台)が減少する一方、英国(74.3%増、9万817台)、ポルトガル(2.1倍、7万9,032台)は急増した。日本向けは50.9%増の8,363台と増加したが、新型コロナ危機以前の水準(2019年は1万5,852台)には届かなかった。

輸入台数は前年比3.4%減の183万5,002台だった。最大輸入相手国のスペインは39万4,347台と前年を3.6%下回った。2位のドイツは前年比4.0%増の21万5,077台と持ち直したが、新型コロナ危機以前の水準(2019年は27万4,905台)の8割弱にとどまった。前年に急増したモロッコは1.5%減の15万8,233台と伸び悩む一方、ルーマニアは87.5%増の15万1,554台となり、4位に躍進した。スロバキア(9.3%減、12万9,906台)、トルコ(20.8%減、11万5,357台)は減少傾向が続いた。アジア勢では韓国が11.6%増の7万6,770台、中国が13.9%増の6万8,574台と2年連続で増加した。日本からの輸入は57.1%減の2万7,151台と大幅減となった。

執筆者紹介
ジェトロ・パリ事務所
山﨑 あき(やまさき あき)
2000年よりジェトロ・パリ事務所勤務。
フランスの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。